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3-4 ぽっぽクッキー

桜町駅は始発駅だし、土曜の午後の電車は空いていた。来た時と同じようにアカリさんに半分重なるようなソラを挟んで座る。


「ハイお礼」


アカリさんは鞄からぽっぽクッキーを一袋だしてワタシにくれた。ワタシはお礼を言って、そのクッキーを自分の鞄にしまう。


「食べないの?」


ソラが聞いたその時に、また ソラが消えた。


「ソラが消えました!」


来た時と同じ場所?アカリさんも同じことを思ったのか車窓から外を確認している。けれど、特に何がと見つける前にソラはアカリさんの膝に帰って来た。

そして、電車はホームに入る。


そこから3つ目の”福寿院”でアカリさんが立ちあがり、ソラがそれに続く。


「またね」


アカリさんが小さく言って 電車を降りる。一度は電車を降りようとしたソラが振り返る



「ひなたちゃんも降りて」


ソラの言葉にワタシが戸惑っている間に電車のドアが閉まる。


ドアの向こうでアカリさんが手を振り、その横でソラが、見覚えのある目でワタシを見ている。



***



「おお、ぽっぽクッキーじゃん。お姉ちゃん、今日学校行ったの?]


テーブルの上に置いたぽっぽクッキーを見て ひかりが目を輝かせる。


「うん、ちょっとバラに行きたいって人がいたからね 光も食べるよね?」


「勿論!


ご機嫌でクッキーをかじる光を見ながら、ソラのことを考える。

向こう側の景色が見えちゃうくらいにうっすらとしているソラだけど、嬉しそうにしたり、困ったりという感情は見せてくれる。

バラでは後ろ姿しか見ていないけれど、どんな顔で自分が通っていた学校を見たのだろう?どんな事を思っていたんだろう?

なんでお化けになったんだろう?お化けでいて、楽しい?ようには見えないよね?今が楽しかったら、今日バラに一緒に行ったりはしないよね?


「お姉ちゃん 食べないの?」


気が付いたら、いつの間にかワタシの前にはお茶があって、袋の中のクッキーは残り3羽になっていた。


「食べる!!」


慌てて一羽を口の中に放り込む。小さな鳥が口の中でポワリとほどけるのをじっくりと味わってからお茶を飲む。


「あーなんか懐かしい味!」


そうだ。

ソラはいつもワタシがお菓子を食べているのを見ているけど、欲しがったりはしないよね?眠ることはあるけれど、お腹はすいたりしないのかな?

アカリさんはソラの名付け親でソラに責任を持つって言ったけど、ソラのこと視えないし、声も聞こえないのに、どうやってソラのこと理解するのかな?

ソラとアカリさん 今、どうしているのかな?

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