1 黒い輩
ワタシに見えるあの黒い穴は他の人には見えないらしい。
それなのに上手に避けて通っているのはなぜなんだろう?
ワタシに視えるこの黒いモジャモジャも誰にも見えないらしい。
黒い穴を避ける為に真っ直ぐ歩けないワタシをクラスの男子が指さして笑い、真似をしてまた笑う。
黒いモジャモジャを指の先で払っているワタシは”変な子”と認識されクラスの皆から避けられた。
「二人ペアになって!」
「三人グループ作って!」
そんな時には、ワタシはいつも取り残された。
「じゃあ 陽ちゃんは先生とね」
先生と組むのは我慢できる
「陽ちゃんも入れてあげて」
手近なグループに押し込められるのは本当に苦痛だった。
ワタシは黒い輩たちや影のない人型達を”お化け”と一からげにして無視するようにした。そして時折 現れる”キラキラしたモノ”に励まされて、負けるもんかと頑張った。
誰にでも見える世界では、時にはワタシの方が”見えない人”として扱われた。それでも、家族には愛されていたし、ワタシも家族を大事に思っていた。
小学校の卒業式でワタシが”皆勤賞”を貰った時には両親はとても喜んでくれた。
ワタシが小学校を卒業したタイミングで我が家は隣町に転居した。学校にも、クラスメイト達にも心残りも寂しさも無かった。
「そろそろも陽と光が同じ部屋ってわけには行かないだろう?」
引っ越しの理由を両親はそう言ったけれど、ワタシの為だろうと気づいていた。
同じ小学校へ通っていた小学2年の弟の光がなにかを両親に何か言ったのだろう。
ありがたいと思うのと同時に申し訳ないと思った。
今度は心配させないようにちゃんと周りに馴染もう。
なんでワタシが馴染めないのか、はじかれるのかというと、ワタシだけが”視える”からだ。ワタシが少数派だから、
はじかれる。
多数派は、少数派が目障りなんだよね 何故だかはわからないけど……だから、これからは”視えないふり”をしよう
中学生になる朝、ワタシはそう心に誓った。
本日 もう少し投稿します お付き合いいただけましたらうれしいです