2−7 お守り
「兄弟けんかみたいだね」
アカリさんは呆れたように笑った。
「じゃあ、リクエストにお応えしてお守りの話をしよう。あれは兄さんが作ってくれた結界の力を持つお守りなんだ。俺に危害を加えようというモノはお守りに触れたら消えてしまうくらい力が強いんだって。だから 俺に憑くお化けはあのお守りには触れないようにしてるみたい」
誘蛾灯っていうんだっけ?触れたらバチって虫が焦げちゃうアレを思い出す。誘っておいてバチ!って同じシステムじゃない?
「テスト期間とかはさあ、みんなピリピリしてるからさ 呑気に見える俺への八つ当たり的な悪意がお化けになるのかな?明日の最終日まで持たずにお守りが壊れちゃったってわけ……恨みを買うようなことしてないと思ってるんだけどね」
アカリさんが眉尻を下げて小さく溜息をつく
「それって、多分、アカリさんへの八つ当たりだけじゃなくて、向けどころのないイライラが勝手にお化けになったんだとおもいますよ。で、お化け達はアカリさんのキラキラに惹かれてアカリさんに憑いちゃってるんじゃないですか?」
「そうかな?」
「そうです 恨みとかじゃないです」
「ありがと」
お!今日はごめん、じゃなくて ありがと ですね!
ワタシは口の端についているかもしれないクリームを舌で舐め取って、重大発表をする。
「ワタシもアカリさんの後輩で、ソラの先輩です」
「そうだね」
アカリさんとソラが当たり前のように頷く。なんで?驚かないのでしょうか?
「最初に陽ちゃんの向かい側に座った時に、バラ中の制服だなあって思って見たから、陽ちゃんが俺の事を観察しているのに気がついたんだよ?」
ソフィーバラ学院の事を在校生たちはバラと呼んでいる。バラ中って言葉が自然に出るのはアカリさんがバラに居た証拠だ。
「うん、ぼくも流石に同じ学校の制服だから中学部女子の制服も知ってるよ?」
「……ソウデスカ」
「そうだよ、だって、もうすぐ6年生で、その次は中学なんだからすぐだよ」
あれ、でも ソラ?
「ソラ もうすぐ6年生って言った?」
「言ったけど?」
「ソラってやっぱり 正確には 正式に死んでないんじゃないの?」
会話が半分しか聞こえていないアカリさんが呟いた。
「死んでない? でも、アカリさんには見えないんですよね?」
「そう、だから えーと」
「”棺桶に半分足を突っ込んでる”って言うのですか?」
「すごい例えをするね…」
「でも、陽ちゃんの例えが当たってるとしたら、急がないとならないのかな?そうしないと正式に死んじゃうかもしれないものね」
「「え?」」
ワタシとソラは顔を見合わせた。