2-6 ロールケーキ
「これって 蒼い堂のロールケーキじゃないですか?」
「へー そうなの?俺はよく分からないけど陽ちゃんよく知ってるね?」
「多分そうです。一度しか食べたこと無いですけど……あ この前はのんびり焼きありがとうございました。家族も喜んでいました。」
オニイサンにもお礼を言わないといけなかったなあ
本日は紅茶らしく、アカリさんが大ぶりなティーポットから白いティーカップに注ぎ分ける分けてくれる。
「忘れないうちにさっきのお守りの説明するね」
ワタシはすっかり忘れていたのに、アカリさん律儀ですね
「陽ちゃんなら、少し分かってくれるかなと思うし、ソラにも関係がある事かもしれないしね あ ソラは?」
「アカリさんの左側でアカリさんに寄りかかってます」
「そう」
「先に ソラの話をしてもいいですか?」
「え?」
「アカリさんが来る前にソラと話していたんです」
「ちょっと まってメモとるから!」
アカリさんが横に置いてあったリュックからルーズリーフを1枚取り出した
「えーと 名前はソラ かっこ仮 ね あと十二歳、っと それで?」
「字、読みにくいですね」
あ!今日のワタシ正直者すぎる アカリさんが苦笑いした。
「うん、字が下手すぎて寺は継げないって家族からよく言われてるよ」
「あー それで ソフィーバラですか」
ソフィーバラ学院はキリスト教系の学校だからお寺の関係者は少なそうだよね。さて 蒼い堂のロールケーキ!
頂きますと両手をあわせる。
「なんでそれ知ってるの?」
「ソラが言ってましたよ、自分はソフィーバラの5年生で、アカリさんの後輩だって。嬉しそうに――」
「それって 今も?」
ソラを見ると、ソラが嬉しそうに頷く。あれ?それは”アカリさんの後輩”に対してなの?それとも”今も”つまり、今も5年ってことに対してのどっちだろう?
小さく切ったケーキを頬張りながらソラに確認する。
「ソラって今5年生なんだよね?」
「うん」
あれ?小学校の5年生って事はだよ
「学校、行かなくていいの? 義務教育だよね?」
「ひなたちゃん、義務教育って”学校へ行く義務”じゃないんだよね」
ソラーが”知らないの?”という口調で言い返してきた。
「は? アカリさん、ソラは今5年生って言ってるんです、それなら、ソラは義務教育中だから学校へ行かないと駄目ですよね?」
「ソラは義務教育中なんだね、それなら多分ソラの親にはソラを学校へ行かせる義務があるね」
アカリさんはケーキを頬張りながら冷静に言う
「あれ?アカリさん、お守りの話は?」
「ソラ!お守りよりも先にソラが学校へ行く話でしょ!」
アカリさんはいつもワタシ一人が話す言葉から会話を推測する
「ソラがお守りの話をしたいって?」
「はい、でも、話をそらしていのは明らかです!」
ソラが肩を竦める ワタシは弟が生意気なことを言った時にするようにほっぺたを抓ろうと手を伸ばした。けれど その手が何にも触らずソラの頬を突き抜けたのを見て冷静になった。
「兄弟喧嘩みたいだね」
アカリさんは呆れたように笑った。