2-5 お掃除
「あの テスト勉強してくださいね ワタシお参りするだけなので、すぐに帰りますんで」
「ははは 大丈夫 明日は2教科だから」
アカリさんは笑って言うけれど、明日もテストなんですよね?二教科頑張って詰め込んでください。そう思うワタシの気持ちを知ってか知らずかアカリさんはどんどん歩く
鈴王寺の門をくぐると背広姿の小父さんが2-3人いた。喪服じゃないからお墓参りかな?今日は空気がざわついている。なんでかな?パワースポットかと思ったのに今日はなんか違うみたい?
小父さん達の後ろに居たお坊さんが軽く手をあげて、足早にこちらに来る。あ、今日は衣を着ているけれどオニイサンだ。
「おかえり」
オニイサンがアカリさんの前髪を直す、とパフンと何かがはじけた え?っとオニイサンを見るとオニイサンはワタシの方を見て目を細めてニッコリと笑った
「こうづき嬢もいらっしゃい さっきお祓いが終わってねお菓子があると思うよ」
「あの、今日はお参りとオニイじゃなくて副住職さんにお礼を言いに来たんで」
「お礼?」
「えーと あの 先日、お会いして以来、体調がいいので、ありがとうございました」
本当に、黒い輩に遭遇しない平和に日々でした。ありがたや!という思いを込めて頭を下げる。
「そう、それは良かったです。では、客殿がもう片付いているはずですから、どうぞ」
「はあ……でも、アカリさんのお邪魔になるので――」
「では 私がお相手しましょうか?」
「え?いえ アカリさんにお願いし…ます」
「それは残念 アカリは邪魔モノさえいなければテストの出来は悪くないんだけどねえ」
オニイサンがアカリさんに手を出すとアカリさんが首元から紐を引っ張り出してオニイサンに渡した。オニイサンはそれをちょっと確認すると、衣の懐に入れた。
紐の先についていたのは小ぶりなお守りのように見えたけど?
「客殿で説明するね」
アカリさんにまで言われたら、これはもうお邪魔するしかない。え?お菓子が楽しみなんだろうって?ハイ、ソノトオリです。
客殿に向かう前に、本殿に向かって平和な日々をありがとうございました。と一礼する。もう背広の人たちは居なくなっていて、心なしか空気も綺麗になっているようだ。なんでだろう?
「陽ちゃん?」
アカリさんの声に振り向くと、いつの間にかオニイサンは客殿前の玄関を掃いている。
「お客さんが来る日はね、客殿前に弱い結界張るんだって。陽ちゃんが言う”お化け”が混じってるとお祓いしにくいから」
「でも それじゃあ お祓いの必要ないのでは?」
「弱いお化けに悩まされてる人はそうなるかな?でも大きいお化けは結界を破っちゃうから本堂でお祓いするらしいよ。俺は立ち入り禁止だけどね」
「祓われたお化けがアカリさんに憑いちゃうから?」
あ ワタシ余計なこと言った?
「すみません!失礼なコト言いました。」
アカリさんが笑って肩を竦めた。今の目が細くなる笑い方ってオニイサンに似てる。やっぱり兄弟だからだね。
ワタシとアカリさんが玄関に着く頃にはオニイサンは掃除を終えて塵取りをもってどこかに行ってしまった。
あの塵取りの中には”ちり”じゃなくて”魑魅魍魎”が入っているのかな?
パワースポットに居るからかいつもよりも考えが大胆になってるなワタシ。ちょっと反省する