2-1 名前を付けるのは重要なことです
ワタシは初めて”お化け”に興味を持った。
ワタシがこの少年を視る事が出来るのは”ご縁”があるからなのかな?
あれ?そもそもワタシ、「助けて貰いたい」って言われたから来たんだけど、まさか、マカロンの消費の手伝いに呼ばれた訳じ無いよね?
「ねえ もうマカロンは無いんだけどどら焼きはどう?」
アカリさんが片手で障子をあけながら入って来る。もう片方の手には大振りの菓子鉢を持っていて、おそらくその中にあるのはどら焼きだろう。
「あのー ワタシお菓子の消費のお手伝いに呼ばれた訳じや無いですよね?」
一瞬、アカリさんは、呆気に取られた様な顔をした。どら焼きも好きだけれど、とりあえず本題を聞いておきたい。
「本題に入っていい?」
初めて見るアカリさんの真面目な顔
「まぁ……その為に呼ばれたんですよね」
「まずは、この子が何者か知りたいな。それから、俺とどんな縁があるのか。できれば この子を幸せにしたい。」
この子と言いながらアカリさんが目を向けるのは、少年が横たわっているのとは違う畳。惜しい!あと 30センチ右なら少年がいるのにね。でも 黙っておこう
「えーと さっき少し話をしたんですけど、少年は自分の名前も分らないみたいで、
気が付いたら知らないところに居たけれど、アカリさんのキラキラに惹かれてアカリさんについて来たって言ってましたよ」
「俺のキラキラ?それが俺の所に色々と引き寄せるのかな?」
ナルホド!キラキラはこの世のモノ出ないモノに取って魅力的なのか! 光に集まる虫か!あれ?ワタシもキラキラ大好きなんだけど? ワタシも虫? お化け達も虫?少年も虫?
でもって、オニイサンは悪い虫を祓っちゃう訳が分かる気がする。で、毎日 弟に付いて来るモノを祓っていたら”お祓い名人”になったのかな?
夏とか蚊柱の様に色々くっつけて帰って来るアカリさんを想像してみる。
あ!オニイサンは、視える人なのかな?副住職さん”視える仲間”かもしれませんよ!うん
「ごめんね 俺 無理なコト言ったかな?」
また アカリさん謝ってるよ
「いえ、もう一回、聞いてみます。でも、今、少年寝てるんですけど起こしますか?」
右手で寝ている少年の方を指し示すと アカリさんは今度は少年の寝ている畳を見つめる
「寝てる?霊って寝るの?」
「さあ?ワタシも霊と接触するの初めてなんで……」
あれ?少年って”霊”なのかな?ワタシのくくりでは霊もモジャモジャも”お化け”だけど?
「あ そうだよね」
アカリさんがワタシの湯飲みにお茶を継ぎ足してくれる
「名前が分からないなら 俺たちでつけようか?」
バケモノに名前を知られてはいけないのと同様に 得体のしれないモノに名前を付けるのは危ないってどこかで読んだ。名前を付けて使役することが出来る場合もあるけれど、名前を付ける事によって そのモノの”存在を許す”ことにもなるんじゃないかな?
「ソラなんてどうかな?」
アカリさんが嬉しそうに提案する。
「もしかして、もう、呼んでました?」
「ごめん、ダメだった?兄さんにも視えないモノに名前を付けちゃ駄目だって言われてるんだけど……」
知ってるんじゃん ダメじゃん
アカリさん 高校生ですよね?なんで ダメって言われてる事しちゃうのかな?
ごめん、で済む問題なのかな?