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1-2 新しい家族

母に連れられてやって来た再婚相手が住むという家は、それはもう豪華なお屋敷だった。庭だけで家が二件ぐらい建ちそうな広さがあるし、建物も一体何部屋あるの?と思うくらいの窓の数である。


 それを見た私は一瞬で不安になった。一体、母の再婚相手はどれだけ偉い人なんだろうか。こんな家建てられる財力があるってことはかなりの役職についてるってことだよね。…勝手な偏見だけど、お金持ちって性格に難がありそうで怖い。


 そんなことを考えながら家に入った私は、私達を玄関で出迎えてくれた男性を見て拍子抜けした。


「はじめまして。ユラシアさんとお付き合いをさせていただいているフェルナンド・リオ―ゲンです。君の事はユラシアさんから色々と聞いているよ。なんでもこの間の魔法試合で準優勝に進んだんだって?一年生で準決勝に行くなんて素晴らしいね」

「あ、ありがとうございます。母の娘のセシリアです。母がいつもお世話になっております」

 

 ミルクティー色の柔らかそうな髪に、桃色の瞳。高身ですらっとした身体つき。顔も整っていて穏やかそうな雰囲気の人だ。全身からマイナスイオン出ていて、自然と周りが浄化されていく感じがする。


「あはははは。そんなに緊張しなくていいよ。…といっても、いきなり見知らぬこんなおじさんが母親の再婚相手になるかもしれないと聞いたら驚くし、緊張するよね。ごめんね、本当はもっと早く君に挨拶をするべきだったんだけど、中々都合が合わなくてね。挨拶が遅くなってしまった」

「い、いえ…」


申し訳なさそうにしながら、そう述べるフェルナンドさんに私は慌てて首を横に振る。フェルナンドさんはそんな私を見て優しい笑みを浮かべると、こんなところで立っていては疲れてしまうだろうからと、フェルナンドさんは私達をリビングへと案内してくれた。


 

 リビングに入ると、そこには6人の男性が並んでいた。全員の視線が一斉にこちらを向く。あまりの迫力に私はひいっと小さく悲鳴を上げた。


 すぐにすみませんと誤ったが、フェルナンドさんはこんなガタイのいい男ばかりが目の前に並んでいたら怖いよねと苦笑した。


「紹介するよ、右から長男のアラン、次男のクライド、三男のディオルド、四男のフランス、五男のクラウス、六男のエリックだ」


 フェルナンドさんの紹介で、赤毛でガタイの良い男性が前に出てきた。桃色の瞳がギラリとこちらを向く。もの凄い迫力だ。そしておっきい…。見上げないと顔が見れない。


「アランだ。よろしく頼む」

「よ、よろしくお願いします!」


 おお。かなりの低音ボイスだ。でもいい声。ちょっと怖そうな見た目だけど、意外と口調は穏やかだ。


 そんなアランさんの肩をペシッと叩くきながら、赤色の長い髪を持つ男性が前に出てきた。


「んもぅ、アラン兄さんったら。そんな怖い目で見つめたら妹ちゃん怖がっちゃうじゃない」

「す、すまん。そんなつもりは…」


 私の背後に回り肩に手を置きながら、私をフォローするように長男のアランさんに抗議してくれる男性。距離が近くなったことで、優しくて甘い香りが鼻孔をくすぐる。この人のつけている香水の匂いだろうか。肌も白くてつやつやだし、紳士服を着ているのに女性のような華やかさを持っている。女子力の高い人だ。


「私はディオルドよ。ディオって読んでちょーだい。よろしくね。気の利かない男たちばかりでごめんなさいね。何か困ったらいつでも言ってちょうだい」


 ディオルドさんはそう言うと綺麗な笑みを浮かべた。私はその笑みに思わず見惚れてしまう。なんだかお兄さんというよりお姉さんができた気分だ。そんなディオルドさんを窘めるようにアランさんの隣にいた男性がディオルドさんの名前を呼んだ。ミルクティー色の短髪で眼鏡の少し気難しそうな男性である。


「次男のクライドです。よろしくお願いします。…ディオルド、義妹の前で気持ち悪い喋りかたはやめてください。教育に悪いでしょう。…それに初対面の相手に対してベタベタと触りすぎです。手を離してください。セシリアさんが困っているでしょう」


 クライドさんの言葉にディオルドさんは渋々と言った様子で私から離れる。そして、やれやれといった様子で首を横に振った。


「これくらいいいじゃない。口うるさい男は嫌われるわよ。むさ苦しい男所帯にようやく女の子が来るって聞いて、ずっとこの日を楽しみにしてたのよ。しかも、実際に会ってみたらこんな可愛らしいんですもの。少しくらいテンションが上がったっていいじゃない」

「えっと…」


 なんだか険悪な雰囲気だ。もしかして二人は仲が悪いんだろうか。


「ほっといていいよ。いつものことだから」


 どうしようかと私が焦っていると、のほほんとした男性が声をかけてきた。ミルクティー色の髪に、垂れた瞳。心なしかフェルナンドさんに似ている気がする。


「僕は四男のフランツ。ディオルドとは双子なんだ」

「え!?」


 確かに双子がいるとは聞いていたけど、まさかディオルドさんとフランツさんが双子だとは思わなかった。正直言って、あまり似てない。私の考えが伝わったのか、フランツさんは苦笑いを浮かべた。


「全然似ていないよね。二卵性なんだよ。僕は父さん似だけど、ディオルドは母さん似なんだ」

「そうなんですね」


 双子でも色々と種類があるんだなぁ。…あ、よく見るとフランツさんとディオルドさん、涙ぼくろの位置が左右逆だ。フランツさんは右に、ディオルドさんは左にある。


「ほんとあの二人って相性合わないよな」


 そう言って私たちの会話に入ってきたのは同じ年くらいの赤毛で少し癖っ毛の男の子。呆れたように未だに言い争っているクライドさんとディオルドさんを見つめている。彼の隣には少し年上くらいのミルクティー色の髪の男性がおどおどとした様子で立っていた。前髪が長くて顔が少し隠れている。


「オレは六男のエリック。で、こっちが五男のクラウス兄さん…ほら、兄さん、あいさつ」

「よ、よろしく…」

「クラウスは人見知りなんだ。いずれ慣れると思うから許してやって」


 フランツさんの言葉に私はなるほどと納得する。私は少しでもクラウスさんの緊張がほどければいいなと思い、笑顔で挨拶をした。しかし、逆効果だったようでクラウスさんはそっぽを向いて部屋の隅へと移動してしまう。何か気分を悪くさせるようなことをしてしまったのかと思い焦る私に、フランツさんは大丈夫だよと言った。


「あれは照れているだけだから」

「女に免疫がないんだ。クラウス兄さんは」


 うーん。ここまで重症な人見知りの人、初めて会ったかも…。仲良くなれるといいんだけど、これは結構時間がかかりそうな気がする。


 兄弟たちのやり取りを見守っていたフェルナンドさんは、眉を下げながら私に言った。


「気の利かない息子たちでごめんね。初めてできた妹という存在にちょっと戸惑っているみたいなんだ。でも、みんな根は優しい子たちだから、徐々に仲良くしていってくれると嬉しいな」

「はい」


 そうだよね。戸惑っているのは私だけじゃなくて向こうも同じだよね。寧ろ、向こうの方が年齢が上だし、私以上に思うところもあるかもしれない。


「ねぇ、セシリア。貴方さえよければこのまましばらくここに泊まってみない?」

「え!?」


 お母さんからの突然の提案に私は思わず声を上げた。と、泊まる?え、いきなり?私何も準備してきてないんだけど…。


「実はね、もう部屋は準備してあるの。やっぱり一緒に暮らしてみないと分からないところもあるじゃない?だから、しばらく一緒に暮らしてみてから今後のことを考えた方がいいんじゃないかってフェルナンドさんと話し合ったのよ」

「もちろん、無理にとはいわないよ。心の準備とかもあるだろうしね。でも、今の僕たちに必要なのはお互いをもっとよく知ることだろうと思うし、やっぱり一緒に暮らすのが一番理解が深まると思うんだ。どうかな?セシリアちゃん」

「えーと…」


 これ、もう選択肢の逃げ場ないよね。お母さんに確認したら、服とか生活に必要なものは一式こっちに持ってきてあるみたいだし。最初からそのつもりだったんだと思う。いきなりすぎて驚きだが、新しく家族になるかもしれない人たちのことをもっと知ってから答えを出したいとは思うし、一緒に暮らさなければわからないこともあるという意見には賛成だ。私はこのまま二人の勢いに流されることにした。


「分かりました。しばらくここでお世話になります」

「そっか、よかった。そう言ってもらえて嬉しいよ。僕たちはもう家族同然だから、遠慮せずここを家だと思って過ごしてもらえると嬉しいな。何か困ったことがあればいつでも言ってくれていいからね」

「はい」


 すると、私たちのやり取りを聞いていたエリックくんが私たちの輪に入ってきた。


「オレが部屋まで案内するよ。部屋、隣だし」

「そうだね。ならエリックにお願いしようかな。エリックは君と同い年だし、同じ学校に通っているから話が合うと思うよ。ぜひ仲良くしてやって」

「はい」


 私はお言葉に甘えてエリックくんに部屋に案内してもらうことにした。


「よろしくね、エリックくん」

「おう。…こっちだよ、ついてきて」


 私の言葉にエリックくんはニッと笑った。そして扉を開けて廊下へと案内してくれる。私はエリックくんの後について自分の部屋へと向かうのだった。

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