White Room
「では、質問を始めます」
その言葉から物語は始まる。
なぜ、ここの部分を切り取ったのか、それは面白いからだ。
「あなたの名前は?」
資料に書いてあるだろう、ものをわざわざ聞いてくる。
精神的なものに詳しいのならば、なぜ、精神を考慮しないのか。
わざとなのか、考えることが出来ないのか。
「ここはどこ?」
まさか、知能を疑っているのだろうか。
意味不明だ。
面白いことにお互いそう思っている。
目の前に大きなカメラ、その横に白衣の人。
ここに来たことは気に食わないが、この光景は面白い。
「なぜ、あのようなことをしたの?」
分からないか?
同じ人間なら、分かって当然のことだと思うが、何も難問を解けなんて言われていないのだから、初歩的なことだと思うが……。
「なぜ?」
動機、それは気に入らなかったからだ。
だが渋とく目の前にいる奴は聞いている。
心の中で独白するのも飽きたことだし、口を開いく。
「分からないの?」
その言葉にそれは固まった。
声を出したのが予想外だったのか、答えた内容なのか硬直している。
この状況をどうにかしたいが、目の前のそれよりかは頭は回っているため、どうにかできない。
「人を殺す、ということについて同じ人間なら理解でしょ? まさか本当に分からない?」
「お、教えてほしいな」
無理やりの笑顔でそう答える。
「ニュースで見る殺人事件。人はそれを嫌悪するけど、別に異世界の話をしているわけでもなければ、身近な話を流している。なら、身近な人でもそうでない人でも、殺人に至った原因、その要因を人間は誰しも持っているっていうこと」
そう区切り、それの顔を見ると表せない表情をしていた。
楽しい。
「他人事にすることが間違っている。殺人というものを自分が犯さないという根拠はないでしょ?」
「いや、人には自分を律する心がある。だから殺人というものは他人事になるし、普通の人はそんなことはしないって――」
ほら、典型的な言い訳をする。
「――普通の人。区別するのがおかしい、同じ人間なら一人でも殺人という結果に辿り着いた人がいるなら、可能性はゼロじゃない。何も人間全てが殺人とは言わないけど、可能性の話をしているの」
「可能性なら、しない人もいるはずだろ?」
「そう? あなたは思ったことないの、心の中で誰かを殺してやりたいって」
その言葉にそれは再び固まった。
反応が分かりやすい。
精神的なものを勉強しているなら、もうちょっと相手に見抜かれないようにしないと……。
「気持ちが変わりやすい、思ったことをすぐに言葉に出す。一言でいうなら正直だった子供時代は?」
そう、■の結論は人間は誰もが殺人を犯している。
そこに刃物があったら、衝動的に要因を襲い、殺すだろう。
「それか、極論になるけど、あなたの親しい人を殺せば、あなたは■に殺意を覚えるでしょ? 人を殺人することなんて簡単だよ。恨まれるという状態になった人間、そんな人間の心なんてゼリーのように方向を向けやすいでしょ」
誘導することで相手を殺人者にすることだってできる。
退屈だった。
壁の中、もっと言うなら白い壁の中……。
本当に自分の心の中まで白いなってしまいそうになる。
「で、質問はそれだけ……」
「……ぅ」
何かを呟いた。
「え?」
「違う……君、資料に書いてある人物と違う」
「何言ってるの? 思っていたのと違った?」
何か慌てている。
こちらから喋ったのに、ただ可能性の話をしただけなのに……。
ただ正論を言っただけなのに……。
「ねぇ、あなたを――」
心というものは変幻自在だ。
それに一対一、白い部屋に押し込まれ、ただ一人の人間と会話をする。
だが相手も人間だ。
容易いとまではいかないけど、心というものを科医と呼ばれている人間以上は心得ている。
震わせたものを掴み、魅了が如く操る。
あぁ、眠い。
ドタドタと激しい音、叫び声、惨い音。
計四人が倒れ、血を流す。
「ほら、これであなたも殺人者」
これが正に有言実行。
自分の証拠は残さないが、逃げ出すことはバレるだろうが、指紋は存在しない。
「ふふ――」
解き放たれた■……私。
これで五度。
手と足のみに血がついた白髪の少女は部屋を出て、廊下を歩く。
精神科医、精神病棟。
もう見慣れた風景、今まで退屈だったが、やりたい事が見つかった。
平和に過ごしながら、それをやることにしよう。
何だかんだ、場所が違えば白い部屋は好みかもしれない。
親殺し、目撃者を殺し、そのマンションの住人を殺し……たった十二歳で大量殺人を犯した前代未聞の容疑者。
人々は快楽殺人鬼と言ったが、彼女はそうではないと否定をする。
じゃあ、何?
「自分は、ただまだ成長途中の女の子」
ごく普通なことを言う。
それはごく普通なこと……少女は人間であることを証明したかったのだ。
普段このジャンルを見る人は、私の作品は読まないと思うけど、作者名からマイページに飛んでみてね。
推理ものは好き、登場人物がサイコパスなものが好みですね。
短編としてこれからも出していければと……、