53 オーランド王国調査団
なぜか魔王がオーランド王国に同行する。
魔王とは昨日も一緒に地脈の瘴気の汚染具合を調査した。その前だって魔王城内でもほとんどわたしと行動を共にしていたし、聖教会本部にも本人が合流してきた。魔王としての仕事はしなくていいのだろうか。
前に魔王の仕事として各地に散った配下の魔族に指示を出していると言っていた。支配地域で強力な奴が増えていたら排除させたり、各地に散って情報収集。邪神教徒の根城を潰させたり、邪神に対抗する手段を探ったり、物資調達など。
そういったことを初日以来しているのを見ていない。
「魔王のお仕事はしなくていいの?」
「終えている。念話で各々に指示を出してある。城内の取りまとめはツヴァイが行うし、外で収集した情報はヴラドが取りまとめ、それぞれが俺に報告を上げる。他に判断を仰ぎたい場合や重要と思われる場合はその都度俺に直接念話で報告する規則を作っている。気づかなかっただろうがお前と同行していた時も念話で報告と指示出しをしていた。いつもそうしている。何も問題はない」
「そうだったんだ…」
まったく気づかなかったけれど、横でずいぶんと器用なことをしていたようだ。わたしとの会話中にももしかしたら報告や指示出しをしていたのかも。
危うく「暇なのか」と失礼にも尋ねてしまうところだった。
少し目をすがめて顔を覗き込まれたので、失礼な考えがバレそうな気がして顔を背けた。すでにバレている気がしないでもないけれどシラをキリ通そう。
「ふふふ、きっとリンカちゃんが心配だからくっついて行くんだよ。可愛いから悪い虫が寄ってくるに決まってるものね〜」
「黙れ色ボケ」
そんなバカな理由じゃないでしょうよ。
地脈を調べた昨日の今日だし瘴気対策を早く知りたいのかな。
「瘴気対策の情報が欲しいの?」
「…それもあるがそちらはあまり期待していない。何か分かれば儲けもの、程度の期待値だ。どちらかと言えば邪神信仰者の動きがある件だな」
「邪神信仰者? …魔王支配領域を拡大させているから?」
わたしが見た過去らしき光景。邪神信仰者が神殿を壊し、自らが魔物化し、多数の命を犠牲にすることで多大な瘴気を生み出し大地を穢していた。オーランド王国でもああやって彼らは大地を瘴気まみれにして、世界を滅ぼしたい邪神の願いを成就させようと活動しているかもしれない。
「それが大きい。今まで連中のことはそこいらを飛ぶ羽虫のように鬱陶しいくらいにしか見ていなかった。いつまでも邪神が正常な神だった頃の前時代を引きずって現実を受け入れられない愚か者ども。だが今回の地脈の件で舐めすぎていた事を反省した。連中の実態について詳しく調べたい」
「それは僕らみんな反省だね。眼中になかったから拠点を見つけてもみなごーーー片付けるばかりで詳しくは聞き出さなかった」
みなご、とはわたしへの気遣いによるものだろうけれどそこまで言っていたらもう分かるからそのまま言ってくれていいのだけれど。
「じゃあ二つの件を情報を並行して集めていこうね。わかったゲーデ?」
「聞いていたのだから分かる。大人しく従う」
ずっと口を開かないゲーデに話題を振り、頭を撫でて嫌そうな顔をされるヴラド。
それを見守る魔王にツヴァイにガエル。これからオーランド王国で人慣れのリハビリをわたしと一緒にいる事でさせるので、がんばれとエールを送っているようだ。子どもの頃に城に来たし元四天王の息子だからか、親戚の子とか友人の子のような感覚なのかもしれない。まるで保護者と小さな子どものようで微笑ましい関係性だ。
「では行こう」
かくしてわたし、魔王、ヴラド、ゲーデの四名によるオーランド王国調査団が現地入りすることになった。
わたしたちは転移でオーランド王国のこの前の港町に移動した。朝の時間帯のため、人通りが多く、朝市が開かれ賑わっている。
探しているテオドール王子は城に帰ったという話だからこの港町ではなく王都に直接転移した方がよかったのでは?
「この国の王都には行ったことはない。だから直接は転移できない」
「僕もないなぁ。うちの子なら誰か行ったことあるだろうけれどみんな出払っているからいないんだよね〜」
「オレもない」
残念ながら行ったことがない場所には転移できない仕様の魔法なのでこの町から徒歩なり馬車で移動することになる。
「しまったなぁ。ガエルのとこの子がいれば飛んだり走ったりですぐ移動できたよね〜 ガエルも呼んで送ってもらおうか?」
「やめた方がいい」
「阿呆、魔獣が出たと騒ぎになるだろうが」
ヴラドのボケなんだか天然なんだかわからない発言にゲーデと魔王が突っ込み即却下になった。確実にテオドール王子の注意は引けるだろうけれど駄目なやつだ。一緒に討伐対象にされること間違いなし。
「それに寄りたいところもあるから悪くない」
寄りたい所? 何か特別な場所でもあるのかと思ったら違った。
「どれでも好きな服を選べ。全て買う」
服屋に連れて行かれ服を選べと言われて、わたしはいま困惑している。
お読みいただきありがとうございます!
おもしろかったと思っていただけたらぜひブックマークや評価をお願いします。
執筆のモチベーションが上がります!




