30 調査開始
「魔王支配領域内では魔物が発生しやすいが、中でも強い魔物が発生している地域を確認したい」
「強力な魔物って?」
「それは遭遇してのお楽しみだ。まぁ手こずったりはしない程度だが」
「それ誰の基準?」
「俺だが」
「いや、世の中の基準より遥かに強い人が語っても説得力ないから」
「ガエルだって同意するはずだ」
「あの人も基準を語っていい人ではない」
魔王城を発ったわたしたちは、まずは魔王城に近い場所から確認して回ることにした。
ツヴァイ手製の地図を広げると魔王が一点を指差す。
「この場所だ」
地図には複数箇所に赤い点で印を書き込んである。
みんなで確認する場所の意見を出してピンで刺したところを赤いインクで塗ったのだ。これで持ち運びやすくなって出先で広げられる。
それから魔物が発生しやすかったり、強力な魔物が出現しやすい場所は前々から把握していて、定期的に排除していたらしい。
以前ガエルが魔獣たちと『間引き』しているといっていたのがこの仕事だそうだ。ケルベロス級の魔物相手に大変だなと思ったけど、ガエルとお供の魔獣グリフォンだけで渡り合えそう。魔王に聞けば「ガエル一派にかかればお遊び」とのこと。敵じゃなくて良かった。
「魔物の発生の仕組みははっきりとはわかっていません。しかし瘴気が濃い地周辺で生まれているようだとはわかっていたのです」
「動物が瘴気取り込んで魔物になるのだから、動物を駆除すれば魔物も生まれないんじゃない?」
「理屈で考えればそのはずです。しかしそれが成立していなかったのです。この魔王支配領域は動物は新たに生まれる環境ではありません。瘴気が蔓延しているために草花は生えず木は枯れて虫さえいない。動物もいるはずがない。それなのに魔物は発生しています」
「動物が魔物化してるわけじゃない?」
「わたしはそう考えました。しかし物証がなく手詰まりでした。それが原因が地脈の可能性が高いとわかった。この魔物発生の理論は大いに検証しがいがあります」
ツヴァイは研究者魂に火がついたようで一緒に調査に行きたがった。しかし魔王が「書庫の本を読破してからなら許可してやろう」といつ終わるとも知れない命令を出した。たぶん熱意ありまくりなツヴァイがついてきたらウザイから連れて行きたくなかったんじゃないかな。彼は「調査記録を楽しみにお待ちしています」とガエルを引き摺るようにして書庫に向かった。
ここは地図の古い表記によると、帝国内の街の一つだったようだ。
でもいまでは建物の石の土台があるばかりで、ラスタ王国跡より瓦礫が少ない。風化が進んだのだろうか。風が吹いていて砂埃が少し舞っている。
瘴気は濃い。
ラスタ王国跡や魔王城の謁見の間に近い。
つまりは魔物も湧きやすい状況だ。
「「「グルルルルルルッ」」」
三つ首の犬の魔物ケルベロスが行く手に現れた。
大きさ、瘴気の濃さ、オルトロスと同等の地獄の番犬とも呼ばれる有名なボス級の魔物。
わたしはあらかじめ唱えておいた神聖魔法を放った。
「ホーリージャベリン!」
直撃してかなりのダメージを与えられたがよろめきながらもまだ立っていた。
その首めがけて魔王の剣が振り上げられ首と胴が別れた。
「おとなしく俺に守られていろ。当分お前は感知以外力を使うのは禁止だ」
「ーー国王命令じゃ仕方ないか。しっかり守ってね」
「ああ、まかせろ」
聖女の力の使用制限をかけられておとなしく従う。露払いは魔王におまかせしてわたしは地脈の瘴気の感知に集中する。
まずはこの周囲表面の瘴気を感知。それから地下へと深く深く潜っていく。地表から地下に潜っても瘴気が濃い。大地に瘴気が染みついているのだろう。瘴気の海を進みあの線状の黒いモノ、瘴気に汚染された地脈の一端を見つけた。
「あったよ。瘴気で真っ黒になってる」
「そうか、様子を記録しておいてくれ」
「うん」
わたしは魔導書から『地脈調査記録』と明記してある表紙のノートと羽ペン、インク壺を取り出し白紙のノートに書き込んでいく。
"A地点、地脈汚染度10、地表汚染度9(※1〜10段階判定でMAXが10)
気づいた点:地表から地脈の間の地層も瘴気に汚染されている
魔物発生:ケルベロス 体"
「ねえ、倒したケルベロス1体だけで他に出なかったよね?」
「20…いや30、か? 数が多くていちいち数えてられるか」
「あなた本当にもう自分で基準語んないでね? え、何、倒す音しなかったけど?」
「水球に閉じ込めて窒息させた。静かな方がお前が集中できるだろうと思ってな」
「そ、そう…」
拷問のような倒し方がわたしの為を思ってとなるとなにも言えなかった。ケルベロスの冥福を祈っておこう。
A地点の調査はこれで終わりにして、次の地点にわたしたちは飛んだ。
お読みいただきありがとうございます!
おもしろかったと思っていただけたらぜひブックマークや評価をお願いします。
執筆のモチベーションが上がります!




