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5 ダライアス街道と魔物の住む森

読んでいただきありがとうございます。とても嬉しいです!

作品を初めて書いているので試行錯誤してます…

 ダライアスという街はわたしたちの今いるコレッタからは隣街だそうだ。

 ここからダライアスまで街道も走っているため徒歩でも翌日には着くそう。

 しかし森のど真ん中を突っ切るように切り開いて作ったその街道、魔物によってときどき人的被害が出る。

 3日前、街道で商人の馬車が魔物に襲われた。

 街道を通った冒険者が無人で馬なしの横倒しになった馬車を発見。

 あたりには血の跡が残されていた。

 魔物に襲われたと判断しコレッタの町に冒険者は引き返して報告。事態が発覚した。


 そんな事件があったばかりなので街道は封鎖、騎士団に魔物討伐依頼を申請中。

 街道の安全確認が完了しないと通れないが、見通しは立たないそうだ。

 事情はわかったけど困ってしまった。

 ぐずぐずしてると例の王子が街を移動してしまう可能性があった。


 なんでも恋人が常にいる状態なんだけど長続きせず、破局すると別の街にいって新しい恋人を作りいちゃいちゃが新聞に載る、というルーティンを繰り返すらしい。

 フェルディナンドとやらのわたしからの心象は悪くなる一方だ。


 そういうことで急いでダライアスに行きたいので、街道を使わず、魔物のいる森の中を突っ切って行く方針になった。

 なお封鎖してようがしれーっと使えばいいのではとウィルにお伺いを立てたが、入り口に自警団が見張りを立てているそう。

 もし勝手に街道使ったのがバレたら彼らの責任問題になってしまうそうなので断念。自己責任の範疇でやろう。


 自分達は魔王城に辿り着いた勇者と聖女。

 よほどの相手でないかぎりは敵ではない。

 …フラグを立てたような気がなんとなくするので、回復薬を多めに購入しておいた。


「通常では2人きりのパーティーで魔物の中を突破は危険なため推奨されない。しかし僕たちは迂闊に人を雇うのもリスクがある。だから二人で乗り切ろう。大丈夫、僕たちは強い。この辺りの魔物は弱いほうだから心配いらないよ」


 正体を知られると面倒だ。

 勇者と聖女、魔王討伐のため4人で北に向かったはずのパーティの2人が大陸中央部にいる。

 理由を探られそうだ。面倒なことになる。

 完全に信用できる人間以外、いまはあてにできない。


 日のろくに入らない鬱蒼とした森を方位磁石を頼りにわたしたちは進んだ。

 先頭をウィルが歩き、それについていく。



「はっ!」


「ホーリージャベリン!」


 魔物は弱かった。

 いや、わたしたちは強すぎた。

 強くてニューゲーム状態。

 まあね、魔王城…ラストダンジョンまで攻略してあとはラスボス倒すだけってところまでストーリー進めたからね。そりゃ強い。

 スライム、ホーンラビット、ブラッディービー。

 某RPGでお馴染みスライム(顔はない)、額に真っ直ぐな螺旋状の溝ありな白っぽい角を標準装備しているうさぎ、お尻の針を獲物に突き刺し血を吸うというお前の口とお尻と消化器官の配置どうなってる?って聞きたくなる蜂。

 他には植物系や、ウルフ系の魔物と戦った。

 ウィルの一撃、わたしの神聖魔法で崩れ黒い靄となって霧散した。

 魔物の最後はいつもこうだ。

 死骸は残らず跡形も残らず消滅する。


 しかしだ、やはり2人だと戦い辛い。めんどくさい。

 特に群れられると厄介で、わたしが結界を張りその中から攻撃魔法を打ち、ウィルは結界を背に狼を斬ってはまた斬るを繰り返した。

 全滅させるのは時間がかかってしまった。

 いや広範囲魔法とかあるよ?

 わたしは魔力量は異世界ものあるあるでかなり多い。

 こっちの世界の人間の平均の10倍ある。

 でも流石に連発しまくればすぐ底を着く。

 慣れている場所ならともかく土地勘がないところでそんな危険行為はできない。

 


「ウィル、いまこの森のどこらへん?」


「まだ半分くらいだと思う」


 …まだ半分か。

朝出発したけど木々の合間から見える太陽は昼は回っていそうだ。

 このペースだと森のなかで夜を迎えることになりそう…


 !! 前から強い瘴気を感じる!


「君も感じた? …これはまずい」


 背中がゾクゾクする。

 ウィルと同意見だ。まずい。

 かなり強力な魔物がこっちに近づいてくる!

 

「リンカ、これと戦うのは僕たちだけでは命の危険がある。避けよう。右手の方に移動して大きく距離をとって迂回してやり過ごそう」


「うん、賛成。魔王城近くにいた魔物クラスなんじゃないかな…」


「僕もそのクラスだと思う。…4人揃って懸命に倒したね」


 皮肉にもあんな連中でも仲間の、パーティーのありがたみが身に染みる。

 魔王城に近づいて行くほど魔物は強力になっていった。

 出発地のエルグラン王国ではスライムやラビット系の一般人でも大人なら倒せるような強さだった。

 しかし魔王城付近ともなればドラゴンやアラクネなど力も身体も知能もある魔物とザラに遭遇した。

 強い魔物は瘴気も強い。

 近づいてくる魔物は二人では勝てる自信がない強さは持っている。


 物音を立てないよう静かにわたしたちは右手側に足を進めた。

 そして右手側は森を抜けると封鎖している街道に出る。

 魔物はナワバリがあるからひょっとしたら森から出ればわたしたちは安全かもしれない。

 しかし、ろくに距離が開かないうちに向こうの動きが変わった。

 こちらに、スピードを上げてぐんぐん近づいてきている!


「気づかれたか! リンカ、戦闘準備だ!」


「う、うん!」


 街道に出る前にわたしたちは覚悟を決めなきゃいけなくなった。

 わたしたちの目の前に2つの首をもつ大きな犬ーーーオルトロスが姿を現した。

 大きい身体に比例した強力な瘴気を放つ1体のオルトロスは木々の隙間を縫って現れた。

 巨体に蛇のしっぽ、2つの頭、鋭い歯が並ぶ大口から唸り声を上げ、姿勢を低くしてわたしたちの周囲をゆっくり回り出す。


「ホーリーエリア!」


 急いで結界を張り、わたしは中から、ウィルは結界を背にして魔物と対峙する。強敵と戦う際のフォーメーションだ。

 オルトロスとは戦ったことがある。

 魔王の支配地域で戦った強敵だ。

 巨体に似合わず俊敏で、顎で木の幹をいとも簡単に噛み砕き、全身が硬い筋肉で覆われ硬く、体力もある。

 なんでこんなダンジョンのボスみたいのがこんななんてことない森にいるの!?


 わたしが攻撃呪文を唱える間にも、ウィルとオルトロスの睨み合いは続いたがオルトロスが先制攻撃を仕掛けた。

 よだれを撒き散らしながらウィルに襲い掛かったが、ウィルは地面を転がり受け身をとって避ける。

 

「ホーリージャベリン!」

 

 オルトロスが悲鳴を上げ、そこをウィルが追撃。

 首1本を切り落とした。

 よし、2人でもなんとかなりそうだ。

 

 敵の攻撃を避け、わたしが術で攻撃、ウィルが切り付ける。

 それをまた行いもう一つの首を狙うが相手も学習したようで回避行動をとるようになってきた。

 当たっても致命傷を与えられない。

 なら徐々に傷を負わせて弱らせるか。

 でも相手はそうとうな体力を持つ。

 持久戦になったらこちらの身が持たないかもしれない。

 とりあえずウィルを回復させようと唱えた。


「ホーリーヒール! ウィル! このまま体力勝負に持ち込まれるとまずいと思うんだけど大技いける?」


 勇者は光属性の魔法を武器に付与して戦う魔法剣士だ。

 その勇者一族には子孫代々受け継がれてきた数々の技がある。

 そのなかでも大技である一撃必殺の技、奥義がある。


「あぁ、僕も一気に決めた方がいいと思う! 隙を作れるかい?」


 技は魔力を込めて繰り出すため威力があるが、使うと大きな隙ができる。

 もし相手にかわされるととても危険なため絶対に当てないといけない。

 なのでわたしは動きを封じるのに向いた術を唱えた。


「ホーリー…」


 いよいよ術を放とうとしたとき、オルトロスがこちらを見て咆哮を上げた。

 それはもはや衝撃波だった。

 わたしは張っていた結界もろとも吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられた。

 視界がブレた。後頭部も打ち付けたんだろう。

 一瞬息が止まり、つぎに視界が回って上も下もわからなくなった。

 三半規管が揺さぶられたからかな。

 急いで起き上がろうとするけどクラクラして身体がうまく動かない。


「…!! …!!」


 ウィルが何か叫んでる。

 起きなきゃ。

 動きの悪い腕を使いなんとか上半身を起こす。


 オルトロスがわたしに向かって走っていた。


 ウィルがそれを追っている。鬼気迫る表情というのはこういうときにいうのだろう。


 やけにゆっくり動いているように見える。

 オルトロスはゆっくり口を開けてもう目の前ーーー


 ぼうっと、左のほうに灯りが見えた。


 まるで夏祭りの道の両側に並んだ提灯(ちょうちん)のような暖かそうな色合いの小さな赤い光。

 その火の玉が静かに左から右にオルトロス目掛けて走った。


 火の玉はオルトロスの全身を包むほどに膨れ上がり対象に絶叫を上げさせもがき苦しませた。


「リンカ!!」


 ウィルの声で我に返った。


「…大丈夫っ もう一度っ」


 止めをささないと。

 もう一度、中断させられた術を唱える。

 まだ起き上がれないから不格好な姿勢だし息も吸いづらい。

 それでも正確に確実に口を動かした。


 放つ術は聖なる槍に無数に貫かれて地面に縫い止められる術。


「ホーリージェイル!!」


 今度こそ目標に突き刺さり狙い通り動きを止められた。

 そこにウィルがありったけの魔力を込めた眩い光を放つ剣を振り下ろした。


「レイブレイク!」


 切り落とした首といまだあった首、その間から巨体を切り裂かれたオルトロスは音をたてて倒れた。

 

「はぁっ はぁっ」


 光の収まった剣を持ったまま、乱れた呼吸をととのえながら彼はオルトロスを見詰めてその姿が霧散するのを見届けた。

 確実に息絶えたのを確認すると悲壮な顔をしてわたしに駆け寄ってきた。


「リンカ!! 無理に動かずじっとしていて!」


 彼はわたしを背後にかばい、周囲を見回した。

 空気が張り詰める。

 彼は気配を探っている。

 さっきのオルトロスに向かってきた火の玉、あれは魔法だった。

 しかし、周りに人の気配はなかった。魔物もいなかった。

 

 けれどわたしはあの魔法から覚えのある魔力を感じていた。

 

 あの魔力は魔王のものだ。


聖女の魔法は全部「ホーリー」が頭につきます。

ホーリージャベリン→槍飛んでく

ホーリージェイル→槍で串刺しして足止め

ホーリーヒール→回復

ホーリーエリア→結界

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