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19 おしゃべりしながらほのぼのランチ

「やることがない…」


自室のベッドに舞い戻ったものの、眠気はどこかに行ってしまい眠れない。どうして過ごそう?


部屋を見回してみる。ベッドやテーブルや椅子、クローゼットや化粧台など必要最低限の家具はある。

ただ本だとか、娯楽になりそうなものは何もない。

こういうときスマホがあればいくらでも暇つぶしできるのになーと思ってしまう。

そういえばクローゼットはまだ確認していなかった。中を見ていたら時間が潰せるかな。

…でも「ベッドから出るな」と言ってたな。バレるかな。…なんとなくベッドから動いたら魔王GPSに察知されて怒られる気がする。

でも体を心配してくれているから怒るのだというのはわかっている。仕方ない、今日は従っておとなしくベッドにいよう。


すると鐘の音が聞こえてきた。

ということはお昼になったということだ。

そういえばお腹が空いたけど、食堂に行ったら部屋から出たと怒られるのだろうか。それはさすがに理不尽だから抗議しよう。


そこにノックの音が響いた。

この城に来て初めてのノックではないだろうか。

「どうぞ」と答えると扉からゼルマとアルマ、ジョゼフィーヌがワゴンを押して入ってきた。


「聖女様、昼食をお持ちしました。ベッドの上でお召し上がりください」

「わざわざ持ってきてくれてありがとう! お腹が空いたから食堂に行こうかと思ってたの。…これってもしかして魔王の命令で?」

「はい。部屋から出すなと」

「…病人じゃないんだからここまでしなくても」

「へ、陛下はお姉さんが無理してないか心配なんだと思いますっ」

「今朝の浄化で全力を出して倒れられたそうですね。それは陛下も心配されますよ」

「いや、それは大袈裟なんだけど…」


なんだか話が誇張されてないかな?

まあ、へたり込んだからーーしかも2日続けてーー心配かけたのは確かなんだけど。

とりあえずベッドテーブルに並べてくれた食事をいただくことにした。

あ、チーズリゾットだ! 好物なのでうれしい。

それにレタスやキュウリにコーンのサラダ、新鮮だ。あ、中庭で植物育てられるようになったことを伝えなきゃ。


「あのね、中庭を浄化したから、植物育てられるようになったよ。野菜を育てれば採れたてを食べられるようになると思うんだ」

「え、まさかそのために中庭を浄化されたのですか?」

「お野菜、お庭で作って食べられるの? すごい!」


双子が目を丸くして驚いている。そして喜んでくれているようでやった甲斐がある。

アルマははしゃいで何を作るか夢を膨らませている。


「トマト、キュウリ、キャベツ、レタス、ナス、コーン、じゃがいも、たまねぎ」

「トマトはいらない」

「ゼルマが嫌いだから食べたくないだけでしょ。トマトはいろんな料理に使えるんだから必要です!」

「ならアルマの嫌いなピーマンも作らないとね」

「むぅ〜」


可愛い攻防戦にまたもほっこりする。

ほのぼのとそんな光景を見ながらカップの紅茶を飲み干すと、ジョゼフィーヌが紅茶のおかわりを注いでくれた。お礼を言ったらかしこまってしまったけど、ずっとここにいてくれている。以前のように姿を見せない方針はいいのだろうか?


「ジョゼフィーヌさんはわたしと会ってくれるんですか?」

「は、はい、お客様がその方が好まれるならばと愚考致しまして、侍女長にご相談しまして許可を得ました」


わたしが望んだから元々の規律を飛び越えて姿を見せてくれることにしたのか。

わたしを思ってしてくれたということが、胸が温かくなる。


「ありがとうございます。うれしいです。これからもよろしくお願いします」

「ここ、こちらこそですっ ああああの、それからわたしのことは呼び捨てでお願いいたしますっ 恐れおおく…っ」

「はい、ジョゼフィーヌ。わたしのことはリンカと呼んでください」

「は、はい、ではリンカ様と」


緊張がまだあるのだろうけど、そのうち気楽におしゃべりできるようになれたらいいな。


「あっ わ、わたしもお姉さんのことリンカ様って呼んでいいですかっ?」


ゼルマとじゃれていたアルマがわたしたちの呼び方の話題に食いつき自分も名前で呼びたいと言ってきた。もちろんと答えればハニカミ笑顔で喜んでくれた。かわいい。


それからわたしたちは中庭のどこで野菜を育てるか、すなわち畑というか家庭菜園くらいの規模の土地をどこに造るか相談した。

日当たりがいい場所がいいだろうということで南側の一角を候補にした。

次は何の野菜を作るかということで、夏野菜を作るにはこの地の曇りばかりの天気では厳しいだろうとトマト、キュウリ、ナス、コーンは見送りとなった。トマトが作れずアルマはしょんぼりしているけど、ゼルマは清々しい笑顔を浮かべている。そんなにトマト嫌いなのか。

最終的にはこの地の気候でも育てられそうなやつを調べて試すことになった。

うまくいったらだんだん種類を増やして、100%中庭産の野菜を使った食卓になる日がくればいいなぁ。


お読みいただきありがとうございます!

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