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6 経験と実力の差

中庭に3人で降りる(階段を使って)と、ツヴァイは例の魔導書を土剥き出しの地面に置いた。

中庭は草一つ生えていない不毛の地でカサカサに乾いた砂地だ。魔王の支配地域全てに言えることだけど生命を感じない荒れ果て具合だ。そういえば植物もだけど虫も見ていない。



「よくこんなところで生活してるね…」

「いきなりなんだ? 邪神の封印場所からそう離れるわけにはいかないだろう。本体は動かせないし封印を近くで監視しなければいけない」

「うん、ごめん、そういう話じゃなくてね」



死の大地と言って差し支えない場所じゃ生きてる心地がしないとか気が滅入るとかあるじゃん。

空模様もどういうわけか魔王城中心に魔王の支配地域ってずっと厚い雲に覆われてて薄暗い。

空がそれらしい雰囲気出るように空気読んで特殊効果をしているのだろうか。



「魔導書から少し距離をとってやるぞ。この辺りでいい。お前は俺の陰から浄化しろ」

「わかった」



魔導書から2メートルほど距離をとって魔王を盾にするようにその背後に立った。

改めて見ると背が高いな。

わたしは160センチないくらいだけど彼の肩に視界が遮られる。30センチくらい身長差がありそうだ。

それに背に護られる形になって信用されてるし大事にされてるなと思う。だまして背中からブスッとやられる心配はないとわたしを判断しているのだ。加えて何が起きても護ってくれそうな頼もしさ。このくすぐったい気持ちはクセになりそうだ。



「ホーリージャベリン」



投げ槍型の光を一本魔導書にとばした。

さっきまでより距離があるのと魔導書から漂う瘴気の強さで威力の高い魔法に変えた。

魔導書は光に包まれ剣やソファーより時間をかけてそれは収まった。



「案外何も起きなかったね?」

「危険がなくてよかったとしよう」



何事もなく浄化がすんで安心なようなちょっと残念なような。

わたしは魔導書まで近寄り手に取ってみると緑のハードカバーの背表紙には『魔物図鑑』とある。

ページを開くと紙は白さを取り戻して黒インクで魔物の名前とリアルな外観の図解が左ページにあり、右ページには魔法陣が描いてある。ペラペラと流し読みするとスライムからはじまり有名どころの魔物の名前がずらりと揃っている。

魔王が背中側から覗きこんできた。



「この魔法陣…」

「コカトリスにバジリスクに、あ、オルトロスもいる」

「馬鹿っ 読み上げるな!」

「え」



魔王にぐっと腕を掴まれ魔導書を取り落とすと開いていたページの右側が光り出した。

お腹に腕を回されて抱えられると一気に距離を取って着地すると再び背後に庇われる。


魔導書から光が3つ出てきてぐんぐん大きくなっていき輪郭があらわになっていく。



「あの魔法陣は封印の効果があり、左ページに書いてある名称を呼ぶことで封印されていた対象を解き放つように組まれている」

「つ、つまりそれって」

「コカトリスにバジリスクにオルトロスのお出ましだ」



はあっとため息をついたその背中越しに、わたしが解き放った3匹の魔物がその全容を現し咆哮をあげた。



「ごめん! こんなつもりじゃなくて! わたし責任とって倒すから!」

「いや、いい」



申し訳なさでいっぱいでテンパりながら浄化するべくどの魔法を使うか考えはじめると魔王が右腕を敵にかざした。

手のひらを上にして指をパチンと鳴らす。

わずかに魔力と瘴気が彼の体で動いたのがわかった。

3体の魔物の足元から炎が巻き上がり、天までつくかのような大きな炎の竜巻が襲った。ものの1分もかからず炎は収まり、跡には魔物はチリひとつ残っていなかった。



「嘘でしょ…」



わたしとウィルが苦労して倒したオルトロスがあっさりやられてしまった。めまいがする。

膝の力が抜けてへたり込んだ。



「おい大丈夫か?」

「…そうだよね、あの時助けに入ってくれた火の玉の威力すごかったもんね。楽勝なんだよね」

「俺だと気づいていたか。いや、まあそうだが」

「なんかね、理不尽を感じた。わたしたちあんなに頑張って倒したのにさ、あっさり倒しちゃったし」

「いや、俺も伊達に魔王を名乗っている訳ではないしな、これくらいは。経験の差もあるしな」

「わたしたちみたいな弱っちいのが『魔王倒すぞ』とか言ってたの滑稽だったでしょ」

「いや、お前たちはお前たちなりに頑張っていたと思うぞ?」

「わたしは思いました」

「ツヴァイ!! てめえ黙ってろ!」



わたしが落ち込んでしまい魔王がなぐさめるというレアな光景がしばらく続いた。


その後持ち直したわたしは腫れ物扱いされ気を遣われる中、燃えずに残っていた魔導書を手に取った。



「どうせだから物騒だし中に封印されてる魔物全部倒すか」

「そうですね」

「…きっとお二人ならドラゴンだって楽勝なんでしょうからね」

「…その魔導書にはドラゴンは居ないようだし空白が多いから3人で片付ければもっと楽勝だぞ?」

「…お力をお貸しください」



さすがにぶちぶち腐りすぎたので機微読めない系のツヴァイまで気を遣ってきた。ごめんね面倒な女で。



「じゃあ、ちゃちゃっと3人で片付けよう!」



気を取り直して魔物との連戦クエストを引き受けた。上位レベル者との強敵相手の共闘ともなれば経験値がガッポガッポだ。ゲームなら。この世界に経験値ないけど。



お読みいただきありがとうございます!

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