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14 気のいい旅の仲間たち

お読みいただきありがとうございます!

この話で書き溜めていた分が終わってしまったので

これからあとは更新は間が開きます。

更新したらまたぜひ読みに来てください。

「我々は聖騎士団第一騎士隊でございます。御二人を聖教会本部まで護衛とご案内をいたします」



 わたし、ウィル、それから国王代理としてフェル、外交担当の大臣、その部下の文官さんたち、ロンバルディ王国の騎士団一隊、そして聖騎士団第一騎士隊の大所帯でわたしたちは聖教会本部に向かっている。



 聖教会は独立した一つの国であり、なんとロンバルディ王国の隣にある。

 お隣だとは思わなかった。

 国土は大陸を縦断する山脈全体。

 あの魔王討伐の旅で避けて通ったあれがまるごと国だとは驚きだ。

 なんだってそんな住みづらい場所を選んだのか理解に苦しむ。

 その山脈の3000m級の山の上に聖教会の本部があるそうだ。

 馬車で富士山くらいの標高の山の頂上まで登っていくのだ。

 徒歩じゃなくてよかった。

 騎士たちはみんな騎馬だけど馬が大変だ。

 全身鎧の重さは30㎏はあるそうでそれに騎士本人の体重に武器にと考えれば100㎏くらいはあるだろう。

 馬すごい。馬めっちゃ力持ち。



 またこの聖教会、小さい国土ながら多くの国に隣接しつつも一度も戦火に巻き込まれたことがない。

 立地もあるだろうけどそれよりも宗教界の総本山であることが理由として大きいそうだ。



 この世界の人々は宗教をとても大切にしていて誰もが皆信じる神を信仰している。

 最大人気は『アウレリア教』。

 『アウレリア教』の信仰する創造神アウレリアは世界を作ったという神様だ。

 大地と空とすべての生き物の生みの親。

 生みの親というだけあって女神様らしい。



 ほかにも農耕や子孫繁栄や厄除けなどの古くから民間に親しまれている神々がいるそうだ。

 ウィルたち勇者一族は光属性の力を授けてお隠れになってしまった『女神エールヒルデ』を信仰していて、フェルのところのロンバルディ王家はアウレリア教らしい。



 この世界女神様ばっかり聞くな。

 男神様は肩身が狭い思いをしていないだろうか。

 と思っていたけど男神は軍神や戦や力仕事系が多いようで一般向けではなく騎士や軍人、冒険者の一部が信仰しているそうだ。



 また勇者や聖女を信仰する宗教もあるらしい。

 自分が信仰の対象になってるというのはなんとも変な気持ちだ。



「聖女猊下、勇者猊下を一生に一度だけでもお目にかかりたいと幼少から憧れ聖騎士になりました。それがこうして道中の護衛として侍ることができるなどもはや思い残すことはございません。我が一族の子々孫々末代までの誉れとなりましょう!」



 この聖騎士団第一騎士隊の隊長のミハイルさんはガタイのいい身体に全身鎧でこれぞ騎士という見栄えの30歳代だろう男性だ。

 先祖代々聖女と勇者を崇拝している筋金入りの信者らしい。

 うん、彼ならなにものからも身を挺して喜んで守ってくれそうだ。命も厭わないに違いない。

 そしてこの隊の隊員はみんなご同類らしく、すっごくキラキラした少年の様な瞳であったり、うっとりと恍惚とした顔でわたしとウィルを見つめてくる。

 その視線をむけてくるのは少年少女なんかの初々しい子たちではなくガチムチの20〜40代くらいの男たちだ。

 わたしは腰が引けた。


 以前ダライアスから王都ロンバルディーアまで馬車旅したときは休憩の時は外に出て一息入れたのだけど、この視線に囲まれ熱く話しかけると精神力がガリガリと削られそうなのでなるべく馬車に籠った。

 めっちゃ隊長さんに「お茶しましょうよー」って誘われるけど半分は断ってる。

 ごめんなさい、自分のメンタルを優先します。



 食事の準備は聖騎士のみなさんがやってくれている。

 道中に町や村があればそこで食事したり泊まったりしているけど、野営をしなければいけないときは聖騎士たちが張り切って作ってくれている。

 旅の資金は潤沢に上から出ているそうで毎日肉や野菜がふんだんに提供されていてしかもとても美味しい。

 料理上手な隊員が中心となってハーブで肉の臭みを抜いたり、毎回メニューが違ったり工夫されている。



 とっても美味しいと言ったら聖騎士隊員たちがそれはもう喜んでくれた。

 ほろりと涙をこぼしている者もいる。


 

「我々は各国からの要請で魔物討伐にあちこち遠征しますから野営が多く自然と料理の腕が上がるのです」


「あの、失礼かもしれませんが魔法や物理攻撃も効きますけど効果は薄いのでは…非常に危険なのではないですか?」



 魔物に各種魔法や普通の剣や槍の攻撃も効くけど、聖女の神聖魔法や勇者の光属性の魔法と比べれば効果は1/10くらい。

 時間もかかるだろう。

 強力な魔物相手ならその危険度は跳ね上がる。



「もちろん危険です。殉職するものもたくさんおります。それでも我々が倒せばそこに暮らす者たちが危険に晒されなくなります。それが我々聖騎士の喜びで生きがいなのです」



 わたしがした今更な問いに笑顔で「喜びで生きがい」と答えたミハイルさんが眩しかった。

 隊員のみんなも誇らしげにしている。

 わたしはみんなの顔を見ているのが胸が苦しくなってうつむいてしまった。


 そんなわたしを心配そうにウィルとフェルが見ていたことにも気づかなかった。





               *





 旅は順調に進み平地が山道になり民家もだんだん見なくなり、木の種類も変わっていって木の高さもだんだん低くなっていった。

 気温も下がっていって肌寒くなりケープを羽織った。



 聖女カラーといえば"白"らしい。

 伝統的に代々聖女は白い服を着てきた。

 白だと「穢れのない」とか「清らか」とか「神秘的」みたいなイメージが強いそうで聖女のイメージにぴったりだとか。

 白いローブに白いケープ、服となると白系をまずすすめられる。

 アクセントに金糸で刺繍やら(刺繍の模様や糸はなんか魔法的な耐久性だか防御だかの力の作用があるとか説明されたけど詳しくは忘れた)レースやら(レースも魔法的な作用があるのかきいたらただの飾りらしい)いろいろアレンジされてはいるけど似たようなワンピースタイプばかり。


 たまには他の色の服も着たいものだ。

 黒とかグレーとか部屋着や近所のコンビニやスーパーに行くような地味で目立たない楽な格好がしたい。


 あとはパンツスタイル、ズボンが穿きたい!

 わたしは日本では制服くらいでしかスカートを履かなくて、外出はデニムが基本装備だった。

 しかしこの世界は女性はスカートが基本装備でまして聖女はワンピースかローブと決まっているらしい。

 パンツスタイルはして欲しくないらしく要望を出してもロンバルディの国王陛下や王妃陛下すら叶えてくれない。

 困ったことや望みがあれば叶えるって言ったじゃんか…






 そうして出発から9日目に山の頂上にうっすら建物が見えて来た。

 山頂付近には霧が出ていて見通しが悪く、馬車から見える景色も霧に覆われてよく見えない。

 ただ深い底の見えない谷があり、わたしたち一行はそこにかかった橋を渡る予定で今日は進んでいると聞いている。



 しかし橋を目前にして一行の後ろの方が騒がしくなった。

 笛が鳴った、長く一回。

 みんなに緊張が走る。

 笛は魔物が出た合図、長く吹くのは強力な魔物、回数は数。

 つまりこれは「強い魔物が1体出た」という合図。

 道中も魔物との戦闘はあったけどどれも笛は短く吹かれていた。

 この一行でぶつかるもっとも強敵が現れている。

 ミハイルさんが停止命令を出し、戦闘体制をとらせる。

 後列から伝令が走り状況が伝えられたようだ。



「後方にワイバーンが出た! 馬車担当以外総員武器を取れ! 聖女猊下と勇者猊下に我らの勇姿をご覧いただく絶好の機会が訪れたことを慶べ貴様ら!!」



 野太い歓声が上がり聖騎士たちがおのおの武器を握りしめた。



「総員第2布陣で後方に出撃!!」



 聖騎士が魔物討伐のため駆け出した。

 馬車の警護担当はロンバルディ王国の騎士たちで構成されているが、彼らは馬車の周りで待機だ。


 しかし前方の馬車から金髪と赤髪が武器を手に飛び出しているのが窓から見える。

 わたしの乗ってる馬車に駆け寄ると



「僕たちは後ろに加勢してくるけれど、リンカは馬車に居て」



などと言って駆けて行った。

 その後を「おれは大した戦力にならんのだけどあいつほっとくわけに行かないから行ってくるわ」とか言ってフェルが苦笑いを浮かべて追って行った。


 後ろで聖騎士のみんなもウィルもフェルも戦う。

 居ても立っても居られなくて『清浄の杖』を引っ掴み、白いローブの裾をはためかせて馬車から飛び出した。

 護衛の騎士たちの慌てて引き止める声を無視してわたしも魔物のいる後方に駆け出した。



 ウィリアムが駆けつけたとき、翼を広げて羽ばたく巨躯は弓を受けながらも強く羽ばたくことでその攻撃を軌道を狂わせ自らへ至らせずにいた。

 聖騎士隊はミハイルの指揮の下、弓騎士と神官でありながら聖騎士の職につく"魔法騎士"を中心に布陣し空中を飛ぶ敵に遠距離から攻撃をしていた。


 ワイバーン、それは飛竜と呼ばれる強力な魔物。

 冒険者ならば上級者、騎士団ならば国軍を出動させて殲滅かせる相手だ。

 時に人里に降りれば住民は食い殺され町は蹂躙され甚大な被害をもたらす。

 聖騎士団も討伐に駆り出されたことはあるがそれは非常に稀。

 過去の事例だとタチの悪い冒険者がワイバーンの巣から卵を盗み怒り狂った両親が町を襲った。

 また大規模な山火事が起こり住処を追われた個体が新たに住み着いた場所が人里近くだったたの危険と判断し駆除、などだ。


 しかしこの聖教会のお膝元でワイバーンが出るなど想定外だった。

 ここには魔物の天敵の聖騎士団や神官や魔導士がいるのだから魔物は避けると思って油断していた。


「ミハイル殿、加勢します!」


「おおっ勇者猊下かたじけない! お守りするつもりがワイバーンに楽々かわされてしまいこの体たらくです。ではワイバーンにかわされぬよう機動力を削ぎたいので翼を狙っていただけますか?」


「了解した!」


「あー突っ込んでいくかやっぱり…」


 ウィリアムがさっそく剣に光魔法を纏わせ最前列に向かうのをフェルディナンドはやれやれと思いながら見送った。

 くっ付いては来たが戦力外なのは自分でよくわかっているので戦いの邪魔にならないよう数歩下がった。

 ロンバルディ王国側の責任者として自分は同行しているので状況の確認に努める。

 「本当はおれは馬車の中で大人しく待ってるべきなんだけどね」と頭では分かっているがしょうがないじゃないか、ウィルを一人で死地に飛び込ませたくなかったんだから、と誰にでもなく自分に言い訳をしていた。


「ん? あのワイバーン、首をあちこち向けてるな。なんか探してるのか?」


 こちらに襲い掛かるでもなくキョロキョロを視線をあちこちに向けているように見える。


「レイアロー!!」


 ウィリアムが魔法剣とは逆の左手から翼を狙って遠距離魔法を出したがそれを交わし、また見回している。

 …野生動物は攻撃されたら怒り反撃してくるものだがこのワイバーンは違うようだ。

 魔物だって反撃するだろうに。

 このワイバーンからは感情の起伏が見られない。



「フェル…くん、はぁっ、やっと追いついた…けど、ウィルはもう戦ってるんだね…!」


「あれっ、リンカちゃん馬車にいてよ、なんとかウィルや聖女様親衛隊がちゃちゃっとやっちゃうから」



 隣に置いて来たはずのリンカが息も絶え絶えに話しかけてきて驚いた。

 ウィリアムと自分でまえから話し合っていて、リンカにはなるべく負担をかけたくないから戦いから遠ざけようとしてさっきの行動をとったのに、本人から来てしまった。

 やれやれ「おれたちの心聖女知らず」だな、と息を必死に整える彼女を見ていたら周りが騒がしくなり「聖女様っ!」と誰かが叫んだ。

 前を向けば急降下してこちらにワイバーンが猛禽類のような足を開き迫って来ていた。

 とっさに彼女に覆いかぶさって二人一緒に地面に倒れ込んだ。

 ワイバーンが真上スレスレを飛びなんとか足に掴まれるのを阻止できた。

 しかしやつは再び上昇すると旋回し、またこちらに向かって来た。

 今度は聖騎士隊のアウレリア教の神官たちが風の魔法を放ちワイバーンの飛行を邪魔して回避することができた。


 しかし、これで分かった。

 あのワイバーンはリンカを狙っている。

 なぜ狙っているのか理由はわからないがやつを早く倒さないとリンカが危険だ。

 しかしワイバーンにはまともに攻撃を当てられていない。

 ウィリアムの魔法はかわされたし、弓騎士の矢は翼で撹乱され、魔法が当たっても効果は薄い。剣や槍は届きもしない。

 あと望みがあるとすれば神聖魔法、聖女であるリンカ自身による攻撃だ。しかし。

 「動き周り突進してくるこの状況ではとても当てられないし、術も唱えられない」


 それは今戦っている者は皆わかっていた。

 しかし、自分にできる対策が思いつかない。

 どうにか、倒す方法を探さないと。

 せめて動きを止めないと―


 考えを巡らせている間にもワイバーンは旋回して向きを定め三度目の急降下をしようとしていた。

 みんなに緊張が走る。

 腕を引き立ち上がらせたリンカは小さく体が震えていた。

 それでも術を唱え始めていて、自分はもっとしっかりし彼女を守らなければと身構えた。しかし。


 ワイバーンに黒い影が急接近し、それが縦方向に裂けた。

 避けたのはこちらに急降下を始めていたワイバーンだ。

 ワイバーンとリンカと自分の間に滑り込んだその黒い影、いや全身が黒い装いの黒髪の男は、刀身の黒い長剣を肩に担ぐと振り向いた。


「聖女様一行だな。俺を雇わないか?」


 それは魔王と同じ声色だった。


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