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87 城内の敵の捜索

「城の中を探すの? 地下じゃなくて?」

「探すのはこの城に潜り込んでいるであろう邪神信仰者、あるいは"ミコ様"とやらだ」

「あ、そうだった」



女神様の要望を聞いて地下神殿を探さなくてはいけない気になっていたけれど、わたしたちの当初の目的はそれだった。けれど……女神は瘴気の影響を受けていると言っていた。邪神信仰者の件と女神の件は関係しているのではないだろうか? そしてオーランド王国内の不穏な状態も。

それを魔王に伝えると頷かれた。同じことを考えていたらしい。



「邪神信仰者どもはこの城に潜り込み何かをしている。地下には神殿がありそこに祀られている女神と、繋がっている王女が瘴気にやられている。邪神信仰者の城内潜り込み、王城内の異変、女神と王女の瘴気汚染。まず間違いなくすべてに邪神信仰者たちが絡んでいるだろう。そして、邪神信仰者どもは各地の神殿を破壊して回ることに熱心だ。これが意味することは?」

「…ここの地下神殿を狙っているってこと?」

「俺はそう考えている」



邪神信仰をする者たちが各地の神殿を破壊し、そこにある地脈が瘴気で汚染されることが大地の死、魔王支配領域が広がることにつながっている。だから神殿を狙うのはありえそうだけれど今まで見た破壊跡は地上にあるものばかりだった。でも地下となるとーー



「地下で破壊行為なんてしたら地上にあるこの城や街は…」

「無事とは思えんな」



恐ろしい事態を想像して背筋が寒くなった。



「まだ起きてはいない。首謀者を捕らえれば未然に防げる」

「そう、だね。やられる前にその人達を止めればいいんだよね。早く見つけ出さないと」

「ああ、すぐ取り掛かるとしよう。まずはリンカ、地下に瘴気があるか探ってくれ。神殿なり地脈なりが瘴気の影響があるなら位置がわかる」

「うん、やってみる」



目を閉じて意識を下に、地下に向けて深く深く降ろしていく。かなり下まで感知をしていくとうっすら黒い影、瘴気に当たった。この深さなら地脈のあたりだろう。あの女神の言い方だと神殿は地脈から近そうだけれどそれはわからなかった。通路とか神殿がありそうな空間があっても瘴気がなければわたしは感知できないからだ。それは仕方ないからどうしようもない。けれどいつか視たラスタ王国や神殿跡での地脈よりもずっと瘴気は少なく胸を撫で下ろした。手遅れではない、まだ完全に汚染されていない今ならわたしの力でも浄化しきれるはずだ。

そのことを伝えると魔王はうなずき「よくやった」とねぎらいの言葉をくれた。



「でも辿り着き方はわからなかったよ。ごめん…」

「それは気にするな。地脈があり瘴気に汚染されかかっているなら、女神の言うようにこの下に神殿があるのだろう」

「でもかなり深いと思うけど、入り口から階段で行くとしたら何階分降りることになるんだろう?」



何キロとかの単位でも足りないのではないかというほど深そうだ。階段だったら体力が絶対に足りない。



「ふっ、さすがに階段はないと思うぞ、行き方なり入り口なりが特殊なのだろう。真上の城に住んでいた王子が存在さえ知らなかったのだからな。長らくこの城に潜り込んでいるであろう連中が、地下神殿の破壊ができていないのは案外入り口がわからないからかもしれん。だとしたらとんだマヌケだが」



わたしの階段嫌だ発言に少し笑った魔王は相手も行き詰まっている説を唱えた。

城に潜り込んでみたものの、入り口が見つけられなくて何年も居座らざるを得なくなってるなら確かにちょっとマヌケだ。



「さあ、地下神殿への行き方はあの王子にまかせて俺たちは首謀者探しだ」

「うん、どうやって探すつもり? 地道に聞き込み…は、しないか」

「そんな面倒なことはしない。こいつを使う」



魔王が手のひらに転移させたのは見覚えのある魔法陣。鉱山から持ち帰った箱のなかに描かれていた転移の魔法陣のある布。この布は例の箱の底に貼られていたものだそうで、これに魔法陣が描かれていたので布だけにして持ち運びやすくしたらしい。たしかに箱だとかさばる。



「これに魔力をわずかに流しその転移先を探る。そうすれば目当ての相手の顔をすぐに拝める」



これなら確かに早い。一気に事態が進みそうでなんだか緊張してきた。



「特定できたら転移で直接乗り込みたかったが、先程見て回った様子だと王族の居住区画だけあり強い魔法無効の結界が貼られている。この仮初の体の魔力では気付かれず転移の術を使用するのは難儀でな。敵の全容がわからない状況で騒ぎになるのはまだ時期尚早… おい、リンカどうした?」



魔法無効の結界があっても魔法使えるのか? 気付かれる気付かれない以前に。

十分すごいのだけれど本人としては普通のことのようで驚きを通り越して呆れてしまう。こちらは浄化の神聖魔法を初めて使うだけでずいぶん苦労したというのに、魔法に関して最強というか天才というか、なんだか遠い目になってしまったところ魔王に不思議がられた。



「世の中不公平だなって思っただけ。ええとつまりどうするの?」

「なんだかわからんが…つまりは対象の位置を特定したら直接足で出向き魔法陣を持つ片割れをこの目で確認する」

「まずは魔法陣を持つ人物の特定だね」

「ああ、でははじめるとしよう」



魔王が微弱な魔力を手のひらの転移の魔法陣へと流し、探知を開始した。



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