対面
そんなことがあって健太郎は、ヘルズゲートに来ていた。そんなことを知らないドルチェは、驚き、侵入者と間違えたらしい。
(まだ、ドルチェには転生のことを話すのはやめよう)
そう思っていると、ドルチェが警戒した目で健太郎を睨んだまま、健太郎を連れてきた。
「よ!健太郎!よく眠れたか?」
「おはよう、飛翔…いや、ノーレッジ様」
健太郎は、少し馬鹿にしたように言ってきた。見た感じ、よく眠れていなそうだ。目の下にクマができていた。
「昨日はよく眠れたよ」
「嘘をつくな!クマができてるぞ!」
俺は、鏡に健太郎の姿を写しながら言った。
「ほんとだ!なら、もうちょっと寝るか」
健太郎は、そう言いながら俺の布団の中に入ろうとする。俺は、必死に抵抗した。
「お前は!ここに!雇って!あげているんだよ!働け!じゃないと!追い出すぞ!」
俺がそう言うと、健太郎は引っ張っていた布団を離した。俺は倒れそうになったが、ギリギリ耐えれた。すぐそばでは、ドルチェが驚いた顔をしていた。何考えているんですかと言いそうな顔だ。
「と言うわけで、こいつを使用人として、こき使ってくれ」
「わ、わかり、ま、した。でも、何で勇者何ですか?」
「俺が気に入ったからだ。それ以外に理由はいるか?」
「はぁ…ノーレッジ様の、自分勝手な性格は変わらないんですね。その性格は直したほうがいいですよ」
ドルチェは、そう言うと健太郎を連れて部屋から出て行った。早く歩けと言うドルチェの声が聞こえる。
(暇だ…寝るか)
そう思い、目を閉じるといつの間にか眠っていた。
「…………ろ」
(誰だよ。うるさいなぁ)
「……きろ!起きろ!いつまで寝ているんだ!」
「すみません!すぐ起きます!」
声に威圧感があったため、俺はすぐに起きた。目の前に広がっていたのは、真っ暗な空間だった。
「あのぉ。ここはどこなんですか?」
俺は、声の主に聞いた。暗くて姿は見えないが。
「すまんすまん。今から説明する。ここは、貴様の夢の中だ。我が貴様をここへ呼び出した」
「なら、お前は誰だよ。あと、明るくしろ。周りが見えない」
「灯りは付けなくても良い。魔力の流れを制御することで暗闇の中でもいつものように見ることができる」
俺は、その説明を聞いて目に魔力を集めた。すると、徐々に周りの景色が見えてきた。やがて、はっきり見えるようになった頃、目の前にいる人物に気づいた。魔王の俺と同じ姿だ。俺は、日本にいた頃の姿になっていた。
「あんたは誰だよ」
「よくぞ聞いてくれた!我が名は、ノーレッジ・ドリズルだ。貴様が魔王になる前の魔王だ」
「となると、あんたがドルチェたちを呼び出していたのか?」
「然り」
魔王は、俺の質問に短く答えた。
「さて、話しは戻るが、俺を呼び出した理由を聞こうじゃないか!」
「我が貴様に伝えなければならないことがあるからだ。一つは、あいつらを呼び出していた理由。もう一つは、貴様が我になった理由だ」
「早く言え。俺は暇じゃねぇんだよ」
「…我があいつらを呼び出した理由。それは」
「それは?」
「我が死にそうであったがために、我の体に『魂移植』を発動させることをあいつらに伝えないとダメな気がしたからだ。あいつらに伝える前に発動させたがな」
「俺は、魂移植で魔王になったってことだな?」
「貴様は勘が鋭いな。その通りだ。貴様にはすまないことをした。許してくれ」
魔王が土下座して謝ってきた。俺は困る。
「許しますから、俺に魔法の使い方や、魔力制御によって出来ることを教えてください」
「そんなことで許してくれるのか?」
「もちろんだ」
「ありがとう。さすが、我を受け継いだものだ。あと、あいつらにすまなかったと伝えてくれ」
「自分でいけないのか?」
「貴様の体を乗っ取ればできるが、我の魂と貴様の体がもたない。だから無理だ」
「なら、俺から伝えておく。その代わり、約束忘れんなよ?俺の友」
「もちろんだ。我を継ぎしもの…いや、我が友よ」
俺と魔王が友情の握手をすると同時に、記憶が現実に戻されそうになる。
「あと、俺が知らないことも追加で教えてくれよ!」
「よかろう。我が教えてやる」
その言葉を最後に、記憶が現実に戻された。