友との再開
俺が声色を変えてから、二人の目は真剣なものになった。
「驚かずに聞いてくれ。俺は、日本から転生してきた」
「ちょっと待ってください。ニホンというところからきたということは、今までの魔王様とは全く違う人なんですか?!」
「そうだ。城のみんなには内緒だぞ」
「わかりました。通りで急に記憶がなくなったはずだ…」
スカーレットの声はだんだん小さくなっていき、俺には聞こえなかった。
「今、なんて言った?」
「いえ、なんでもないです!それよりも、話しを続けてください」
「そうだな。で、その日本では、一人の高校生として生活していた。友達と出かけている時に、俺は殺されたんだ。通り魔によって」
「まさか、お前!」
健太郎は、理解したようだ。スカーレットはピンときていないらしい。当たり前だ。
「そのまさかだよ、健太郎。俺は、杉島飛翔だ」
健太郎は驚いた顔をしたが、すぐに泣きそうな顔をした。
「健太郎…また会えたな…」
「あぁ、そうだな。最悪な形だったけど」
俺たちは、抱き合っていた。
「えっとぉ…どーゆーことですか?魔王様」
スカーレットは、まだピンときていないらしい。鈍感なのだろうか。
「つまり、俺の前世の友達がコイツだったんだよ」
「なるほど!だから健太郎を傷つけないようにと言ったんですね!」
ようやくわかったらしい。それより、空気を読んでほしい。
(もっと感動のシーンを味わわせろよ!)
俺がそんなふうに思ってるなど思っていないスカーレットは、呑気に健太郎としゃべっていた。
「てか、なんでお前は勇者になってんの?」
「それは…」
言いにくそうな顔をしていた。
「言いたくないなら言わなくても良いぞ?」
「飛翔は怒ってない?」
「はぁ?なんでおこんなきゃいけねーんだよ」
「だって、飛翔がなりたがっていた勇者に僕がなっちゃったから…」
「そんなことで怒るほど俺は短気じゃない。それに、今の生活は気に入っているからな」
「まぁ、飛翔が怒ってないなら言うね。それは突然おきたんだ」
健太郎の話は長かった。要約すると、俺が死んで一ヶ月後、一人で俺のお墓に行っていたときに、急に足元が光り、気付いたらこっちの世界にいたということらしい。
「勇者になるの簡単じゃねーか!」
「僕は、たまたま勇者の称号をもらっただけだよ」
「全く…羨ましいぜ」
俺たちの話は、後三時間ほど続いた。スカーレットは、いつの間にか寝ていた。
「誰ですか!貴方は!」
翌朝、ヘルズゲート内にドルチェの声が響いていた。そう、健太郎は、ヘルズゲートに泊まっていったのだ。もちろん空き部屋で。なのに何故見つかったのだろうか。俺の部屋のドアが思いっきり開かれた。
「城内に侵入者を発見しました。すぐに排除しましょうか?」
「いや、あいつは俺の客だ」
「そうなんですか。なら無礼は許されませんね。では、コレで失礼します」
「あ!ドルチェ!けんた…客を連れてきてくれないか?」
「わかりました。でも、後で説明してくださいね」
「わ、わかった」
俺が了承すると安心したように、ドルチェが部屋から出ていった。
ーー決戦の日の夜
「おい、健太郎。帰んなくて良いのか?」
俺は、健太郎の身を考えて言った。
「いや、俺はもう人間の国に帰れないよ。魔王に負けたんだから」
「そうか…なら、俺の城に来るか?」
「え!いいの?!なら、お言葉に甘えて〜」
健太郎は、嬉しそうな顔をしてる。
「その代わり、バイトみたいな事させても良いか?」
「たとえば?」
「そうだな…料理とか掃除とか」
「なるほどぉ。僕、家事は得意だから問題ないよ」
晴れ晴れとした顔で健太郎が答えた。イケメンで性格もよく、成績が良い。そのうえ、家事もできる。人間の鑑とは、こういう人のことを言うのか。俺は嫉妬してしまった。唯一の友達に。
「健太郎は羨ましいな〜」
「なんで?」
「人間の鑑だからだよ」
「どゆこと?」
「わかんなくても良いの!」
そんな会話をしながらヘルズゲートに帰る俺たちであった。