入国
「魔王様、なぜ私を選んだのでしょうか?」
「…」
俺は、この質問を何回され、何回無視したのだろうか。もう覚えてない。なんか話そうぜと言ったところ、この質問をされた。そろそろ無視するのはやめようか。
「…はぁ。わかった、教えてやる。笑ったりがっかりしたりすんなよ?」
「魔王様の発言に笑うことやがっかりすることはしません」
「お前は消去法で選んだんだよ」
「なぜですか?」
「まず、女性陣にはなるべく怪我をしてほしくなかった。この時点でお前と勇儀しか残っていない。あいつと行くと、人間の国の酒を飲みに行きそうだからだ。あいつ鬼だからな。あと、実力的に、あいつになら魔王代理を任せれると思ったからな。そういう訳でお前を選んだ。わかったか?」
そう言いながら隣を見ると、ディアブロは泣いていた。
「魔王様…漢ですね」
「な、泣くのもダメ!…え?あれって、人間の国じゃね?」
ヘルズゲートを出発して二日目にして、ようやく人間の国の大門が見えた。
「そのようですね」
「やったぁ、やっと休める…」
「そうですね。この辺で休憩して、明日にでも入国しますか」
「いや、軽く休んで今から入国する。早めに行って、人間の国を楽しもうぜ!」
「どうやって?」
「まぁ、見てなって」
『変幻』
俺がそれを唱えた瞬間、俺とディアブロの姿は人間に変化した。ちなみに、変幻は、無属性魔法に分類されていた。魔法とは、なんて便利なものなのだろう。俺たちは、この姿のまま一時間ほど休憩した。俺は、その間に昼寝をした。
気づいたら、あの暗い空間に来ていた。体も転生前のものになっていた。
「おい、貴様。あいつらにちゃんと言ってないだろ!」
「え?なにを?」
「我があいつらを呼び出した理由だよ!まさか、忘れ」
「いいえ!バッチリ覚えていますよ!ただ、伝えるタイミングがなかっただけです!」
俺は、土下座をしながら魔王の言葉を遮って大声で言った。
「貴様を信じてやる。次は首がなくなると思え!…時間のようだ。では、さらば」
俺は土下座をした体勢のまま、この空間から現実に戻されていった。
「魔王様!一時間経ちましたよ!って、なんで土下座なんかしてるんですか?」
「夢で色々あってな…」
「何でもいいですが、早く人間の国に行きましょう」
「そうだな。にしても、長い道のりだったな。帰りがめんどくさいな」
「ほら、早く行きましょう!」
一時間ほど休んだ俺は、まだ疲れが残っていた。それに比べて、ディアブロの目はキラキラしている。よほど楽しみなのだろう。
(今日は旅館の一室でも借りてゆっくりするか)
そう思いながら入国する俺たちであった。