死と新たな出会い
「なんだこりゃぁぁぁぁ!」
目が覚めると、俺は豪華な部屋にいた。目の前にいる四人と横にいる一人が驚いたようにこっちを見ている。
一時間前
俺の名は杉島飛翔。
どこにでも居るような普通の高校生だ。
そんな俺の特徴といえば、異世界転生への憧れが強すぎることだろう。
俺は、勇者に転生できるように一日三善をモットーに生活している。
「異世界行きて〜!」
家に帰って毎日のようにこの言葉を言う。今日をあわせて二年と九ヶ月もたつ。
そんな俺は、明日転生するなんて微塵にも思っていなかった。
次の日、俺は唯一の友達である村岡健太郎と一緒に新刊の漫画を買いに行っていた。
今日は思ったよりもレジが混んでいた。
それにしても、健太郎は顔立ちが良く、性格が良い。さらに成績が良い。羨ましい。それに比べて俺は…
「はぁ」
「おい飛翔〜。ため息ついてると良いことないぞ〜」
「お前のせいだよ」
俺は、健太郎に聞こえないように呟いた。
「俺が何したって言うんだよ」
…どうやら聞こえていたらしい。と、こんな会話をしているうちにレジの順番が回ってきた。
慣れた手つきでバーコードをかざしていく。
そして、慣れた手つきでお金を払い、慣れた手つきでレジ袋に漫画を入れている。
そして、何事もなくゴミ拾いをしながら家に帰っていた。
もちろん勇者に転生するための善行だ。
そして事件は帰り道に起こった。
「キャー!」
どこからか悲鳴が聞こえてきた。すると、突然前から男が走ってきた。
男の手元がキラリと光った。
(まさか!)
「危ない!」
俺は、無意識のうちに健太郎をおしていた。
熱い痛い熱い痛い熱いイタイアツイイタイアツイ!
脇腹では痛いのと熱いのが繰り返している。
俺の予想通り、通り魔だったが、刺されるのは予想外だった。
男は走って逃げていった。健太郎が泣きながら近寄ってきた。
「飛翔!死ぬなよ!死ぬなよ!」
俺は、健太郎を見て、ほっとしていた。
(よかった。生きていたんだ)
そして、俺は最後の気力を使って言葉を発した。
「勇者に…転生…でき…る…かな…」
「ああ。お前ならなれるよ」
健太郎が泣きながら言ってくれたその言葉を最後に、意識が途切れた。
「………様…ッジ様!」
何者かが俺の体を揺すっている。
「もう少し寝させてくれ」
「ダメです!」
聞き覚えのない声が返ってきた。