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【完結済み】チートもハーレムも大嫌いだ。  作者: 多中とか
本章 異世界にて、惑う
5/65

第3話 そして僕は、サバイバルをしなくて済む。

1/30分はこれまで。


 その後は、ルートビアでべとべとになった髪毛を洗いに行きたいと思った。そうしたら、多肉植物が僕の前を行き、川のある所へ導いてくれた。なぜだろうか。こちらの意志を相手はくみ取っている。あ、でも、僕が頭をこすり、衣類でごしごしと汚れをふき取ろうという動作をしていたから?野生の動物が川を探している様子をこの植物は知っていて、それと僕の動作がにていたから?

 


 それでも、意志を読めないとしても、頭良すぎるなあ。そもそも植物が歩いて移動したり、生物を丸呑みにするのも異常だなあ。このジャングルは生態系が崩壊しているんじゃないかな。ただ、こいつのおかげで頻繁に刺されてきた蚊や虻の被害から逃れられた。ほとんどそのツボのような消化器官とハエトリソウの餌食となっているようだった。

 


 そんなことを考えながら、僕は川に手を入れて、涼しさを堪能していた。得体のしれない森の川で、水を浴びるのは、日本の衛生観念をもった僕にするとすこしためらうものがあったが、べたべたが嫌だったので、あきらめて水を掛ける。手に就いた水滴をなめてみる。泥や植物の死骸などで淀んだ臭みもない、純粋な水だった。水道水より苦みがない。



 僕は服を脱ぎ、思い切り水をかぶった。ついでに、のどの渇きを潤す。

 


 一通り、水と戯れた後、陸へ上がり、水滴を払って、服を着た。



 ぼんやり川を見ると、川を下れば街に行ける可能性がある、という迷信? 誰かの経験則を思い出す。僕はそうしようかな、と何気なく考えていると、多肉植物のツタが、僕の腕をつかみ、体を左右にぶるぶる振った。なにやら、遠くに行ってほしくなさげな雰囲気だった。



「わかったよ。マッチポンプな気もしないけど、確かに一度は動物の攻撃から助けてくれたし、お前の願いを聞いてやる。川を下って森を出ようとはしないさ」

 


 願いを叶えるなんて、ところてんじゃないけどな。



 こいつは森から出られないのかな。僕が森から出ることを嫌がるのは、さびしがっているからとか? なんて、意志疎通ができてもさすがに、感情がある、かどうかはわからないか。



 僕は最後に川の水を一杯、手に掬って飲む。それなりに冷たくて、透き通っていておいしい。

 川は光を反射させ、僕の顔をうっすらと映し出していた。



 色が黒く、彫が、前世より少し深い顔立ち。髪の色はなんとくすんだ銀色。金髪ほどは目立たないが、黒髪より明らかに色素が薄い。長さは、もともと伸びていた方でぼさぼさでもあまり気にせず、耳が隠れる程度の長さがあった。それが今も変わらず、女性の髪形でいえばベリイショートというのだろうか。印象としては前世と変わりはせず、中性的。もしかしたら、顎のラインや目鼻の距離が多少ずれて、男性らしさが減ったのかもしれない……いや、もともとか。自分でいうのは嫌なのだが、少し童顔で20の男の顔っぽくないと前々から言われてはいた。それが、性転換を果たした時に違和感ない顔立ちとして成立するなんて……。



 ため息をつくと、川を後にすると決めた。



この後、ジャングルでどうしようか、と悩んでいると、多肉植物が助けてくれるようなそぶりをみせたので、任せてみた。食べるものも、宿も、服も、何もわからない。わかる人(植物)がいるなら頼りたい。



 すると、それらは、僕をツタで担ぎあげ、まるで象に乗るインド人の商人が砂漠を闊歩するかのように、僕はツタの群れに乗ってジャングルを悠々と移動していた。一本一本細いツタが群がって、太くなり、意志を持った大型の生物のように、根を脚代わりにしてうねうね歩みを勧めていく。どこか蛇のような下半身の根の動きが、上にいる僕に振動をほとんど伝えず、快適な乗り心地を生み出していた。快適さでいえば、害獣害虫から身を守ってくれるのもありがたい。飛んでくる羽虫や、黄色の危険色が恐ろしい蜂や、鱗粉を飛ばすような大きな蛾、木々から勇んで飛び降りてくる芋虫ら、足元を見れば、見るからに毒をもってそうな黄色がかった鱗を持ち団扇のような広い首を持つコブラ、大きな毒針を持ったサソリ、大型のジャガー、また毛むくじゃらの大型のサルまでいる。それらをこの凶悪な植物の案内人は、ある程度小さいものはツタで捕まえて、ツボのような消化管で丸のみにし、獣などすばしっこいものは、ツルの鞭で殴って、追っ払っていた。



僕は現実を信じられなかった。もう考えるのを辞めようと思っていた。死んだというのは嘘で、ただの夢、長い白昼夢ではないかと。僕はなぜ女体化しているのか。別に女性になることが心底嫌だとか、そういうわけではない。ただ、自分がいつのまにか、自分でなくなっていくような、そんな不安が心底嫌なのだ。



 僕はうつらうつらしていた。不安は眠気を飛ばしてくれなかった。僕はいつもどこかで自分自身に無関心なところがある。もちろん、すべてがどうだっていいと思っているわけではない。けれど、基本的な欲求を前にすると不安を後回しにする時がある。



 車に揺られて、眠くなるみたいに眠い。もしかしたらところてんの間から続く夢の中だと思うのに、眠くなるとはどういうことか。生い茂った高木層の隙間から差し込む陽気がより穏やかな心地にさせる。またツタに触れていると、この植物は僕に何かよくわからない力と、安心感を送ってくれるのだ。触れた部分からポカポカして、もっと眠くなり、穏やかな気分になっていた。



 次第に、差し込む陽気が少なくなり、気づけば森の奥に運ばれていた。

周囲は赤や紫の毒毒々しい花がまばらに生え、地面を覆う草っぱらは薄くなり、地表が見える。その地表も獣が寄り付かないのか足跡の形跡はなく、所によってシダ植物が誰によっても踏み散らされることなく、生き生きと群生していた。



 そして、僕が運ばれていく方向には、目を凝らしてみると、他とは異なる雰囲気を持った木々の集合体が息をひそめるように佇んでいた。



 そこはガジュマルのような木々が集中して生えており、傍から見たら、大木が縦横無尽に生えた壁のような存在感を帯びており、古来祀られる神木のような生命感を帯びている。



 僕は、そこにおろされた。多肉植物を振り返ると、ツルがあちらを向いていた。その存在感のある壁のほうに行け、と指示されているようだった。



 こっちにいけば、寝る場所とか、食べ物とか、頼れる人がいるのかな?



 そんな思いを込めてこれまでの案内人に視線を送るのだけど、彼?はただユラユラと体を揺らしつつツルを進行方向に向けるだけだった。まるで一方通行の交通標識のように、道端の景観になじむ。ジャングルに馴染むは多肉植物。周囲に生えた赤いハイビスカスのような花々と争うように、毒々しいまだら模様を持つその立ち姿。僕はどこかで気持ち悪いと評しながら、殺されるかと思った過去を流してしまうほどの安心感もそれから感じ取っている。さぁ、頼れる指導者に従おうか。



 僕は、未開の地に踏み込む探検者の気持ちを夢想した。汚されたことのない処女雪を踏みしめる高揚感と、何かに対しての罪悪感。僕は誰よりも先に、初めてのことに足を踏み入れる。誰もやってないことをやるなんて言うことは正直怖かった。ここは既に日本ではないのかもしれない。でも、ぼくはまだ自分が死んでどこに生まれ変わったなんて知らなかった。でもジャングルにいる。見たこともない土地。日本にいたころの僕の常識では誰かがやっていることを真似すればそれが正しかったのだ。でもそれは誰かの後ろに、意思なく追従する人形のようだった。しかし、今この高揚感はどうだろう。この戸惑いはどうだ。おもわず僕を導いてくれた多肉植物を振り返るものの、返事はない。当然だ。物言わぬそれは、僕に安心感を与えるが、僕を操作する先輩とかバイト先の上司ではないのだ。



 僕はためらないがら、足に力を入れた。



 改めて一歩一歩自分の脚で歩き出す。指を、うねった細木が絡みついている大木に掛けた。

 すると、その、神聖で巨大な大木は、幻だったように消えて、僕の前には無数のツルがすだれ状に垂れるカーテンがあるだけだった。



「……」



 僕は驚きで声も出ず、でも前に進むという行為も止めることにはいかず、心ここにあらずというような不思議な感覚をもって、そのカーテンを潜った。

ジャングルの中、ツタで仕切られた向こうは、別空間だった。



  空は開け、ひとつの村が広がっていた。中央に巨木が、天を衝くように立っていて、その周囲には畑が放射状に整列しており、また管理小屋のような木造設備が点々としていた。僕は思わず首をかしげていた。外から見たツタのカーテンの中身よりも、かなり広い空間がここには存在していた。おかしな遠近感の画像を見たような気持ち悪さを感じた。



 そもそも、なんでぼくはここに導かれたんだろう。振り向いても、あの多肉植物はもうついてくることはない。この外と内の境界は、視界では見通せない何かの力が存在しているような気がする。その何かが決定的に、空間を隔てていた。



 ここは閉ざされた空間だ。そんな直感がある。



 僕は迷いを振り切って、畑の沿いを歩き始めた。背の高い植物が生えている。収穫の時期が終わったのか、実のようなものは特になく、葉がしおれているものが多かった。

 この植物は見たことがある。とうもろこしだ。茎が太く丸みを帯びていてその節から細長い葉っぱが一枚ずつ生えている。実がついていたらひげがついているのだろう。



 とうもろこし系統の畑は収穫シーズンが終わったのか、畑は緑も枯れ、土と落ち葉の茶色、野生の動物に食いあさられて収穫し損ねた野菜の残骸が放ってあり、鮮やかな色合いはしていなかった。一方で葉が広げた掌のように五枚に別れた形をした葉を茂らせる畑もある。僕はその名前を知らなかったけれど、前世の都会暮らしでは触れてこなかった広々とした農作物の様子に、生命力のようなものを感じる。



 僕はじっと植物の様子を見ていたが、ふと管理小屋の扉に目をやると、その陰から誰かがこちらを見ているような気がした。しかし一瞬で気配は消えてしまう。



 僕はひたすら、中央にそびえる巨木に向けて歩き続けた。そのついでに管理小屋に目を向ければどなたかの気配を感じては、振り向き、でもそこには姿が見えない、というようなことを幾度も繰り返した。



 僕はいぶかしがった。外界から閉ざされたこんな不可思議な空間にすむ人はいったいどんな人たちなのだろうか。外界から閉ざされた村ならば、よそ者が来れば警戒して誰か出てきそうなものなのに、誰も出てこないし、人見知りをするようなことをして逃げているのは、どういうことなのだろうか。僕のいた小学校でなら、不審者が校舎に入っただけで全校集会が開かれたほどだ。日本は他者に排他的になっていた。海外のほうが、自分が悪者ではないですよという意思表示をするために、公共の場でもたいていの人が挨拶をする。僕の故郷は、都会に行けば行くほど挨拶をしない。アパートでも会釈がせいぜいだ。そんなことを思い出していた。



「一向に出てくる気配がないな」



 気づけば、大木の麓で来ていた。近づけば近づくほどに、神々しさを感じる。この大木は、おそらく僕が十人いて手を広げつないだとしても、囲い切れないほどの直径を持っている。この大きさは畏怖すべきものであり、頼もしいものでもあった。まるで実家のような安心感があったのだ。

なぜだろう。僕はここに来たことはないはずなのに。



 この大木は、この閉ざされた空間に入る前、ジャングルで発見した、細木の集合体の巨木そのものであった。あの時は触れたら解けた幻覚であったが、それはこの内側にある大木を投影していたのではないだろうか。じっくりと大木を見つめてみると、木の表面は波立って、うねりを感じる。一本一本それなりの木々が密集して、大きな木を作っていた。しかもその密度が途轍もなかった。触れられるほど近くに来てようやく複数の木々が結合していると判明するほど。幾年月がかかってここまでの緻密な絡まりを構成し得たのだろうか。



 「君はどこの生まれかな」



 「え?」



 上から声が聞こえた。

 初めてこの世界に来て聞いた肉声。しわがれた男の声だった。



「どうやってこの村に入ってきたのかね」



「ええ……っと、優しい植物が道案内してくれた……といいますか」



「ほう、案内人がいたのか。ではどこからきたのかい」



 声は聞こえるが、姿は見せない。大木のどこかから響く声。



「その、姿を見せてもらってもいいですか?」



 僕がそうお願いした瞬間、ヤジが無数に飛んだ。



 よそものが、とか、なまいきだ、とか、無礼だぞ。という声だった。



「こら、よさんか。よそ者ではあるが同胞だろうに」

 と、しわがれた声がした瞬間、頭上十メートルくらいで、大木のうろに見える部分に穴が開き、男が身を乗り出して、太い枝に乗り移った。彼は老人だった。肌がこんがり焼けた色合いをしている。腕には蛇のような木が巻き付いていた。



 人が木の中から出てきた!



 そして彼は、森の川辺の、水面に映った僕と、似た雰囲気の風貌だった。知らない人に、親子と紹介したら信じてしまうのではないかと思うほどの類似性。彼を顔をじっと見つめ、僕が生まれ変わった女の子はこの人の親類として生まれてくるはずだったのでは、と少々不安になった。



 異なるのは衣服。僕がぼろ布で半袖短パンなのに対して、彼は、ゆったりとした甚平のような衣類を着ていた。両肩に留め具が付けられており、腰はひもで締められている。袖が肩口にあり、袖口はたっぷりとした布が存在感を出していて、裾はひざ丈で涼しげだった。

改めて見てみれば、今の僕と似ており、僕より白髪に近い銀髪をもった老人だ。ただ、とても足腰が丈夫そうであった。その雰囲気には、わがままな年より特有の傲慢さも、知識をひけらかすようなスノッブもにじみ出てはいない。少なくとも僕はそういう風に見えたし、彼は僕を騙せる程度には人の良さを前面に押し出す技量にたけている。そんな第一印象だった。



「高いところから失礼するよ。まだ我々は君を信用しきれていないんだ。申し訳ないが、ここから君の素性を確かめさせてもらう。君は何者かね」



「は、はあ。そうですね、よくわからないのですが、とりあえず自己紹介します……。」



 なんだか雰囲気にのまれて、自分のことを言わなければならない気がしていた。あのおじいさんは穏やかそうだけれど、周りの、ヤジを飛ばす存在らは陰から例えば拳銃を発砲してくるのではないか、というような、脅威を僕に与えていた。もちろん拳銃がここにあるのかどうかは置いておいて。



 自然と僕は両手を挙げて、降参する。



「ええ、と、僕は糸田祐樹。交通事故で死んだと思ったら、急にこのジャングルにいて、動物に襲われたところを大きな植物に助けてもらった。そうしてここまで送ってもらったんだ」



 僕にできる最大の自己紹介だった。大学生だとか、どこの生まれとか、この人たちに言っても仕方がないだろう。多分木登りする爺さんがデフォで出てくる村で、大学卒業見込みの資格がどこまで通用するかもわからない。もしかするとここで働くときに基本給が一万くらい上乗せされて昇進に響くかもしれないけれど、僕はいまここで不用意なことを言って攻撃されてしまうことの方が怖かった。学歴マウントは良くない。



 「今……死んだ、といったかね」



 あ、やっべ、卒業見込みじゃなくて、最終学歴高卒じゃん。って言う訂正は置いておいて。

 おじいさんは、何かを味わうかのような、ゆったりとした口の動きで、言葉を継いだ。それは質問ではあったが、何かを確信したような、確認の響きだった。



「え、と。はい。」



「それは具体的にどういう意味かな」



「ええと、そのままの意味で、車に引かれて命を落としたと思うんですが」



 思うんですが、僕にも真相はわかりません。



「そうか」



おじいさんは、小刻みにうなずいた。



「それで、ジャングル? 死んだ理由は交通事故……、そうかお前は人間の社会で生きてきたのだな」



「えと、そうですね。ここは人間の村じゃないんですか」



「人間などここにはおらんよ。ここは、人とは異なった種族の村だ。人間を基準にすれば人型といえるがな」



 ええ……。もしかして、おじいさんと僕の身体が本当に親類ならば、僕は人間以外に生まれ変わったんじゃ……。



 そんな懸念を抱き、僕が放心していると、おじいさんはこういう。



「そうか、大きな植物にここまで、送ってもらったか。運がよかったのだな」



「……はい、ジャングルでは、一人で生きられなかったと思うので、恵まれていました」



「そうか……。話を少し戻すが、さっきの話ではこの森に急にいたといったな。それはどういった風に死んで、どのように今ここにいるのかな」



「え、と、死んだときは森じゃないところにいて、死んだと思って、目覚めたら森にいた、って感じです」



 そういったら、なにやらざわざわとした。ヤジじゃない声がくぐもって響いている。



「お前は、生えてきた……生まれ変わったのだな」



「多分そうです」

 ところてんも転生とか言ってたし。多分ね。



 生えてきたっていうのは、生まれ変わったことを指すここの方言かな。



「ですから、身寄りがないといいますか、今日だけでいいので、こちらの村に滞在させていただけませんか? 最寄りの人里など教えていただければ、明日にでもすぐに出ていくので」



 こういう言い訳はなんなく出てきた。村を歩きながら、少し考えていた。さすがに、人見知りの多い村ならば、僕は多分に警戒されている。下手に出て、助けを乞う以外に、僕は安全に滞在することも、生きて帰ることも出来ないかもしれない。そもそもここが隠れ里のような所だったら、偶然見つけた僕を生きて返さないのではないかと心配した。



 だが、まあそこまで過激ならばすぐに襲ってくるだろう。過激な村は旅行者を攻撃する場合がある。世界一周のマゼランが立ち寄った島国みたいに。それに比べれば安全なのか。



 僕は現実感が薄れて、白昼夢を見ている気持ちだった。老人の質問に答えながら、思考はあらぬ方向に飛び、現状に対して冷静でいることは箸で小豆を摘まむように神経を使う作業だった。僕は落ち着いていなかった。一種呆然と、自分の知っている世界の急変に打ちのめされていたのだ。ただ、目先の安全を確保しようと口先だけが回っている状態。



 目の前には大きな木に乗った一人の老人と、気配だけで十数人はいる村人。しかも何か神秘的な雰囲気がある村だ。僕はいったいどこまで来てしまったのか、自分が今いる状況がなかなかに飲み込めなかった。ただ、多数の目にさらされながら身の安全を確保するためには、相手の機嫌を損ねてはいけないとは思っていたし、相手の様子を観察しながら刺激しないように行動するつもりだった。しかしながら、会話の流れを全くつかめていなかった。だって、次におじいさんが言った言葉が急だったから。



 おじいさんらは息をのんだように、静まり返ったのが一瞬、その後、ざわつきが広がり、しかしおじいさんの鋭い目くばせがあり、静まり返った。



 そこで彼は大声で宣言した。

「おい、皆よ、このものを私の孫として、この村に迎え入れる!」



 あれ、孫? 一日滞在じゃなくて永住コースじゃね?



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