第13話 ☆
あと1話投稿します。
僕はいつものバイト帰りの道を歩く。
郵便物の仕分け。ベルトコンベアでの受け取り。棚積み。つまり、肉体労働。
分かりやすくていい。話さなくていい。
このバイトを始めたときに考えていたのはそんなところだ。
目の前に流れてきた段ボールを持ち上げ、番号別に所定の位置にもっていく。初めは持ち上げるのも、番号を把握するのも手間取っていたけれど、慣れてくると半ば無心で作業するだけだった。
バイトは6時間ほどで終わる。仕分けのバイトとしては短い方だが、単純労働をコンスタントにやるなら、長いのをどっと詰め込むのは続かないだろうという判断だ。
機械のように単純な動作しかしなくなったことで凝り固まった筋肉をほぐしながら、僕はアルバイト先の建物から出てきた。家まで10分ほど散歩である。
夕方だった。夏の空にはまだ赤みがさす時刻ではないものの、昼間の熱気から比べたら落ち着いた外気に僕は安心する。
とぼとぼ帰る僕は何とはなしに、コンビニによる。アイスでも買うかな、と思ったのだろう。冷気が溜まる奥まったゾーンに行く。
「あ」
「ども」
大学のなにかの講義が一緒の人だと思う。僕は少し記憶を探りながら挨拶する。講義で一緒とはいえ、今期の授業が終われば会わなくなるだろうな、とか思うから、それほど熱意をもって交流しようとも別段思っていなかった。
お互い話すこともなく、会釈をかろうじてする程度の間柄。お目当てのアイスをさっさととって、彼女は会計に向かう。僕はまだ何を食べるか決められずに、うんうんうなっていた。
僕がおやつを決めてコンビニを出たとき、すでに空は暗くなっていた。夏の夕方はぎりぎりまで明るいけれど、ある時刻を過ぎると一気に暗くなる。
「時間無駄にしたなあ」
そんなことを思うけれど、結局いつも、コンビニでアイスを迷うことになるのだ。
僕は日々迷いながら生きている。
このように僕は大学に行ってもいつもどこで昼を取ろうかとか、面倒な授業を行くかサボるか、欠席数とにらめっこするのだ。
そうして、大学に行き、バイトをし、コンビニでアイスを買い、家で寝る。
それを繰り返す中で、たまたま大学とコンビニという二か所でエンカウントする人物と仲良くなった。行きつけのコンビニが重なっていたらしい。そこに訪れる時間も重なっていた。珍しく生活習慣が似たようなところに親近感を抱く。その上実は、大学において、専攻のクラスが同じという驚きから印象に残っていったのだろう。僕は少しだけ話すようになった。内心来年のゼミに配属になったらもう会わないだろうな、という気もしながら。
それでも気づけば、行動を共にするようになっていく。
長く一緒にいて、嫌な感情が無ければ、告白してみたくなるものだろう。斜に構えて興味ない振りをしているけれど内心憧れていた恋愛像を夢見ながら、僕は感情のまま動いて想いを伝えるまでに至る。
それが、僕がのちにフラれることになる彼女だった。




