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【完結済み】チートもハーレムも大嫌いだ。  作者: 多中とか
本章 異世界にて、惑う
13/65

第9話 修行のような何か。

2・2分、あと1話投稿します。

「気配察知は、やることが少ない。相手のサンの流れを読む。これだけ」



「せんせー、サンを読むってどうやるんですか」



「しらん。なれろ」



「えー」



 メルセスさんは感覚派の人だ。たぶん、反対にテスェドさんは生真面目で学者肌よりの人。厳密性を大事にするタイプだ。

 二人は会話していると食い違いとか起きるんじゃないかなあ。



 おっと、気がそれた



「ぼやっとしてるんじゃない。サンを動かすから見てみろ」

 といって、彼女は右腕を挙げる。掌を僕に見せている。



「今私は掌にサンが集まっている」



「えー、サンって自由に移動させることができるんですか」



「できる。というかサンを移動させるから能力が発現できるんだ。お前もあの飲み物を出すとき、サンをそこに結集させているはずだ」



「いや、してないですけど」



「してるんだ。二度言わせるなよ」



「して……ぐふ」

 急に彼女が目の前に移動して、僕は顎をつかまれた。



「すみません、なんか顎がもわもわしてますね」

 もわもわとしたのがうっすら見える。



「ああ、サンを込めた腕でつかんでいるからな。そのもわもわってのが、お前の感覚かもしれんな」

 といった彼女は、顎をつかんだまま説明を続ける。



「いうのを忘れていたが、サンを操ったり、感じ取ったりする感覚は人それぞれ異なる。文字通り、感覚的な能力なんだ」



 なるほど、この人が感覚派なのか、原理的に感覚に頼るものなのか、わからなくなってきたな。テスェドさんの見解を聞きたい。



「ちなみに、メルセスさんの感覚がどのようなものか教えていただけますか?」



「私のは、サンを集める時は、ごわっと腕に力を入れ、すぐにすん、と脱力する。察知する時は、ごわっと力んだ身体の部位が赤く色づく。そしてすんっと脱力する時に透明に薄らいでいくような感覚がするんだ。そのギャップを見極める」



 ……うん、わからない。



 僕の感じたもわもわとした感覚にはギャップなんてものはなかったぞ。

 というか僕のも彼女のも視覚っぽいけど、僕のは煙のような形状の情報で、彼女のは色の情報に特徴があるんだな。



「お前の感覚の起点があっさり分かったのは、よかったな。おまえ、才能があるぞ」



 なんだか、おまえおまえうるさいな。



「あの、祐樹って呼んでもらえます? なんか怒られているみたいで怖いんですけど」



「はあ、さっき体調不良がどうとか、気にしないって言ってただろ」



「それとこれとは別ですよ。できれば穏やかに話したいじゃないですか」



「あー、わかったよ。ユキ。これでいいか」



 ……。どこかで聞き覚えのある呼び方だなあ。



「ありがとうございます。では続きお願いします」



 そういって僕は彼女のサンの動きを見てみる。全然わからない。



「おー、やる気十分だな。まあさっき見せたのは、気配がわかりやすいように大分色濃くしておいたからな。普通に使ってるのを察知するのは私と同程度の感度を持たないと無理だぞ」



「色濃くってのは、気配をわざと強く見せてくれていたってことで、感度っているのはそれを察知する精度のことでいいですか」



「そうだ」



 この人はよく自分の考えを自分の感覚で話すから、翻訳が必要だな。

 まあ、大分理解できて来た。



「では、手加減してくださいよ」



「そのつもりだ。最初の程ではないが、この村でサンを使い始めた50歳程度のレベルに合わせてやる」

100で成人だったからその半分。地球換算で10歳児のレベルってことか。



「お願いします」



「じゃあ、私が右腕と左腕にサンをランダムで集めてやる。こんな感じだ」

 といって、彼女は最初に右腕、次に左腕、とわざとらしくサンを集めた。もわっとした何かがわかりやすく交互に立ち上がっては消えた。



「これから私がランダムでサンを集める。お前はそれを感じたら、私が集めた方と同じ側の腕を挙げろ。

私が右手にサンを集めたら、お前は左手を挙げるんだ」



なるほど、反射神経の遊びみたいだな。



「とりあえずはじめるぞ」

 彼女はいきなり左腕にサンを込めた。僕は右腕を挙げた



「そうだ。いくぞ」



 その後右左右、右左、左、左、……、と緩急やフェイントを入れられながらサンの切り替えの見極めを判断し続ける。



「ふむ……。やめ」



 五分ほどか、その作業を続けたところでストップがかかった。



「最初に見えたときも言ったが、才能あるな。50歳レベルならすでに超えている。やはり能力を使えるのはでかいな」



 能力を使えたから、サンの見極めに慣れていたのだろうか。わからないが、才能があることは悪いことではないだろう。褒められてうれしくなった。



「普通の人は能力を使えるようになる時期っていうのは遅いんですか」



「そうだ。普通能力を使えるようになるのは成人の儀を無事通過できてからだ。それまでは基礎練習だと思われている」

 


 そうなのか。テスェドさんの話にぬけがあったな。今度また尋ねてみよう。

 わからないが、才能があることは悪いことではないだろう。褒められてうれしくなった。



「ではレベルを上げよう。75歳レベル」



 いきなり地球人換算15歳の少年だ。小学校高学年と中学校卒業程度の差は大分大きいぞ。



 そうして、難易度が上がる。この難易度というのは、サンの集まり方の露骨さが少なくなって、たびたびサンが『見えない』のにサンが集まっているという事態が発生してきた。



「なんかずるしてません?」



「ずるじゃない。この村で成人の年齢に近づいてくると、自然とできるようになる技だ。擬態という」



 擬態は、集まっているサンを他者から見えないようにする技術らしい。見えないといっても、完全に無にするのは難しいから、何か別のものだと誤認させるわけだ。花に化けるカマキリや、葉っぱと見紛う蛾、アリ社会に溶け込むクモ、変幻自在のカメレオンのような……。これは相手がどのようにサンを認知しているか知っていると、その認知する手掛かりを相手に与えないように擬態の方法を工夫できるから、より識別が難しくなるらしい



「あ!ずりい! 僕の情報をわざと引き出しましたね!」



「いや、ユキが勝手に報告してくれたんだろう。使えるものは何でも使う。戦場の常識だぞ」



「メルセスさんは授業内容を言わなさすぎなんですよ! 先生なんですから僕にあらかじめそういうものがあるって教えてくださいよ!」



「無茶言うな。ユキがこれほど早くサンを識別できるようにならなかったらほんの数分でここまで来なかったんだ。いう暇がなかった。それに識別できるようになったら先生の私がユキの感覚を聞かないわけがないだろう」



 謀ったな! ぐぬぬぬ。



「一日目の生徒は何十年という経験者の技量を超えられないんですから、僕特化の擬態を止めてくださいよ」



「何弱気になってんだ。戦場では敵はそんな譲歩してくれんぞ。死ぬ気で見極めろ」



「僕戦場にたちたくなーい」



「お前はそう思ってても、相手は待ってくれないぞ」



 まあ、その通りなんだろう。



 僕はあきらめて、両手を型の位置まで上げて、ボクシングのような構えを取る。自分の腕にサンを集める意識をする。まだ集める方法を聞いてないけれど、アルミ缶を出す要領で無理やり腕からサンを湯気だたせる。

 そうして、僕は自分のサンの揺らめきとメルセスさんの擬態したサンの動きを比較しようとした。



 全然わからん。



「ユキ、もう自分でサンを結集させられるのか」



「いや、メルセスさんが能力を発現させる方法と一緒だって言ってたじゃないですか」



「でも、できるとは思わなかったぞ」



 この人の言い方は紛らわしい!



「まあ、いいですよ。できたから」



「そうか。で、なぜ、私のサンを見極めるのに、自分のサンを引き出したんだ」



 彼女には、何やら僕の行動の意図が読めなかったらしい。まあ確かに僕自身なんとなくの行動だったから説明するほどのこともないけれど。



「いやなんとなくですけど、荒い精度だとしても、自分のサンの動きを見て、メルセスさんのサンの動きと比較したら、何かヒントが得られるかなと思いまして」



「ふむ。確かに経験値としてはいいかもな。自分とは言え、サンの動き方を知る人物が私以外にもう一人増えたわけだから。そうやってサンの動き方のパターンを知ることは、感覚を鋭くさせるいい手段だ」



「はあ」



 なんとも適当な行動だったけど、熟練者には素人がそれなりに努力していると映ったらしい。



「じゃあ、もう一回いくぞ」



 左右、右左、左、左、左、右左右……。



「おい、あてずっぽうをいうな。」



「いてっ」



 見えないから適当に言ったら殴られる。感情を読めるのもずりぃ。



「まだまだ!」



 五分が経つ。右左右左右、右、右左……。



「まあ、お前は50歳レベルだな」



「はあ……。擬態っていうのを見分けられないですよ。全然」



「ほら、私の右腕を見てみろ。もわもわしてるか?」



「してない!」



「じゃあ、無理だ。あきらめろ」



 ぐぬぬぬ。僕はメルセスさんをにらみつける。



 今日のところはな、と言ってメルセスさんは腕を振りながら川辺から歩き去っていく。



「悔しいなら練習してろ。擬態は結局、サンの扱いが巧妙になったからできる技術だ。お前自身がサンを擬態させられるくらいうまく使ってみろ」



 サンの扱い方の練習方法も教えてほしいんですけど!



「はあ、やるか。どうせあの人の練習方法、感覚的すぎて分かりづらいしなあ」



 メルセスさんの後姿はすでに土手を上がり、こちらから見えなくなった。



「とりあえず何ができるんだろうな。僕」



 右腕と左腕に交互にサンを結集させてみるか。



 右、左、右、左、右、左、……。



 なんだろう、片腕にサンを集中させ、もわもわが出るレベルまでになったら、片腕の集中を止め、次に反対の腕の集中に入る。またもわもわがでるまで集中させる。この切り替え、もわもわが出るまでの流暢さというのは、かなりメルセスさんより拙く、時間がかかった。



 「うーん。もわもわが出るくらいの集中が完成するまでに、腕を見る、力む、脱力する、待機する、そうしてようやく完成する、って5段階があるなぁ。作業全体として5秒くらい」



 まず、集中するところを実際に見なきゃいけないのは、ひどく使いづらいな。右と左を交互に切り替えるなら、交互に見る作業をしなきゃいけない。絵面がマヌケだ。

 そして、力むのと脱力するのが二段階分挟まる。これはどうしてだか、僕はサンを集中させるのに、適度の分量の力みが必要らしい。強すぎず弱すぎず。これはサンを集中させる際に感覚として必要なものなのか、それとも腕に力を入れる以外の、本当に必要な感覚が、適度の腕の力みが入ったときの感覚と連動しているというのか。



「全然わからん。とりあえず反復練習しとこ」



 右、左、右、左、右……。


修行パート全然オサレに書けない……。修行ばかりする物語好きなんですけど。オリジナル念能力とか。むしろサバイバルで修行ばかりして永遠にインフレする二次創作とか書いてくれないだろうか。書こうか。

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