009:クエスト「スターダストドラゴン捕獲」(1)
翌日。
宿屋を出ると、清々しい青空が広がっていた。
今日は、いい日になりそうだ。
「私、お日さまが好きなんです。空が晴れていると、それだけでいい気分になります」
「そうだな。俺も晴れ空が好きだよ」
「えへへ……こんな快晴の日が、ずっと続いてくれたら嬉しいですね」
そんな会話を交わしながら、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、いつもより騒然としていた。
クエストボードに、デカデカと緊急クエストが貼られていたからだ。
「アレクさん! 来てくださってありがとうございます!」
受付嬢が、切迫した声で俺を呼んだ。
「……どうした?」
「……お願いします。こちらの緊急クエストを引き受けて、スターダストドラゴンを捕獲してください」
「スターダストドラゴン? 上位龍じゃないか……。上位龍は、天上界で勢力争いを続けていて、地上にはほとんど降りてこないはずだろ?」
ドラゴンは世界最強の種族であり、その中でも、上位龍は他モンスターとは隔絶した強さを誇る。
「はい。そのはずなのですが……どういうわけか、中央山脈にスターダストドラゴンが現れて、次々と取り巻きのドラゴンやワイバーンを召集しながら、空から雲を消失させ、空を晴らし始めたのです。……アレクさんも、ここまで来る際に、雲一つない、不自然なほどの青空を見てきたでしょう?」
「そんな馬鹿な……確かに、スターダストドラゴンは『あらゆる願いを叶える』と神話で語られているけど、空から雲を消失させるなんて……不可能じゃないのか?」
「このマップをご覧ください。既に、中央山脈を中心に雲の消失地域は広がっており、しかも、消失地域は急速に拡大しています。このままでは、雲は失われ、人の大半が生きていけない灼熱地獄に変貌してしまうでしょう」
「ところで、どうして捕獲クエストなんだ? スターダストドラゴンを討伐したらダメなのか?」
「……神話によると、かつてスターダストドラゴンを討伐した古代王国は、落ちてきた空に潰されて滅びたと言われています。こうした神話には、往々にして真実が含まれているものです。リスクを避けるため、今回は捕獲することが推奨されています。そこで、テイマーであるアレクさんの出番なのです」
「……確かに、俺はテイマーだけどさ、俺の配下はユリア一体だけだぞ?」
「アレクさんには、神獣であるフェンリルをテイムした実績があります。その他のモンスターをテイムできず、いきなり神獣をテイムしたアレクさんは、神獣特化型のテイマーだと推定されます。スターダストドラゴンのような上位龍をテイムできるのは神獣特化型テイマーだけなので、こうしてアレクさんにお願いしています。世界を救えるのは、アレクさん、あなただけなのです」
「報酬額は?」
「前金で1000万G。成功報酬は3億Gに加え、エリクサーです」
エリクサーは、死者を蘇生することすら可能な最高級の回復薬だ。
カネでは買えないレアアイテムである。
「よし、引き受けよう。スターダストドラゴンはほとんど地上に降りてこないレアモンスターだからな。スターダストドラゴンをテイムできる絶好の機会は逃せないよ。それに、世界を救える英雄になるのも悪くないよな」
最悪、失敗しても前金を持って逃げれば大丈夫だろう。
俺は耐熱魔法を使えるので、灼熱地獄の中でも生き延びられるはずだ。
「ありがとうございます、アレクさん! アレクさんなら、きっとこの世界を救えると信じていますよ」
こうして、受付嬢に見送られながら、俺たちは冒険者ギルドを出た。
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