007:Dランク昇格
迷いの森を脱出して、俺たちは冒険者ギルドに帰還した。
「おかえりなさいませ! ……もしかして、その子はフェンリルですか?」
受付嬢は、ユリアを見て、怪訝そうな表情を浮かべていた。
……どうやら、俺はあまり期待されていなかったようだな。
「ああ。クエストの内容通りの、フェンリルの子どもだよ。迷いの森に迷い込んでいたから、見つけてきた。ついでに、グレートジャイアントスパイダーも倒してきたから、鑑定してくれ」
俺は、アイテム袋からグレートジャイアントスパイダーの素材を取り出した。
「……え? グレートジャイアントスパイダー、ですか? それも、あなたが?」
「はい。私が雄叫びで動けなくなっている間に、アレクさんがあっという間に倒してしまいました」
「そうでしたか……かしこまりました。ランクアップ処理を行いますので、応接室にお越しください」
受付嬢に案内されて、俺たちは応接室に案内された。
「コーヒーをお持ちいたしますね。少々お待ちください」
冒険者業界は実力主義だ。
底辺冒険者に対しては何一つ支給されないが、将来有望な冒険者に対してはコーヒーとお茶請けの菓子が無料で提供される。
「お持ちいたしました」
コーヒーが届いた。
ミルクと角砂糖を大量投入して、カフェラテのようにしてコーヒーを飲んだ。
こうすれば、タダで糖分も補給できて安上がりだ。
「ところで、俺はまだ1つクエストをクリアしただけだぞ? しかも、ただの迷子探しだ。本当にランクアップしていいのか?」
「当たり前です! グレートジャイアントスパイダーをサクッと倒せるような人がFランクにいるのはおかしいですよ! ただ、規定上、私の独断で上げられるのは2ランク上までなので、とりあえず、アレクさんは、Dランク冒険者に昇格となります」
「……なるほど」
俺は、Fランク冒険者としてコツコツ働いて地道にランクアップする予定だったが、下積み生活をすっ飛ばして、いきなりDランクに昇格してしまった。
「アレクさん、すごいです! これなら、すぐにSSSランク冒険者までランクアップできそうですね! ……もしかして、そのフェンリルの子どもは、アレクさんがテイムしたのですか?」
「ああ。ダメだったか?」
「……私どもでは判断できませんので、ユリアさんの母であるフィリスさんと直接会話して、事情を話してきてください」
「……俺、生きて帰れるかな……」
親に無断でユリアをテイムした俺は、フィリスから見ると誘拐犯に見えてしまうかもしれない。
「大丈夫ですよ! お母様は優しい方ですから!」
ユリアは無邪気に微笑んでいた。
俺は、何事もなく終わるよう祈りながら、フィリスの家に向かった。
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