表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/16

006:クエスト「迷子のフェンリル探し」(5)

「うぅ……痛いです……」

 足を動かそうとする度に、ユリアは涙目になっていた。


 まずは、ユリアの傷を治療しよう。


「ユリア。その傷を治療するから、俺と身体をくっつけてくれないか?」

「抱き着けばいいですか?」

「ああ」

 頷くと、ユリアがむぎゅっと正面から抱き着いてきた。


 身体の線を隠す、ふんわりとしたワンピース越しだったので分からなかったが、ユリアの胸は見た目以上に大きいようだ。

 抱き着かれた際に、柔らかい感触が伝わってくる。

 ……いや、落ち着け。

 集中しろ。

 これは医療行為なんだ。

 下心を持ってはいけない……。


「【生命循環】」

 俺は生命循環スキルを発動した。


 生命循環により、自然治癒力が向上し、ユリアの傷が徐々に治っていく。


 生命循環は、本来は健康を維持するためのスキルだが、熟練度を上げれば回復スキルとしても活用可能だ。


 即効性が低いので、戦闘時の回復としては使いにくいが、今のように、安全な場所で傷を癒す場合は優秀だ。


 数分ほど抱き合って、ユリアの治療が終わった。

「これで、お互いの身体が馴染んだから、次回からは、もっと速く治療が終わるはずさ」

「そうなんですか。凄いスキルなんですね!」

「いや、本職のヒーラーだったら一瞬で傷を治せるけどな。まあ、テイマーが使える回復スキルとしては便利だよ。疲労回復にもなるからね」

「アレクさん、ありがとうございます。これなら……あのグレートジャイアントスパイダーも倒せるかもしれません」

 ユリアは、背負っていた巨大な斧を抜いて、身構えた。


「来ます!」

 その瞬間、森の木々をなぎ倒して、巨体に似合わない速さでグレートジャイアントスパイダーが走ってきた。


「グオオオオオオオオオオオオオ!」

 雄叫びが森中に響く。

 耐性がなければ、雄叫びだけで行動不能に陥ってしまう。


「……んっ……」

 聴覚が鋭いフェンリルにとっては、雄叫びは特に辛い攻撃だ。

 ユリアは逃げようとしたが、身体が震えて動けない様子だ。


 ……俺が迎え撃つしかないか。

 テイマーは後衛職だ。

 

 最前線で戦うのは苦手なんだけどなぁ……。


 グレートジャイアントスパイダーを守るように、大勢のプチスパイダーが蠢いていた。

 まずは、雑魚を全滅させようか。


「【サンダーストーム】」

 俺の詠唱によってサンダーストームが発生し、プチスパイダーの群れに襲いかかった。

 広域攻撃魔法により、一撃でプチスパイダーは全滅した。


 ボスモンスターの多くは取り巻きの雑魚を引き連れてくる。

 ボス戦の際は、まず雑魚を倒さなければならない。


 その際、高火力の広域攻撃魔法を使えば、一撃で雑魚を全滅させることができる。


「ガアアアアアア!」

 子を全て失ったグレートジャイアントスパイダーは、動揺したように鳴き、再びプチスパイダーを産み落とそうとして、大きな隙を晒した。


 チャンス到来だ。


 俺はグレートジャイアントスパイダーへと歩み寄り、神獣王の剣を大きく振りかぶった。


「ガァ?」

 近づいてきた俺を見て、慌てて逃げ出そうとしたが……もう遅い。

 この距離は俺の射程圏内だ。


「【奥義:ファイナルストライク】」

 極光色の斬撃が、グレートジャイアントスパイダーを襲った。


「ガァァ……」

 すると、うめき声を上げて、一撃でグレートジャイアントスパイダーは倒れた。


 神獣王の剣のおかげで、攻撃力が跳ね上がったので、一撃で終わったが、勇者パーティーに所属していた頃の火力だったら、ファイナルストライクを五発ほど当てなければ倒せなかったはずだ。


 単純計算で、威力が五倍になっている。


 テイマーが装備できる武器は基本的に貧弱だが、例外的に、神獣王の剣だけは攻撃力が非常に高いので、このような劇的な差が産まれる。


 これまでは、主に雑魚敵の処理だけに専念していたが、神獣王の剣を装備すれば、ボス相手にも大ダメージを与えることができそうだ。


「……え? もう倒しちゃったんですか?」

 ユリアは、驚いたように目を丸くした。


「ああ。思ったよりグレートジャイアントスパイダーは弱かったね」

 軍団召喚型のモンスターは、引き連れている雑魚軍団を倒せば一気に弱体化する。

 今回は、雑魚軍団を一撃で倒せる俺と相性が良かったので、楽勝だった。


「ごめんなさい。お役に立てなくて」

「いいんだ。子どもを守るのは、大人である俺の仕事だからな」

 俺は、落ち込むユリアの頭を撫でて慰めた。


「えへへ……ありがとうございます。もっと撫でてください!」

 ユリアが上機嫌になるまで、俺は頭を撫で続けた。


 


 

 

『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、

広告の下にある星を☆☆☆☆☆→★★★★★にして

ブックマークもして頂けると嬉しいです。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ