005:クエスト「迷子のフェンリル探し」(4)
俺は、迷いの森に到着した。
迷いの森の中は、鬱蒼とした木々によって日光が遮られ、昼間でも薄暗い。
迷いの森を探索する際に重要なのは、目に映るものを信じないことだ。
視覚などではなく、サーチスキルの結果を信頼することで、正しい道を進むことができる。
「【サーチ】」
俺はサーチスキルを発動し、ザクザクと落ち葉を踏みしめながら歩く。
「グギャギャギャ!」
Fランクモンスターの、ゴブリンが襲いかかってきた。
ゴブリンは、嗅覚が鋭敏で、迷いの森に惑わされないので、天敵の少ない迷いの森の中ではよく見かける。
ゴブリンは、小さな石斧を装備していた。
「【ソニックブレード】」
俺が神獣王の剣を抜き、衝撃波をゴブリンに当てると、ゴブリンは真っ二つになって倒れた。
俺も、勇者パーティーの雑魚処理係として雑魚モンスターの大群を倒してきたので、ゴブリン相手なら楽勝だ。
途中で、フェンリルらしき足跡を見つけた。
足跡を追って、俺は獣道に足を踏み入れた。
神獣王の剣で草を刈りながら、獣道を進んでいく。
神獣王の剣はとても切れ味が良いので、草がスパスパ狩れる。
この剣があれば、草刈りのクエストも簡単にクリアできるだろう。
獣道を進むと、水がこんこんと湧き出す泉に辿り着いた。
泉の水はよく澄んでいて、そのままでも飲めそうだ。
「うぅ……お母様、ごめんなさい。助けてください……」
泉のほとりで、狼耳の少女が顔を伏せ、助けを求めながら泣いていた。
少女の髪の色は茶髪で、服装も少女のお気に入りの白のワンピースだ。
事前に聞いていた、情報通りの外見だ。
探していたフェンリルの子どもだろう。
「助けに来たぞ」
「……え? 誰、ですか?」
少女は俺を見て、怯えたように身体を震わせた。
「俺はアレク。テイマーさ。君のお母さんが、いなくなった君を心配して捜索クエストを出していたから、君を探すためにここまで来たのさ」
「私はユリアです。冒険者の方でしたか。心配をかけてしまったようで、ごめんなさい」
ユリアは、ペコリと頭を下げた。
「気にするな。俺だって、多額の報酬目当てで来ただけだからな。……ところで、その足は大丈夫なのか?」
ユリアは、右足に大きな傷を負っていた。
「……えへへ。ちょっと、途中でグレートジャイアントスパイダーと戦って、怪我しちゃいました。なんとか逃げ切って、ここまで逃げてきたんですけど……まだ狙われているみたいです。アレクさん、狙われているのは私だけですから、あなたはまだ逃げられます。私をこの場に置いて、今すぐ逃げてください」
グレートジャイアントスパイダーはSSSランクモンスターであり、多数の子を指揮しながら襲ってくる。
フェンリルといえども、動きの制限される森の中では、勝ち目はない。
「いや、ダメだ。君みたいな、小さい子を一人置いて逃げることなんてできないよ。……一緒に戦おう。俺は、つい最近まで勇者パーティーに参加してたから、大物相手の戦闘なら慣れてる。俺たち二人なら、きっとグレートジャイアントスパイダーも倒せるよ」
「……はい。それなら、アレクさんを信じてみようと思います」
すると、ユリアの全身が光り輝き始めた。
これは……テイムが成功した証だ。
光が収まると、ユリアの背中に、契約の刻印が刻まれた。
こうして、俺はユリアをテイムした。
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