002:クエスト「迷子のフェンリル探し」(1)
全財産を奪われて、俺は一文無しになった。
今すぐ、働いてカネを稼がなければならない。
だから、俺は冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、この街で最も大きな建物だ。
重たい扉を押し開けて、俺は冒険者ギルドに入った。
ギルド内は、大勢の冒険者で賑わっていた。
俺は行列に並び、順番が来るのを待った。
◇
俺の順番が回ってきた。
「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ!」
美少女受付嬢が、俺を出迎えてくれた。
「パーティーから追放されたから、パーティー脱退手続きをお願いしたい」
俺は、冒険者カードを受付嬢に渡した。
冒険者カードは、冒険者用の身分証明証だ。
「はい。……アレクさんは、Aランク勇者パーティーの雑用係だったのですね。雑用係は冒険者ポイントが貯まりませんので、パーティー追放後はFランクからのスタートとなりますけど……よろしいですか?」
申し訳なさそうな表情で、受付嬢が説明してくれた。
冒険者業界においては、最前線で血と汗を流して戦う戦闘職の地位が高く、それ以外の業務を担当している雑用係は冷遇されていて、雑用係としていくら働いても、最下層であるFランクからランクアップすることはできない。
「ああ、構わないよ。今、一文無しだから、手っ取り早くおカネを稼げるクエストを紹介してくれ」
「えーと……アレクさんはテイマーなんですよね? それなら、迷子のフェンリル探しをおすすめします」
「……フェンリル? 神獣じゃないか」
「はい。この地域は、フェンリルの親子によって守護されているのですが、今日、子どもの方が家を抜け出して、行方不明になっておりまして、捜索願いが出ているのですが、普通の冒険者に依頼すると危険なので、できればテイマーさんにお願いしたいのですよ」
「……俺、今まで一体もモンスターをテイムしたことがないんだけど、大丈夫かな?」
「……当ギルドは、現在テイマーが出払っておりまして、『テイマーであれば、どんな人材でもフェンリル探しに投入しろ』とギルドマスターから厳命されております。前金も出ますし、無理はしなくていいですので……引き受けて頂けると嬉しいです」
「報酬額は?」
「前金で5万G、成功報酬は500万Gです」
5万Gか。
それだけあれば、装備品を整えて、宿に泊まるカネも捻出できる。
「よし、引き受けよう。一応、頑張って探してみるよ。期待しないで待っていてくれ」
「かしこまりました」
こうして、俺は前金の5万Gを受け取って、冒険者ギルドを出た。
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