001:追放
「アレク! お前はクビだ!」
勇者ダニエルは、俺に対してクビを告げた。
ここは宿屋の一室。
パーティーメンバー全員が、部屋の中に揃っていた。
俺たちのパーティーは5人編成だ。
勇者ダニエル。
戦士エリク。
聖女ライラ。
魔術師モニカ。
そして、テイマーの俺だ。
「ま、待ってくれ! どうして俺がクビなんだ!? 理由を説明してくれ!」
俺以外の4人は戦闘に特化した戦闘職なので、戦闘以外で必要な、雑用や交渉などの仕事は全て俺が担当していた。
それだけでなく、俺は冒険中の偵察や道案内もしているし、補助魔法で味方を強化して敵を弱体化させているし、雑魚敵の大半も処理している。
俺たちのパーティーは、順調にAランクまでランクアップし、新進気鋭の勇者パーティーとして期待されているが……もし俺が追放されれば、瞬く間にこのパーティーは崩壊してしまうだろう。
「理由? それはなぁ……テメェが、モンスターを一体もテイムできない出来損ないテイマーだからだよ!」
「そうよ! 普通、どんなに雑魚なテイマーでも、スライム一体くらいはテイムできるのよ? スライムすらテイムできないような雑魚は、勇者パーティーには相応しくないわ!」
テイマーのスキルの大半はテイムモンスター関係であり、ダニエルとライラの言う通り、俺は一体もモンスターをテイムできていないことから、テイマーとしての本領は発揮できていない。
しかし、俺はコモンスキルをうまく組み合わせて、配下モンスターなしでも、雑用係兼支援担当として十分な成果は残していた。
だが、どれだけ成果を残しても、「配下モンスターを持たない落ちこぼれテイマー」という扱いから脱却することはできなかった。
「そうですね。モンスターを一体もテイムできないよわよわテイマーさんより強い方は、いくらでも存在すると思うのですよ。私も追放に賛成なのです!」
「……うむ」
モニカは楽しそうに微笑んで追放に賛成し、エリクも静かに頷いて追放に賛成した。
俺以外の全員が、俺の追放に賛成しているようだ。
「……分かった。そこまで言うなら、俺はパーティーから離脱するよ」
「おお! 珍しく、物分かりが良いじゃないか! 寄生冒険者であるお前を追放することができて嬉しいよ!」
「賢明な判断ね」
俺は勇者パーティーに背を向け、部屋から出ていこうとした。
「待つのです! 全財産をここに置いていくのですよ! 持ち逃げなんて許さないのです!」
モニカに呼び止められて、俺は仕方なく、装備品を脱ぎ、全財産と一緒に手渡した。
これで、勇者パーティーとの腐れ縁が切れるのなら安い出費だ。
こうして、俺は勇者パーティーを追放された。
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