無愛想な先輩君と察しの良い元生徒会長さん
花音が家に来た次の日。俺は何故か花音の姉である佐々木莉音に廊下で話しかけられ、空き教室に呼び出されていた。
「えーと・・・。俺、何かした?」
高校に上がって、クラスが別になったことで疎遠気味になっていたので、こうして二人で話すのは実に1年ぶりだ。
「妹のことで、ちょっと話があるの」
「あー、成程ね」
妹に手を出すなとか、そんな感じかな。でも、元々告白してきたのはあいつだしなあ・・・。
「あなた、花音のこともう思い出してるわよね」
ブフォッ!?
「あら。その反応は、図星ね?」
「な、ななな何のことかな?」
「おかしいと思ったのよ。いくらあの子が中学の頃目立って無かったとはいえ、何度か話したことのある相手のことをそうそう簡単に忘れる筈ないわよね」
バレてるっ!!?
「それで?何で花音に覚えてることを隠してるの?」
「あっ、もう覚えてる前提なのね・・・」
「茶化さないで」
「わかったわかった。話すよ。話すから。って言っても、大した理由じゃないぞ?ただ、これが花音の望みに一番沿ってるってだけだ」
「・・・どういうこと?」
「俺が花音のことを思い出すまで、耳かきさせてやるっていう約束したんだよ」
「・・・そういうことだったのね。でも、あなた耳かきされるの嫌がってたんじゃないの?もう話ちゃえばいいのに」
「そんなに嫌じゃなくなったんだよ。むしろ、ちょっと楽しみにしてる。花音も喜んでるし、もうこのままで良いんじゃないかと・・・」
「・・・あなた、ツンデレね」
「いや、何でそうなるんだよ」
「だって、耳かきされたいだけなら、ほんとのこと打ち明けた後に、改めて耳かきしてって頼めばいいだけじゃない。それをしないってことは、花音に甘えられたいからでしょう?」
何もかもバレてんじゃん。
「一応、花音が満足したら話すつもりだったんだけどな」
「そんなことしてたら、一生打ち明けれないわよ?あの子、満足する気配ないもの。むしろ、ヒートアップしちゃってるじゃない」
「・・・やっぱり、話た方がいいか?」
「それは、あなたが決めることよ」
ここまで言っといてそれはないだろ。
「まあ、何にせよあの子に悪意があって騙している訳じゃないのね」
「当然だろ」
「なら良いわ。後は好きにして頂戴」
そう言うと、莉音は自分の教室に戻って行った。
「どーすっかなー・・・。取り敢えず、俺も帰るか」
そう呟きながら、教室のドアを開けた。
カサッ
ん?今何か聞こえたような・・・。まあ、気のせいだろ。それより、これからのことを考えないとな。
* * *
(え?どういうことですか?先輩、もう私のこと思い出してたんです?しかも、私を気遣って覚えてないフリしてたんですか?どうしましょう・・・。明日からどんな顔で会えば良いんですか・・・。)
近々、花音のお姉さんの名前を変更するかもしれません。