表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/99

Side 花純

夕方になるとヒグラシがどこかで鳴いている声がした。夏を感じる夕日とともに、お母さんと娘の百合ちゃんが面会にきた。



「ママ!!」


百合ちゃんは私をめがけてベッドにダイブして抱きついてきた。


「会いたかったよ~」


ぎゅっと小さい子が私を抱きしめている。この子が私の・・・


今日はずっと一日一緒にいてくれた課長に目をやると頷かれたので一生懸命、いつも通りのママとやらを演じてみようとするがどういう態度で接していたのか、わからない。あたりさわりのないよう


「ごめんね、私も会いたかった」


と抱きしめ返した。百合ちゃんが顔を起こして、私の目をジっと見つめる。丸い大きなクリっとした目に透き通るような白い肌。どちらかというと課長に似ている気がする。口元と耳は私に似ているかな、なんて考えてみる。不思議だ。この子が私の・・・



「ママ。また私のこと忘れちゃった?」


真顔で百合ちゃんが訊いてくる。


「え・・・」


その場にいる大人三人は絶句した。


「百合・・・またってどういうことだ・・・?」


課長は狼狽えながら訊いた。


「ママね、よく忘れるの。どうしたのかな」


よしよし、と私の頭を撫でながら慰めようとしてくれている。


「百合・・ちゃ・・・」


自然と溢れる涙を百合ちゃんは小さな指で掬ってくれる。その度に私は・・・


「あ、ああ・・・百合・・ごめんなさい・・・」


瞼が重たい。どうしたのだろう。また意識が遠のいていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ