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Side 花純

「ああ。思い出したのですが」


「うん。どんなこと?」


「プリティ・ウーマンごっこの」


「ああ!結局居酒屋にしましょうよって花純が反対した時の」


「それです。やっぱり結局居酒屋になったんですか?」


「うん。冗談だったし」


「冗談だったんですか」


「半分本気」


「なんですかそれ」


呆れた顔でジトっと彼を眺めると笑い返してくれた。


「そこで終わり?」


「あ、はい。初めてのデートに会社の中で誘われて皆に騒がれて、つめられて喫茶店で待ち合わせをして、普通の居酒屋にしましょうって提案して目が覚めました」


「そう」


彼は冷静に聞いた後、少し考え込んでいたが別件を思い出して聞いてみる。


「あの、携帯電話が気になって見たんですけど」


「ん、ああ」


彼も何かを思い出したのか「そういえば」というような顔をしていた。


「これって携帯電話ですか?」


私は先程の液晶画面が真っ暗なゲーム機みたいな機器を彼に渡す。


「うん。そうだよ」 


「七年も経つとこんな携帯電話になるんですね!」


興奮して大きい声を出してしまった。突然の大きい声に彼もびっくりしていた。


「あ・・ああ!そうだよな七年前ってiPhoneなかったっけ?」


「アイフォン・・?」


「そうそう。これ、iPhoneっていうんだよ」


「へぇ~電話も英語になったんですね。私、あのピンクの二つ折り携帯気に入ってたのに」


ちょっとしょんぼりして項垂れる。


「大丈夫。確か、思い出だからって自宅に保管してあると思うよ」


「本当ですか!?」


「うん。今はもう充電がなくて電源落ちてるだろうけど充電器も残していたと思うから充電すればその時やりとりしていたメールとか着信は残ってるんじゃないかな」


「よかった~」


自宅に戻ったら早速試してみよう。何か思い出せるかもしれないし。


「ところでこれはどうやって使うんですか?」


「ああ。そうだよな。わからないよな」


笑って彼はそのiPhoneとやらを手にとって私の横に腰かけて説明をしてくれようとする。彼の香りが懐かしいような気がしてなぜか彼の腕を掴んだ。



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