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Side 花純

「赤ちゃん、おはよう」


妊娠している実感は正直なく、つわりもとくに感じないのだが一応、お腹をさすって挨拶をしておく。少し気分が落ち着いたところで鞄を開けてみた。携帯電話を探すが見当たらなかった。


「あれ?どうしたのかな?」

ガサゴソあさっているとバイブが震えた気がした。


「あれ?」


震える機材を見つけて取り出すと一つの黒と白のデジタルカメラみたいな・・・液晶に「二〇一〇年八月二十三日」と表示されている。


「え?これ、携帯?」


そうか。七年も経っているから私が覚えている携帯電話のはずがない。当時私が所有していた携帯電話はピンク色の二つ折り携帯電話でもっとごつかった。それが七年も経つとこんなに薄い一枚の板のようになっている。着信二十件と表示されていた。倒れた日から見ていないから課長からかな?と思って表示させようとするがボタンが一つしかない。


「え?これどうやって使うの?」


オロオロして画面を触ってみたりするけど、点灯はするのだがその先から進まない。


「使い方がわからない・・・」


五分くらいだろうか。この携帯電話と格闘してみたが拉致があかないのでさじを投げた。後で先生か看護婦に聞いてみよう。それにしても


「本当に七年後なんだ・・・」


二千十年ってこの画面には表示されている。ついでに季節も変わっていて夏真っ盛り。七年もたつと携帯電話の形状も変わっていて早速時の流れを感じた。


朝食を食べ終えて回診がおわった頃、夫だとされる篠田課長がきた。


「花純。おはよう」


私の記憶より老けているがやはり歳を取ってもこの人はかっこいいのだなとぼんやり見つめてみる。


「あ、おはようございます」


私の中では「課長」である「上司」で「彼氏」になったばかりなので敬語で返す。


「何か思い出したり、聞きたいこととかある?」


そう問いかけながら、立てかけてあった折り畳みのパイプイスを器用にベッドの横に出して腰掛けた。


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