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邂逅、或いは邂逅

「メリッサ、そして久世殿……」

「えっと、メリッサってあの人?でも死んだんじゃ」

 と、言葉を濁すリリーナ。おれだってそんな事は知っているが、此処で語るべきことじゃない。


 「生きてる人に失礼だよ」

「うん、そうだね。私の勘違いかもしれないし御免なさい」

 ぺこり、少女が頭を下げツーサイドアップが垂れた

 それに対し、髪色の似た女性は微笑みを返す。緩やかに、穏やかに、ふわりとしていて……それが、どこまでも恐ろしい。


 思わず手を伸ばし、流石にと虚空を切る。

 だって、彼女のあの発言は……ある種総てを見透かしていたから。


 「すまない、彼女の知り合いに、メリッサという似た髪色の女性を喪った人が居るんだ。それで貴女を幽霊でも見たかのような気持ちになってしまったんだろう」

 おれはそう謝る。事は荒立てない。

 こいつらは、大体全てを見透かしているような言動をした。見せていない筈の影の中のシロノワール……魔神王テネーブルの本来の魂の不在を言い当てた。

 ならば、何処まで把握しているか分かったもんじゃない。


 だと、いうのに。

 「あ、それか。何だ変な警戒しないで欲しいな。

 君が言っているのは、竪神頼勇の知り合いの事だろう?」

 あまりにもあっけらかんとした言葉に釣られ、横でリリーナが頷くのが見えた。が、しまったか?と思った時にはとっくにもう遅い。

 「ああ、それね。ぼくのことだよ」

 「えっ?」

 思わずといったように、リリーナがおれを見る。


 「ねぇゼノ君これってどういうこと?」

 「おれに分かると思うのか、リリーナ?」

 「死んでる?ってどういう」

 「簡単さ、君達も死は終わりじゃないとする者達だって、知り合いに幾らか居るじゃないか」

 「えっと、それは」

 「桜の髪色を持つ君達自身、屍の魔神姫、その魂に寄り添う導きの八咫烏、その他諸々」

 指折り数える桜色の女性。その凜とした佇まいに気圧されかけるが、何とか耐える。


 そして、何となく理解する。導きのまで付けて、ほぼ正体なんて見抜き切っている。その上でさらっとシロノワールの正体をぼかした言い方をした時点で、そこまで敵対する気は無い。  

 混乱させるなら、あいつが魔神王だという真実をまんま告げれば良い。未だに人類を……いや七天の切り拓いた世界を混沌に落とす遺志を継いでいる事まで言えば、信頼なんてズタズタ……

 だろうか?まあヒビは軽々入るだろう

 それをわざと誤魔化してくれたならば、敵意は薄い。衝撃の真実を告げるなら、速いほうが良いのだから。


 いざという時を狙って告げる?いやリリーナだって馬鹿みたいなことはたまにやるが馬鹿じゃない。実際に自分達を護りに出て来た時に告げて何の意味があるだろう。此処は疑心暗鬼を植え付けるべき……と少なくともおれは思う。


 いけないな、と頭を振る。今のおれが考えて何になる。始水さえ脳内に話しかけてくれてれば益のある考察にもなるだろうが、これじゃ妄想だ。袋小路に嵌まるだけ。


 「……そう、かもね」

 地面を見ながら、桜理が告げる。

 「だろう、真性異言(ゼノグラシア)?ぼく自身は残念……でもないかな。そういったものとは別口で、君達の神とも無関係だけれどもね?」

 ……何も言わない。リリーナの神って、多分何か違う奴なんだよな?となるし、桜理のは始水の姿をコピーしたりやりたい放題のあいつだ。となれば、あるとすればシュリ……いやアージュ由来だろうメリッサは確かに無関係ってのは欺瞞だが嘘じゃないんだよな。

 駄目だ、どうしても疑いを晴らせない。


 「まあ、ソレは良いだろう?」

 そんな思考の糸を裂いてくれたのは、仮面の男だった。

 そうだ、久世・ラーワル……彼も居た。

 「あまり、難しい話をするものでもない」

 「そだね、私達も何か頭パンクしちゃうし、悩みとかやろうとしてたこととか吹っ飛んじゃうし」

 「あ、わたしは真性異言(ゼノグラシア)さんじゃないから仲間外れで、やること覚えたままですよ?」

 「……あはは、僕達もそんなに悩んでたらゼノ君に怒られちゃうから多分覚えてるんだけど」


 ……いや怒る判定なのかおれ!?


 「さて、と。死を終わりでは無いとする、それは良いだろう」

 肩を竦める仮面に、おれは頷く。というか、おれをさらっと転生者判定から外したのか?何のために?


 「残念ながら、ぼくだって死んだ筈のぼく自身が神に今こうして再びの時間を与えられた意味を、しっかり理解してはいない。だから探している最中なんだしね」

「人は誰しも、己を探す。そうだろう?」

 仮面の奥の瞳が、おれを見据えた気がした。


 ……いや、見てるかこれ?双眸って感じがしないが……


 「それは、そうですよね?

 でも、なんで語るんですか?」

 ぽつりと切り出したのは、この中で唯一何も死に後ろめたさのない銀髪の少女。

 それに対し、女性は小さく笑った。

 「あまり、君達に警戒して欲しくないからね。改めて名乗ろうか、それだけで分かるだろうし。

 客員教員、メリッサ・オーリリア。専門は属性を問わない回復魔法、その例外講義。【奇跡無き救命術】だよ、今年から宜しくね」

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