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月花、或いは修業

「ロダ兄!」

 「任せなワンちゃん!さてと、避けろよ!」

 おれの背後から轟く銃声。それは3つ重なりおれの背を撫でるような音と共に飛来する。それを眼前の青年はさぁ、どう切り抜ける?

 

 「時を!」

 「止めたとしてどうする、リュウ!」

 銃弾の軌道から大体の動きを把握、愛刀を鞘に納め一呼吸。踏み込みに移ろうとする逸る気持ちを抑え……

 見えた!

 

 即座に断絶をバネに地を蹴って縮地、一気に距離を詰める!

 「ぬのわっ!?」

 横薙ぎの抜刀術、咄嗟に刹月花を構えて受けに入るが……

 「轟雷、断!」

 残念だなリュウ!使えと言われた以上、相応に加減なしっぽい動きはさせて貰う!おれ達を守る為に命を懸けたあの母狼に……託されながらも結局多くを死なせる恥をこれ以上晒さない為にもな!

 

 「ぐぎゃっ!?」

 青い火花が蒼と白の刃が打ち合わされた瞬間に散り、雪白が舞う。

 制圧の青雷を流して痺れさせた。更には体勢も力も劣るリュウの刀はあっさりとその手から弾かれて蒼刃が腹を襲う。

 

 「ぬがぎゃっ!」

 そのまま両断……はしない。当たり前だが模擬戦用のバリアがリュウを守るが、一撃で砕け散り、安全のために青年を其の場から吹き飛ばした。

 

 「……まだだろう、リュウ」

 「な、なんで……」

 片膝を付き、怯えの混じった瞳でおれを見上げる青年。おれは刀を収めつつ首を横に振った。

 「時を止めて、弾を切り払ったのに」

 「そうだな。だが刹月花は特定の相手と対峙する為に時を止める。

 おれを敵視した状態で他人と対峙できるのはほんの一瞬、逃げの心を持てば即座に解ける以上はそう大きく移動して避けられるわけでもない。

 ならば、時が飛んだ直後に仕掛ければ此方が逆に隙を突ける。強いが万能でも全能でもない、使い方を誤るな」

 「……心伝回顧、まるで彼のように言うな!」

 調子を取り戻し、青年が吠える。

 「剣兄、なんだろう?ならば今回は神器使いの先達として……おれの師の真似事くらいするさ!」

 その言葉に奮起したのか、青年は立ち上がり……

 

 飛んだか!良くやる!

 にぃと唇を吊り上げつつ、おれは僅かに鞘に納め直していた愛刀の鍔を持ち上げた。

 「これが!」

 「雷轟、壁」

 周囲へ向けて炸裂するのは、魔力をほぼ通さぬ鞘に納めることで溜められた雷、それが壁となりおれの周囲を覆う!

 小手先の防御技だ、正直ほぼ常に無敵バリア貼ってたりするユーゴ達相手には弾かれるから使う機会がまずないんだが……月花迅雷はこういう事も出来る!

 

 「ぎぃぃっ!?」

 「時を止め周囲の認識的にはいきなり状況を飛ばせるのは強いが、焦り過ぎだなリュウ。

 此方の視界から消えた瞬間に仕掛けては、当てずっぽうのカウンターが突き刺さる。一拍置いて、時を止めたから来る!という相手のカウンターを透かしてから等、ペースを作っていけ、何時でも向こうのペースを中断させて仕掛けられるのが刹月花だろう」

 うん、何というか、師匠っぽい事結構楽しいな。

 

 「剣兄超越、超えてみせる!」

 そう、師匠もこうだったんだろう。結構厳しい事言っても何とか喰らいつこうとするって、相手していて面白いところがある!何処まで行ける?刹月花素人で、パチモノとの戦闘経験から玄人ぶるおれをどれだけ超えていく?

 

 「超えてみろ、リュウ!」

 痺れからか正眼に構える刃先がブレている青年を見つめておれは答え……

 

 いや、治ったか。相手は誰だ?生ける屍と思っているから一応敵視出来そうなラーワルか?

 分からないが、呼吸を整える為に時を止めたのはアドバイスを上手く使っている。

 おれは刹月花と対峙したことがあるしいっそ師匠に頼んで持ってきてもらおうかと思って活用方法模索していた時期があるから対処できてるだけ、初見では一瞬で上がった息が整って万全の呼吸に戻ったら面食らうだろうしな。

 

 そうして、暫くリュウに稽古を付け……

 「これ、で!」

 「雪那っ!」

 構えた月花迅雷を手から弾かせた瞬間、魂の刃を突きつける。別に刀持ってたら使いやすいってだけで最悪素手で振れるからな。

 当てたら傷付けられるから、あくまでも寸止めだ。

 「……最後に一つ。神器は強いが、戦っているのは神器じゃない、己だ。頼り過ぎるな、全てを使え」

 「敗北理解。負けだ、剣兄」

 それを受けて、ラーワルから新しいカードを投げられて何度でも向かってきた青年は肩を竦めて己の刀を鞘に納めた。

 

 「そうだな、今回はおれの勝ちだ。今度もし模擬戦するならば、月花迅雷のみに気を取られすぎるなよ?雪那なら師匠から習って使えるだろう?」

 そう告げて、おれは手元に呼び戻した愛刀を鞘に納め、以降の模擬戦で使う気はないとばかりに抜きにくいよう背に背負う。

 

 「さて、と」

 ふらりと倒れかける青年に肩を貸し、周囲を見れば……

 「えーと、何というか長時間というか激戦というかコレ模擬戦?っていうかルール無視して勝敗決着後やり合ってた戦いも終わった事だし、此処で一旦しゅーりょー!」

 良く通るリリーナの声が響いたのだった。

 

 ん?待てよ?これおれラーワルとリュウで2戦しかしてなくないか?理論的に上位分のポイント取れなくないか?

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