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仮面、或いは留学生

「ようこそおいで下さいました」

 「お、おいで下さいましたー?」 

 おれに合わせてちょっぴり調子外れのリリーナの声が響く。

 それを横目にまあそこまで礼儀をしっかりして無くても良いしなと思いながらおれは頭を軽く下げた。謝罪ではなく歓迎だから大体30度、深々とまではいかなくて良い。

 横でリリーナも合わせ、ツーサイドアップが揺れる。

 

 ……うーん、一言良いか?

 お前も頭下げろよエッケハルト?

 

 そんなおれの無言の視線に気が付いてか気が付かずか、炎髪の青年は我関せずとばかりにこちらを睨んでいた。

 いや、悪かったとは思うが、仮にも西方からの留学生だぞ?学生達で迎えてくれと言われた時、一応皇族のおれ、一応貴族で聖女なリリーナ、とくれば適任お前なんだよ。いやガイストでも良いけど。

 

 そうして顔を上げれば、其処には二人の人間が立っていた。

 いや待て、二人?この時期に留学してくるキャラ二人も居たか?いや居ないはずだが……

 リリーナ(エルフの方)はまた別換算。彼女はサルースがグリームニルに乗っ取られてなければエルフの森から出てきて学園に混じろうとはしなかったろうから。混じる気なら多分1年の頃から居たし、そのパターンがあの娘が聖女やる世界線だろう。

 

 だが、眼の前の二人は知らない。

 いや語弊があるな。片方は知っている。散々話題にした彼だ。魂の妹よ!と言ってくる危ない雰囲気のお兄ちゃん。今もビビッと来たのかリリーナを眺めて頷いている。

 ……原作通りとはいえ人選間違えたか?アナに来て貰うべきだったか?とは思うが便宜上あっちは聖教国の聖女だから、帝国として語る場にはお出ししにくい。


 だがもう一方、仮面の方は……

 

 何かを言いかけるリリーナを制し、なんだコイツって眼のエッケハルトに任されて、おれは口を開く。

 「私は帝国第七皇子のゼノ。此方の桃色の髪の方は御存知でしょうが天光の聖女リリーナ・アグノエル子爵令嬢」

 相手の出方を見るために一拍置いて、言葉を続ける。リリーナのところでへーというように眉が見える方の表情が動いた。確かにゲーム通りだろう。ヒロイン紹介の時に立ち絵の表情変わってたはずだ。

 

 もう片方は……本当に何考えてるのか分からない。顔を大きく覆う仮面のせいで口元しか見えない。

 「そして彼が我が国の中では特に外交に携わりがちなアルトマン辺境伯」

 脇腹を小突かれる。

 

 がお前が一番なんだよ、辺境伯だから他国との折衝に良い感じに地位高くて……。恨むなら今もヴィルジニーとの縁を絶ってない自分を恨め。

 ……アステールとの縁を切りきれなかったおれ自身に返ってくる気がするので止めよう。

 

 「これ以上結構。魂の妹の所在は?

 (リュウ)・フィエーヤだ。リュウで構わない。そして」

 「その護衛のモノだ」

 「名前は」

 思わず少しだけ語気を強める。


 「すまないが、普遍的な人たるとしては君ほど人を萎縮させる醜い傷を晒す気にはなれぬのだよ。人は誰しも傷を持ち隠したいと思うものだ、このままを許してくれると有り難いのだがね」

 が、青年らしき声で金髪仮面は躱してくる。

 

 「いや、魂の兄弟以外、言葉は必要!」

 と思いきや、救援は変なところから出た。

 「仕方あるまいよ」

 仮面の男は、己の着込んだおれに少し似た礼服の袖を振って肩を竦め応えた。

 西方だからな。西方出身の師匠から貰ったおれの服とデザインは似ている。着物みたいなもので着こなすには慣れがいるから割と西方の人なんだろうなぁというのは分かるんだが……

 

 キリリと痛む肺。甘すぎる毒が教えてくれる。

 そう、コイツ……おそらくは敵なのだと。いや敵じゃないな、シュリを巻き込む言い回しだ。

 言い直せば、混合されし神秘(アルカナ・アルカヌム)の切り札(・アマルガム)の一員だ。おれに与えられたのと同じ三首六眼の眼の一つを持つ幹部格。

 

 ……大体それっぽい相手は見つけているし空きからして恐らくは、【嫌悪(ビーバッア)】。下門が己と引き換えに葬った筈の力だ。

 下門の死をどんどん無意味化されているようで嫌だが、まあ言っても仕方ない。シュリでも問い詰めたいがそう思ってる時に出てきてくれないのがあの銀龍だ。自分から怒られに来る程のやらかしがあればひょこひょこ出て来るが。

 

 「この身の名などよりも覚えて欲しいものはあるのだがね。

 仕方あるまい」

 あまり残念そうでもなく、男は口を開いた。

 「この身の名を久世(クゼ)。久世・ラーワル。護衛すべき主君とは違い、呼び名は何とでも構わんよ」

 

 「クゼ殿……名乗るのをまるで【嫌悪】していたかのようだ。教えてくれる方が此方として有り難い。同じく歓迎するのだから」

 「その語り口、か弱き只人には【勇猛】に過ぎるよ」

 思わず口をついた言葉に返され、確信する。

 この仮面は、似て……無いが同じく仮面のグリームニルと変わらず、自覚のある六眼の一人だ。

 能力は不明。いや、何となく分かる。下門の《独つ眼が奪い撮る(コラージュ)は永遠の刹那(ファインダー)》のように認識に干渉してくるだろう。【嫌悪(ビーバッア)】な事まで明かされたしな。何かを嫌悪し、それを認識を変えて否定する力になっていると思いたい。

 

 となると、ここまではほぼ下門がやってるのと同じこと……

 「ゼノ君ゼノ君、受け答え止まってる止まってる」

 「すまない、有難うリリーナ。

 申し訳ないお二方、案内に様々考えを巡らせてしまった。聞きたいことはあるだろうか?」

 目を開き、せめても顔を取り繕っておれは告げる。

 

 早い、早すぎる。もう少し襲来を待ってくれても良いだろうに。

 「ラーワル?余は魂の妹の存在を。

 何処だラーワル?」

 ……分からないのは此方だ。何だかカタコトで偉そうでストーカー、そんな異国の皇子様のリュウ。原作と違うから此方がと思いきや、この言い回し的に魂妹が居ると他の転生者に吹き込まれたからなんか違うパターンな気がしてしまう。


 「失礼ながら魂妹とは?」

 「我が魂が求める者」

 「恋人じゃないんだ言い方……」

 「無論!魂の妹は永遠の絆、脆くはない」

 うむうむと頷くリュウ。おれに似た西方の和装特有の男でも結われた髪が揺れた。が……

 原作だとリリーナに反応するんだがな?

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