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白桃色の来訪、或いはボケ

「ふぅ」

 と、ノア姫の採点を手伝うのを終えて一息吐く

 魔神剣帝、復活編。あのシナリオが上がってこないと練習も何も無いし、暫くは護衛と修業以外暇なんだよな。

 いや、頼勇達のフォローが出来たら幾らでもやるんだが、おれが居てもアイリスが撫でてとおれの膝の上に座りたがる以外にやることがないし、毎日行ってもしょうがない。おれは椅子かって話だ。

 あと、修業もな……。昔なら兎も角、尽雷の狼龍の圧倒的な性能(ゲーム的に言えば、おれの素ステよりあいつの補正値の方が多分遥かに高い)にものを言わせて何とか食らい付いていくって状況で、おれ自身の能力値ってどの程度意味があるのだろうって思ってしまうのだ。

  

 そんなことを思いながら、おれは教員やってる兄から貰った護衛用資料……という名の各班の内訳と現状の出店内容、そして使いたい教室の申請一覧を眺めていた。

 うーん、例年喫茶店とか、そういった店が多かった印象があるが今年は例年大体決まりだしてる頃の割に凄いスカスカだ。本当に当初は聖女様と一緒に希望してたからまだ決めてない奴が多すぎだろ、どうなってんだよってレベル。

 決まってるのなんて、休みは王都から離れた家に帰るからって層の展示や、シルヴェール兄さん保護下の芸術家肌の人間がやろうとしてる自作絵画展のブースくらい。例年決まってる音楽絡みのスペースすらスッカスカなのは流石に失笑ものだ

 あれか、アナは聖歌とか歌うから自分達と一緒にって奴か。希望的観測過ぎる。

 

 「真面目なのはアナ達当人と、後は帰る組だけかぁ……」

 基本的に学年ごとに分かれるから、次に三年になる層は聖女と班を組む事は有り得ない。とはいえ、本来この先沢山交流するだろう方が優先ってことで、彼等現二回生はまだ入れてないし、そこは別枠。

 

 と、眺めていたら不意に資料が風に揺れた。

 「よっ!で、ワンちゃん自身は何をやるんだ?俺様にも教えてくれよ」

 ……目線を上げれば、やはりというか当然というか、其処には白桃色の髪をした青年が立っていた。

 

 「ロダ兄。何処へ行ってたんだ」

 おれが帰ってみれば、宴は終わりさ!ととっとともう立ち去って元々のやることに戻ってたと聞いて、以来行方知れずだった男の姿におれはそう目をしばたかせる。

 

 「ああ、あれな?一旦終わったから帰ってきたぜワンちゃん。

 んで、試験受けてた」

 そう、ロダ兄って試験免除勢じゃないんだった。

 そう思っておれは一瞬不安になるが……

 

 「ま、縁も点も同じ、気楽に行こうぜワンちゃん?」

 その言葉にそうだなと頷く。

 そう、リリーナ編ではもう一人の聖女編でのおれに当たる救済枠とまで言われる彼、大体どんな授業カリキュラムでも関係なく好感度上がるように出来てる。まあ、そこまで授業風景がある訳じゃなくてゲーム的には組んだカリキュラム次第で一年の合間合間にイベントが起きたり、ステータスが上がったりするくらいなんだが……簡単に会えるってのは、幅広い授業を取れるって事。ああ見えて大抵の授業は大体分かるぜ?ってケラケラ楽しそうに合格していく。おれより数段頭の出来が良いんだよなロダ兄。

 

 いや、当たり前か。今こうして笑ってる当人、本来の彼が演じてるアバターだものな。アバターだからある程度分身して操れるってトンデモ能力、あれ自分の頭で全部処理してるんだから天才で当然。

 

 「んで、試験を終えたら既に祭の気配は始まってたって訳よ。いやさ、俺様とはいえ、あんまり無理に後から入るのは雰囲気悪いだろ?」

 「いや、ロダ兄なら……」

 言いながら思い返す。彼が来たのは3ヶ月ほど前。奇抜だし亜人だしぱっと見近寄りがたい……って雰囲気が払拭される程の時間はまだ経ってないか。

 ゲームでも当初は気楽に誘えるんだよな、学園生活後半になるとモテるようになるのか先約があってな、別の日になんぜ?とかそういった話が出始める。で、一応ルート入ればそりゃワンちゃん最優先だろ?って向こうを断るようになるが……そこまで行ってからデートしてもゲーム的には無駄行動でしかないからあんまり見ないんだよな、あの台詞。

 

 「はーっはっはっ!新たな縁も良いが、覆水盆に帰らず、腹心本当に返さずってか。楽しめる時に、縁を深めるもまた一興、だろ?」

 楽しげに目を細めて扇(多分そこら辺で拾った大きめの落ち葉)を仰ぐ青年に、おれは頷くしかなかった。

 

 「んでよ、じゃあワンちゃんとだろ?他にも色々と」

 「ん?アナ達なら皆おれや他の仲間にも当日楽しんで欲しいからって大概バラバラの班だぞ?」

 「おっと、夜道は怖いな」

 「読み違えたのか、ロダ兄」

 「んま、誰か居るだろ?って話は俺様大前提にしてたってこったが」

 

 と、おれの袖が引かれた。

 「あら、ワタシじゃないわよ?ワタシは最初から主任に頼まれているもの、弟を支えてやってくれないかな?って」

 「いや何を頼んでるんだシルヴェール先生」

 そして、それが助かるから否定できないのが悔しいところだ。

 

 「ま、そんなの言われるまでもないから無視してるのだけれど、それはそれとして顧問代わりはやってあげる。

 でも、今はそんな当然を語ろうとしたのではないわよ?」

 くすりと笑うエルフに、ちゃんとおれは袖の下を見れば……

 

 「お兄、ちゃん……手伝い。ま、す」

 「いや駄目だろアイリス!?」

 オレンジの猫ゴーレムが爛々と目を光らせ、ついでに爪も発光させていた。

 「……どう、して?」

 「アイリス、お前の入学は来年度だ。つまり、新入生になる側だ。それが新入生歓迎の学園祭で出し物してたら伝統が色々と台無しだ。今回は我慢してくれ」

 「ふしゃーっ!」

 「吠えるなアルヴィナ。お前も学生じゃないから有り難いが駄目だ。当日外来枠でアナやおれと一緒に回る分にはノア姫やシルヴェール先生が手回ししてくれるから、その時に存分に遊んでくれ」

 二人して出てきた助かる問題児を片付けてしまうと、これでもう居ない。

 頼勇と桜理は帰る人々の展示班だし、アナとリリーナ嬢はそれぞれ当日はそこまで忙しくならない何かをやるらしく、ガイストはリリーナ班、って感じで……

 

 が、その瞬間、扉がバァン!と強く開けられた。

 「あ、あの……僕も」

 「おいゼノ!いい加減呼び戻してくれよ、遅れかけただろ!

 アナちゃんメイド喫茶!」

 「色んな意味で出来るかボッケハルト!」

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