表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

552/685

驚異の力、或いは銀腕の機械神

空へと浮かび上がる銀の巨神。合計五本の角(今のおれの角と同じく途中で枝分かれしているから)からなる一角獣のような突き立つものと左右後方に流れるもので三本の紅のブレードアンテナを備えたヒロイックな顔立ち、骨格だけだと思わせる子羽根が外に向けて展開する内外入れ替えられたようにも思える翼、そして明滅するオレンジラインを持った巨大な銀腕。

 

 ほぼエネルギーが尽きた状況ですら圧倒される存在感が、力の輝きを纏って空へと舞い上がってくる。

 

 おれの10倍はあるその巨躯、特に特徴的な両腕を見据えて内心で反芻する。

 桜理が教えてくれたが、両腕にはそれぞれエンジンが搭載されている。

 一つ、右腕に存在するのが縮退炉。そしてその内部に仕込まれた時空流転装置(タイムマシン)。こいつだけは十全に動かせない状況に追い込まなければならない。そうしなければ、一瞬時を戻してコマンドを使用する前にされてしまうだろう。

 そうなれば詰みだ。時を越えられないような状況が必要。それこそ、右腕を破壊するとか……。まあ下手に落とすと縮退炉、つまりは核融合によるブラックホールエンジンが暴走して周囲一帯が呑み込まれてしまうので安易に壊せないが、そもそも安易な一撃で傷付くほど脆くもない。

 そして左腕が今回狙うもの。アステールを閉ざした柩は左腕にある。そして周囲にはもう一つのゼーレも。死者の想いを雷に変えるチャンバーはあそこだ。此方は破壊の必要はないが、アステールを引っ張り出すまでは逆に破壊しちゃいけない。アステールを殺すことになるから。

 そして中央、胴体のコクピット近くにはレヴシステムが搭載されているが……それは魂の柩から中身(アステール)を引っこ抜けば制御を喪うから脅威度は低い。ゼーレ・コフィン無しでも動かせるが、大きく暴走させないでいられる稼働率は落ちる。

 

 だからまずは!右腕を落とす!そしてコマンドでアステールを左腕から引っ張り出して救出、然る後に最初に出会った時並にエンジンを喪ったあいつを撃墜する。

 その最中、何時頼勇が間に合うか……これはかなりの賭けだ。最初から呼んでいればユーゴに警戒させてしまう。かといって安心させた後時間稼ぎし過ぎればそれはそれでバレかねない。遮二無二やるしかないのだ。

 それを悟られるな、本気で……

 

 「バァルカン!」

 そんなおれの思考を引き裂くように轟音と共に銀神のブレードアンテナの下部が煌めく。其処に仕込まれているらしい小型(といっても巨大なロボット基準なので口径は恐らく50mmはあり対物ライフルの良くある12.7mm口径を遥かに越える)のガトリング?砲から無数の弾がおれを襲う!

 咄嗟に右翼をブースト、左翼で慣性を制御して捻じ曲がった乱雑な軌道を描いて飛翔するが連射性に優れた銃撃はそれを追って次々に飛来すると地面に着弾、光柱を上げて其処に大穴を残す。二三発当たっただけで建物が瓦礫すらほぼ残らず光柱と共に砂塵と化す脅威の威力を避けて更に旋回し……た瞬間、弾の嵐が止んで急制動。

 

 何かと思えば、何時しか人々を背にしていた。

 そうか、流石に味方混じりの民衆を跡形もなく消し飛ばす気にはなれずに射撃を止めたか……と思った刹那、反対方向に転移したアガートラームがやや下方から更にバルカンを撃ち上げてきておれは更に空へと舞い上がった。

 

 「滅茶苦茶な火力を……」

 「ガトリング!ミサァイル!」

 「言わせて欲しいもんだ!」

 ブレた瞬間、銀のカミの眼前には何処から取り出したのか巨大な四角いミサイルポッドが出現しており、其処から55発のミサイルが一斉に空へと放たれる!

 ってこれ、ATLUSもやってたブラックホールからの武器召喚か!アホみたいな火力してやがる!

 

 こんな過剰戦力でおれと戦うとか元々何想定してたんだ。いやシュリというかアージュみたいな世界を滅ぼすカミの眷属にされたバケモノなのは知ってるが!実際に対峙すると驚愕の火力に畏れ戦く!

 対峙した瞬間は恐ろしかったし、今でもそいつを継いだおれ自身のこの力が怖くなるが……ALBIONって本当にまだ抑え目の性能してたんだな!?

 

 「まだまだまだまだぁっ!!」

 更に第二波、三波と放たれてくるミサイルの雨。もう冗談かよ!?としか叫べないが……

 

 「舐めんな、ユーゴぉっ!」

 遥か上空、雨雲すら突き抜けた瞬間に反転、針のように尖りきった軌道を描いて全身全霊で急落する。流石に全ミサイルの波状攻撃を耐えるのはおれには無理だからこそ、数発だけすれ違いざまに切り裂いて、後は空に置き去りにする!

 

 そして!

 「っ!はぁっ!」

 シュリからもらった剣翼の軌道には粒子(シュリは自前の毒を撒くっぽいが、おれのそれは精霊結晶の粒子だ)が残っており、それに触れたミサイルは誘爆。4波、累計220発のミサイルが犇めく空では完全に巻き込まれ事故を防ぐなど到底出来ず、一発誘爆すれば次々と爆発していく。

 が、全ては落とせない。ならば更に!

 

 「超超重豪断!オーバーブラスト・パニッシャァァァッ!」

 そんな思考もミサイルの爆光で照らされた夜空も引き裂いて、全長1……最早見えない程の巨剣が逆袈裟斬りにおれに迫る。

 全く、ATLUSは1.5kmの剣を重すぎて振り下ろすだけだったってのに、その何倍ものデカブツ斬り上げて来んなよな!?

 

 「だが、流石に!」

 剣圧だけで乱気流が発生して、普通の飛行物体ならばまともに回避も出来ないだろう。だが、流石に聖都の直径すら優に越えるというか、下手したら地上から振って成層圏届きそうなアホみたいなデカさの剣とはいえ、(くう)を支配するカラドリウスの力を借りた今ならば!その圧を超えて動ける!

 

 が、その瞬間に嫌な予感と共に足元を通りすぎていくもう幅数百mあるだろって剣の腹から目を逸らしおれは天空を見上げる。

 「十!紋!逆鱗断!」

 果たして、やはりというかおれの頭上数百m先に転移してきていた白銀の巨大機神が、その己がまるで人の指先に載せられた米粒にも見えるような巨剣を振り下ろしてきていた。

 

 「っ!避けっ!」

 刹那、おれの周囲全方位に発生するブラックホール。剣圧で爆発していくミサイルの15発くらいが瞬時におれの周囲を覆い尽くして炸裂する!

 「っぐっ!?」

 この身の精霊結晶の性質はほぼアルビオンそのままだ。回避の為の防壁に近く、全てを受けきることは出来やしない。

 咄嗟に幾つか切り裂いて爆発の威力は弱めて離脱するものの、左右の翼に大きな衝撃と共にミサイルに搭載されていたろう毒と金属片が無数に突き刺さって加速を妨害。

 「獅童君!」

 その瞬間にどうしてかそんな言葉が聞こえた。そう思った時にはおれはその言葉に後を任せて翼から力を抜き……

 

 超高速の重力加速に逆らわずに引っ張られ、肩から大聖堂に墜落した。

 

 ……すまん始水、余波で神像とかかなり吹っ飛んだ!

 『良いんです兄さん!無事ならばその方が重要です!』

 「っていうか思わずやっちゃったけど大丈夫獅童君!?君に意図した通りに効くのって害ある魔法だけだから、思わず墜落の重力魔法唱えちゃったけど」

 「いや、助かった桜理!」

 叫びながら瓦礫の中から身を起こし、空を見上げる。

 おれを追って降り注いでくる都を縦に両断出来るだろう巨大な鋼剣を迎え撃つように何頭かの飛竜が空を舞い、その背の騎士達が合唱して大きなバリアを貼る。それが何重にか重なって……

 最初三枚を紙屑のように破壊したところで剣は止まり、消え去った。

 

 流石にユーリ達ごと両断はしてこないか!まあ当然!

 

 だがどうする!?想定してはいたが、やはりというか流石の対神話超越の誓約(ゼロオメガ)として造られた銀腕の巨神、想定内と言って対処しきれる程度の能力はしていない!

 想定外規格外のバケモノだってことだけが想定内。勝ち筋は……これならと託した一縷の希望すら通じるか未知数。

 

 「はっ!お前から降りて休んでんじゃねぇよ獅童!

 お前に赦したのは、冥界への墜落だけだ!」

 天空から降り注ぐのはそんな拡声された怒号。

 「悪いがこの世界に冥界なんてないぞユーゴ!諦めろ!」

 空元気と共におれは突き刺さった破片を無理矢理にエネルギーを暴発させて吹き飛ばし、再び空へと舞い上がった。

 

 「人混みに紛れろ桜理、周囲から人が消えたら狙われる!」

ちなみにネタバレすると、アガートラームにはちゃんと今章の中で勝ちます。別に負けて再戦とかありません。ある程度安心してお読みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ