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尽雷、或いは脅威の狼龍

本日二度目の更新です、何か話が飛んでる場合は前話をご覧ください。

ユーゴ君がフルボッコされる回、前編です。

『銀河の果てに放つ!光り唸れ銀河』

  響くのは幼馴染神様の朗々たる声。

 『煌めく星々の祈りを束ね!』

 轟くのは遠き祖先の声。

  『気高き雷、勇気を紡ぎ』

 叫ぶのは下門の、二度と聞けない筈の声。

  『星龍と共に我等は往く』

 吟うのはアルデ、誇りを語るように、あの最初に出会った日からは想像もつかない凛とした声が響き渡る。

 『輝け、流星の如く』

 そしてこれは何時ものようにちょいテンション低いアルヴィナ。うん、混じってくるか。

 『「愛!勇気!誇り!大海!夢!魂を束ね紡ぎ、創征の銀河へと」』

 おれに合わせ、シロノワールが歌い上げる。まるで、親友を代弁するように。

 

 ふわりとおれの肩に翼のマントが出現すると、ありもしない風を孕んで大きくはためく。

 『「(GONG)を鳴らせ!」』

 一瞬、おれと帝祖皇帝の想いが、声が交差した

 『『スカーレットゼノンッ!』』

 神と祖、二つの大いなる存在の声が一つとなって、

  「アルビオン! 」

 先祖返りで狼耳の生えたおれの身に尽雷の狼龍は君臨する!

 

  『『The dragonic saber with you

  Are stars to bright and realize

  Words to Vanguard Worlds』』

 ……あ、アルヴィナ今回はちゃんと歌えたのか

 変身音完全発動、咄嗟の何事も無く、太陽の剣は益々光を増しながら、おれへと放たれるのを大上段で待ち続ける。

 そして、前と違い……

 

 「勇猛果敢(ヴィーラ)ッ!」

 雷炎の実体の無い右翼が霧散し、シュリのものと瓜二つのブースターウィングへと生え変わる。

 そう、"生え"だ。魔神への先祖返りの際に、アルヴィナ達ニクス一族の血脈の証である耳の他に、シュリのヴィーラたる証として翼も生えるようになっているのだ。片方だけだがな!ついでに耳の横から銀に途中から跳ねた節だけ朱い双角まで生え、既に無い左目に黄金の焔が燃える!

 

 「っ!?それが!」

 「そう、魔神龍帝!スカーレットゼノン・アルビオン!!」

 「でも、出落ちではなぁぁぁっ!

 エグゾースト・サンライズ・ガラティィィンッ!」

 完全におれの周囲に勝手に発生していた雷が消失した瞬間、銀白の仮面騎士は天へと掲げた煌めく巨剣を振り下ろした。

 

 刹那、放たれるのは光の奔流。極太のビームソードってところだろう。

 だが!

 「ドラグハート・アロンダイト!」

 おれの背中にあるのはブースターが連なったようなシュリの翼と、展開されたカラドリウスの翼!右翼は節を伸ばせば半ば剣のようにも使えるんだよ!そう、あのアロンダイト・アルビオンのように!

 

 ガラティーンとアロンダイト、おれ達が勝手に呼んでいるだけではあるがある種因縁の相手となる円卓の騎士二人の愛剣の名を冠した二つの剣がぶつかり合い……

 「伝、哮、雪歌ぁっ!」

 光の剣を前方へと一節を拡げた吹き荒れる青光でブーストした銀翼剣で突っ切りながら、雷光と共に更に加速!

 

 「聴け、尽雷の咆哮を!」

 「っ!」

 分が悪いと見て取ったのだろう、パワードスーツの背部ブースターを噴かせて天へと逃げるユーゴ。だが、前は逃げられたとして……

 今のおれは、空くらい好きに飛べる!

 

 「っらぁ!落ちろユーゴ!」

 迎撃を諦めて光剣が消えた瞬間、剣翼の外節を背中に戻してシュリが何時もやってる完全なブースター型へと変形!

 見たものは蒼光が夜空を切り裂いたと思ったろう。飛び上がるユーゴを軽く追い抜いて天へと飛翔したおれは、一気に展開される青き結晶のバリアごと、後を追ってくる形になった青年を踵落としの要領で蹴り落とした。

 そう、固定されるものがない空中という場所では精霊結晶による障壁で攻撃を受けた時、吹き飛ばされるのまでは防げない!

 「うげらっ!?」

 せめてもの抵抗として遮二無二振るわれるガラティーンだが、まるで届かない。光剣こそ発生するが、裏拳で軽く砕ける程度のエネルギーだ、脅威にはならない。

 

 「迅雷!」

 「いっ!?」

 そして、左翼の風でもって慣性を殺していたおれは、さっきの剣翼の要領で天へとブースター状の右翼を大きく展開、一気に地上へと墜落して納刀していた愛刀を深く構える!

 

 「ユーゴ様を」

 「行かせると!」

 それを防ごうと斬りかかってくる騎士クリスだが、騎士団長ディオの刃に阻まれおれに届くことはない。

 まあ、今のおれって普通に蒼輝霊晶発生させるからユーゴと同じバリアを一種類持ってるんだがな!攻撃してもまず無駄なんだが、止めてくれるに越したことはない。これは死んでいった者達の想いを燃やした果てにある力だ、無駄遣いなどするわけにいかない。

 

 「だから、甘いって」

 「のは、自虐かユーゴ?」

 背後に転移された瞬間、おれの右肘が青年の仮面に突き刺さった。

 

 「んぐっ!?」

 仮面を砕かれながら地面に転がる青年、フルフェイスの銀兜全体に(ヒビ)が入り、三度バウンドして頭から壁に突っ込んだところで砕け散る。

 

 AGX-ANC11H2Dの方のアルビオンはもっと硬かったぞ?と言いたくなるが、あれはまあ出力特化のAGXだし例外か。

 

 「ぐにゃっ!?」

 「バリアがある筈、か?」

 出現した狼耳の立った何処と無くディオ団長とお揃い?の兜のしたでおれは息を吐く。

 「斥力フィールドと短距離転移は同じシステムによるもの、転移の瞬間付近だけ解除される。オーウェンから聞いたぞ?」

 そして、とおれは拳を握って続けた。

 「精霊障壁は確かに凶悪な防御となるが、同じ精霊結晶由来の力でならぶち抜ける」

 そう、だからこそAGX-ANCシリーズは精霊と同じ力を求めた。効率良く彼等に立ち向かうために。

 

 「気分はどうだ?」

 「なめんにゃ……」

 ふごふごとした要領を得ない声音で答えが返ってくる。歯の数本でも喉奥に詰まったのだろうか。

 

 「少しは堪えたか、竜胆?

 あの時一回ぐらい殴ってやるべきだったのかもな」

 「にゃから、舐めんなって言ってんだよ!」

 その瞬間、彼の銀白の装甲に一点だけ見える黒点、即ち黒鉄の腕時計が輝きを放った。

 

 「っ!」

 その寸前、おれの全身はLI-OHが放つライオウアークとほぼ同質の緑色のエネルギーに拘束され、その周囲を7機のビットが取り囲んでいた。

 「これは!?」

 「時を遡り、てめぇは死ぬ!ガンビットライザー!」

 成程!と感心する。最初の時もあまりにも拳を振り下ろすのが早すぎると思っていたが……速度ではなく時間操作で攻撃を終えるまでを早回ししていたって事か!

 今回はその応用で、ほんの少し過去に攻撃したって……いや待て正気で言ってるのかこれ!?

 

 とは言いたくなるが、これも承知の上だ。というか、桜理から聞かされたし似たような事はAGX-15もやってきたからな。対処の仕方こそ分からないが使ってくることは分かってる。

 

 「終わりだぁっ!」

 「ああ、そうだな!

 おまえが!な!」

 だが、だ。後手に回って良いなら対処はしようがあるのだ。謂わばこれ、時を止められてその最中に攻撃準備を終えられているようなもの。おれからすれば突如として攻撃が出現しているようなものだが……

 そう、過去に既に『攻撃が当たった』事にはならない!ならば!

 

 キュォォォオオオオッ!という風切り音と共におれの深呼吸に合わせて両翼が唸る。羽ばたく嵐、噴き荒れる光、その二つが螺旋となって、緑色の光柱を砕いておれの体を敵の前へと運んでくれる!

 

 「ふぎゃっ!?」

 「当たる前に、お前を叩けば済むこと!!お前のカミサマと違って、隙だらけだ!」

 そのまま龍翼一閃、ギリギリで巨大剣を盾に逃げ出そうとしたユーゴを掠め……ガラティーンの刀身ごと青年の右足を半ばから切断!

 

 「んぐぎゃっ!?」

 全く笑えないが面白いほどに悲鳴をあげてのたうち回るユーゴ。

 そうだろう。どうして死んだのかは分からないが、そこそこ可愛い外見で取り巻きも居た竜胆佑胡も、産まれながらに大貴族の跡取りかつ最強格のAGXを持っていたユーゴ・シュヴァリエとしても、あまり怪我などしたことはないだろう。痛みだって慣れていない。

 だから、こうも情けなく逃げ惑う。彼にとって、反撃なんてまともにされたことがない一方的な狩り以外など……ほぼ味わったことがない未知だから。

 

 「し、しどぉぉっ」

 腹の底から出てきたような少しおどろおどろしい声と共に、青年が何処かへと消える。また性懲りも無く背後か?と今度出てきたらシュリ譲りの龍翼の先からドラゴンブレスでも放ってやろうかと思ったが、そうではないようだ。

 

 ……いや何処行った?

 そう怪訝に思った瞬間、嫌な予感と共にメイドの方を見る。

 それと同時であった。ちょっと珍しく厚手のドレスに身を包んだ染めたろう銀髪をサイドテールに纏めた豊かな胸の少女の喉をその手甲で掴んで絞め上げながら、恐らく七天の息吹で治したろう素足を晒して、銀の装甲騎士が少女の前に降り立っていた。

 

 「っ!……アナ!?」

この先が心配な読者様向けのお話


"染めた"銀髪なので首絞めされてるのは別人です。その彼女の為にアナだと嘘言ってるだけです。

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