外伝・第七皇子と聖夜の鈴(Ⅳ)
「……屍天皇、ゼノ!」
飛び散るおれの血を目に受け、力なく(人差し指がないので握りが甘い)刹月花の柄を握り、此方に向けて突き付けながら、名前も知らぬ少年は叫ぶ。
流石に攻めてはこないか。目潰しされても来れば、その首を取ってやったのに。
ところでだ、本当にそのしてんのう?ってのは何なんだ?
「アルヴィナ、わかるか?」
「分からない」
背の少女にも答えはなく。一旦忘れて相手を見据える。
睨み付けることはしない。おれがせせこましい技で目潰しを仕掛けられるように、刹月花にも拘束技……というか目潰し技はある。
確か光を雪のような刀身が集めて反射する形でフラッシュするのだったか。刀身の腹が不自然に此方を向くので予備動作を見て目を瞑るだけで回避できるが、回避しなければ一瞬視界を喪う厄介なもの。
格下相手なら皇子舐めんな案件だが、第一世代神器相手にそんな舐めたような態度は取れやしない。
それにしても刀を片手持ちだ。よくやる。
基本的におれも片手で刀を振るうことは多いが、それは抜刀術の関係だ。鞘に納めた状態からのスムーズな抜刀は片手でしか出来ない。抜刀術の破壊力、速度、そして……納刀と抜刀を駆使して闘う神器たる月花迅雷を未来で手にする可能性を見据えたが故の選択として、おれは片手で刀を振るう。
常時周囲に雷の魔力を放出しているかの神器は、刀身を鞘に納める事でその魔力を刃に溜め込み、抜刀により一気に放出することで雷撃を飛ばしたりという芸当が可能だ。原作でもゼノがやっていた事だしな。だから、月花迅雷を得た際に使いこなせるように、最初からおれは抜刀術を習った。
開発中という情報を誰かが小学校のゴミ箱に捨てていった漫画雑誌を拾って読んだ無双ゲー版でも、迅雷ゲージが時間で貯まりモーションが速い納刀モード、迅雷ゲージを消費して雷で広範囲を攻撃出来る抜刀モードを適宜切り替えながら戦うキャラとしてゼノは紹介されていた……ような記憶がうっすらあるしな。
プレイした記憶はないし、恐らく発売前におれは死んだのだろうが。
だが、普通に刀を振るうのであれば、大体の場合は片手持ちなんて選択肢に入らない。当然の話だが、刀は片手で振るうより両手で振るう方が強く握れるのだから強いに決まっている。
ゲームのステータスで考えても、両手持ちには力補正が入るから片手を空けておく必要性は普通はない。あるとすれば、片手がフリーな前提がある抜刀技を使うのか、或いは……
「そこっ!」
もう片手に何かを持つ場合!
振るう刃、翻る風。
抜刀の速度のまま空気を裂き振るう刀により飛ばした斬撃は、刀を突き付けたままその左腰のポシェットから少年が取り出そうとした小型の魔法書を切り裂く。
やはり、魔法。おれが第七皇子ゼノだと分かっていれば、忌み子と知っていれば、誰だっておれへの攻撃手段として魔法を選ぶだろう。おれが魔法の力、七大天が人に与えたもう奇跡を持たぬ呪われた子ってのは有名だからな!武器よりも魔法、それは真理。
故に、彼も刀を片手持ちしたのだろう。刹月花はあくまでも豪華な牽制、その本当の狙いは、魔法攻撃。
だが!
魔法書なんて脆いものだ。刹月花には傷一つつけられなくとも、この刀でも振り回せば魔法を扱うための文字が刻まれた本くらいは引き裂ける。
「……どんな魔法を使う気か知らないが」
相手の少年のように突き付けることはしない。威圧感はあるかもしれないが、あの体勢から放てる技には限りがある。特に、おれに使えるものにはロクなものがない。
それよりは、即座に納刀し、次の一撃に備えるが常道。
鞘に刃を納め、静かに腰に構える。居合の構え。
背のアルヴィナを考えるに、あまり派手な動きは出来ない。だが、問題は……無い!
「屍天のぉぉぉっ!」
キラリ、と煌めく光。
此方へドタドタと足音を立てて駆けてくる少年の手の神器が強い光を放つ。
灰色の空、炎までもが色づき固まった光を感じない世界に、唯一迸る輝き。
だけどな!
分かりきってれば……何一つ、問題ない!
目を瞑り、光を目蓋の表面を焼くものとして感じ……
「斬空閃!」
間合いのギリギリ外、刹月花の届かぬ距離から居合一閃。
刃渡りは向こうの方が長い。
だが!空を裂き飛ぶ風の刃。2ヵ月かけて覚えたこの技は!刃よりも長い!
「うっ!」
少年は片手に握った刹月花を振り、その不可視の刃を振り払う。
実体は無い風だからな。当たれば斬れるが、形を崩されれば崩れる斬撃。貫通もしないし、刀を直接当てるよりダメージは低い。ゲーム的には、射程が2になり(近接武器は1、弓矢等で1~2や1~3だ。弓が近接二つ分の間合いってと思うが、ゲームバランスの問題だろう)射線が通る敵を攻撃できるが、攻撃力にマイナス補正がかかるって感じだろう。そんなスキルが確か剣客って職業のスキルにあったはずだ。
おれは単純に技能として修練の果てに使えるようになったが、戦闘職業でレベルが上がれば自動でスキルとして感覚で使えるようになるんだよなこれ……と少しだけレベルシステム……ヒトを越える力への不満はあるが、それは今は良い。スキルと同じものを使えるんだから。
というか、スキルの取得条件をレベルではなく他条件パターンで満たした感じか。ゲームでも第一部の育成SLGパートで訓練してたら覚えられた筈だし。
閑話休題。
振りかぶった刹月花を防御に振るい、少年は新たな魔法書を手にして。
「唱えられるかよ!」
踏み込みながら、その手を蹴り上げる。
「がっ!」
「っらぁっ!」
交差し、着地は刹那。向こうの狙いはおれというよりもアルヴィナだ。背のアルヴィナを危険に晒してはいけない。
その意思のもと、更なる追撃は可能ではあるが、反転して相手の背を見ながら飛び下がる。
「……くそっ!屍天皇め!」
取り落とした魔法書を拾おうとしながら、呟く少年。
その手にしっかりと純白の刀は握られていて。だからこそ、気を抜く事は不可能。
止まった世界の中で動けるのは、刹月花を持つ者と敵だけ。アルヴィナが動けるのはその敵に当たるからで、おれが動けたのは母の形見……とも呼べないペンダントのお陰。今も動けるのは、刹月花を持つ少年魔神が、おれを敵として認識してしまったからだろう。
その認識を崩させるわけにはいかない。彼が一度時を動かし、そしてもう一度自分と敵以外の時を止めることでアルヴィナを殺そうとした時、おれを敵だと認識していればおれは止まらない。だから手を緩めるな。
攻めろ!
「アルヴィナ!離すなよ!」
首筋に顔を埋める少女に向けて叫び、刀を構える。
もう一度抜刀術と言いたいが、次は流石に向こうから来ないだろう。故に、此方から攻めるしかない。
そして、だ。抜刀一閃こそ速くとも、一々刃を納める抜刀術は、ワンテンポ行動が遅くなる。
その間に、おれを敵じゃないとマインドセットされ時を止められたら負けだ。1回だけならばペンダントでまだ動けるが、2回目は無い。アルヴィナは死ぬ。
そんなこと……
させる、訳が、無いだろう!
「……屍じゃない、敵じゃない、敵じゃな……」
「……おれは!アルヴィナの、味方だ!」
ぶつぶつと呟く少年の右腕を、鞘を腰に据えて空いた左手で掴み、腹を蹴る。
「けふっ!」
取り落とされる刹月花。それを刀で絡めて背後に投げ飛ばし。
「っ!」
振り上げた刀を返す刀で振り下ろす。
「うわぁぁぁっ!」
「ちっ!」
だが、第一世代神器たる純白の刀は、何時でもその手に舞い戻る。次の指を落とす前に、奴の手には再び刀が握られていて。
「甘いっ!」
思わず受け止めるように翳された刀身を掠め(その手は悪くはない。神器と打ち合えば、あっさりと此方の刀は折れるだろう。それくらいに、武器としての差は大きい)、強引に軌道を変えながら、おれが狙うは少年の左手。
「いいぃぃぃっ!?」
軽くはない感触が右手に伝わる。
何度も感じた、重い感覚。肉を断つ感触。土着の魔物相手に、幾度やっても慣れない重み。
ぱっ、と、紅い華が咲く。
「指が、指がぁぁぁぁっ!」
左手の人差し指から三本、その第一関節から先を斬り飛ばされ、もう一度刹月花を放り投げて、少年はその場に踞る。
……弱すぎる。
鞘に刀を戻しつつ、自問する。
それに、だ。紅い華?鮮やかな赤い血?
可笑しい。おれがさっき見た少年の血は、確かに青かったはずだ。だからこそ、おれは奴が魔神、原作ゲームで戦う、おれたちの敵だと信じて……
振り返る。
寒空の下、止まった時の最中に落ちる少年の右手人差し指は……確かに赤い血を流して、其処に転がっていて。
「っ!精神、汚染……」
何時からだ。何時からおれは、眼前の少年を魔神と思うように誘導されていた?
あの時、【鮮血の気迫】が発動したのに、何故其処で気が付かなかった?
何時から、何処からおれは間違っていた?
きゅっと、全体重をおれに預ける少女に、アルヴィナだと思っていたのが既に違ったという事はないのだ、と安堵して。
……では、何故?
本当の敵は何者で、何故奴が刹月花を持つ魔神であるかのように誤認させて少年と戦わせた?そもそもあの刹月花は、本当は何だったんだ?
そんな疑問から、落ちた刀に視線を向けて……
「がっ!」
刹那、おれの体は氷で出来た鎖で宙に縛り上げられ、アルヴィナは背から放り出された。
……フロストチェイン!拘束魔法の一つか!
やられた!か弱い人のフリで、おれの意識を反らさせたのか!
歯噛みするももう遅い。
「……皇子?」
「アルヴィナ、逃げろ!」
魔法に対して一切の耐性がないおれは、拘束魔法から逃れる術はない。だからこそ気を付けるべきで、故にこそ一歳下の子供相手に1vs3というおれ有利のハンデ戦で勝率8割前後というゴミカスみたいな戦績を実戦で克服すべきだったのだ。
悔やんでも、既に意味はない。
「……はあ、はぁ……」
息を切らせ、少年が立ち上がる。
「ざまあみろ、屍天皇!」
……胸元で微かに起動の兆しを見せるペンダントに、ゆっくりと首を横に振る。
このタイミングでもペンダントの力ならば拘束魔法を解除できる。合成個種と戦ったときにはアイリスに火急だと思わせるためにアイリスのところに置いてくるようにレオンに頼んだから使えず、ゴーレムの時はゴーレム作成は魔法ながらゴーレムの拳は魔法ではない為効果が無かったとはいえ、おれにとっては一つ切り札だ。
だが、それではいけない。おれがやるべきことは、皇族の使命は、民を護ることだ。自分を護ることじゃない。
だからだ。拘束は解除しない。あと一度の切り札は、本当に必要な時まで温存する。
例え……
「死ねっ!」
「がっ!」
振り下ろされる刃。
純白の刀身がおれの赤い血に濡れ、そして……浄化されるように溶け消える。
胸元に走る浅い傷。一撃での致命傷とはいかず、向こうも本気は出していない。
というか、指が足りずに本気を出せないのだろう。おれを斬りつけたその刃が、4本の指で握った右手からぽろりと零れ落ちる。
「よくも、よくも!屍天皇!」
「……」
静かに、拘束されたまま、少年の拳を頬に受ける。
痛みは軽く。おれ自身多少人外の自覚はあったが、それでも痛いものは痛い。
「このっ!このっ!このっ!」
刹月花ではなく、己の拳を振るう少年になんだこいつと思いつつ、ぺっ、と折れた前歯を一本少年の顔目掛けて吐き出す。
……そうだ。乗ってこい。
……忘れろ、本来の目的を。
アルヴィナを探す間に時を止める程の特異な力の発動を観測した騎士団が駆けつけてこれるように、アルヴィナが何処かに隠れるまで、おれで遊んでろ!
「……くっ!第七皇子を、こんなにしやがって」
それに虚を突かれたのか、少年は手を止め、そんな事を呟く。
いや待て、こんなにも何も、攻撃しているのはお前じゃないのだろうか?という疑問が思わず出かけるも、彼の中では別のストーリーがかんせいしているらしく、天を向いて吠える。
「許さないぞ、屍の皇女アルヴィナ!」
……どうでも良いが、その屍の皇女ってカッコいいな、なんて場違いな事を思う。
彼の中では一体どんなストーリーが成り立っているのだろう。アルヴィナが敵で、魔神王の妹で、屍の皇女。
ならばおれは、原作では因縁(主におれが相討ちで倒したり負けたりする)の暴嵐の四天王カラドリウス等のように、アンデッド化した第七皇子か?四天王ではなくアンデッド時は屍天王とか揶揄されていたし、おれもそれに含まれてるのか?
だが、その咆哮で、少年は冷静さを取り戻してしまったらしい。
おれを捕らえた魔法はそのまま、彼はおれに背を向ける。
「……第七皇子。おれが、奴を……屍の皇女を滅ぼす。
だから、安らかに眠ってくれ」
……いや、別におれは死んでない訳だが。安らかにも何も、本当に何を勘違いしているんだこの少年は。
というか、言動を見るにある程度ゲームをやっていた転生者は彼自身のようだが、どうしてアルヴィナを魔神王の妹と勘違いしているのだろう。確かに、グラフィックは黒塗りのロリリーナではあったけど、魔神には魔神の特徴とかあるはずだろうに。例えば、角とか。
実際、あの黒塗りグラフィックにも角のような出っ張りはあった。だが、アルヴィナにあるのはケモミミだけ。帽子で見えなかったから勘違いでもしたのか?
「……だから」
顔をあげる。
……アルヴィナはまだ、其処に居る。
ああ、おれは魔法なんて使えないから刀一本で。けれどもアルヴィナは違う。
護身用だろう簡易な魔法書を構え、何かを唱えている。
……無駄だ。あの少年はおれじゃない。おれとそう変わらないステータスだが、おれじゃないのだ。
だから、普通に恐らく魔法防御力を持つ。神が与えた奇跡は、同じく神の力を持つ者達にだけは効きが悪い。
……だからアルヴィナ、そんなことせず逃げるべきだ。
「刹那雪走!」
純白が煌めき、一瞬だけ音を取り戻した世界は、刹那の先に再び動きと音を喪う。
……あくまでも刹月花の届く距離。隠れられず、見えぬものを標的にも出来ず。故に隠れて震えていれば、発動を許さず時間を稼げる時間停止。
何者にも邪魔されぬ決闘の場。アルヴィナを処刑するためだけの、たった二人の時間。
おれの体も、心も、雪の光の中に時を埋もれさせて凍りつき……
アルヴィナの声が、聞こえた気がした。
おれには届かない言葉。自分を鼓舞する言葉。
けれどもその唇の動きが、おれにアルヴィナの思いを教えてくれる。
……情けねぇ。
心に、火が点る。
凍え凍てつく心を、その火が溶かす。
もう、少年はおれを見ない。静かに、アルヴィナへと向かう。
一刀両断だろう。刹月花でその首を掻く、それだけで、アルヴィナの命は吹き消える。ステータス差とはそういうものだ。ステータス差がありすぎれば、かすっただけで耐えきれずに消し飛ぶ。この世界はそういう世界だ。
……それでも。
そんなこと分かってるだろうに、少女は立ち向かおうとしている。
ボクが、まもる、と。
ああ、情けない。お前は誰だ?おれは何者だ?
護るべき者に護られて、満足か!第七皇子!
ペンダントが燃える。最後の力を使い、灰となって燃え尽きてゆく。
だがそれで良い。同時、心も時も埋もれてゆく雪は溶け、体に熱が戻る。
……動く。
少年は、アルヴィナの前に辿り着く。
放たれた魔法は無意味。護身用の光の矢は、格上には効かずに弾かれ消えて。
「屍の皇女。此処で終わりだ。
誰も来ない。屍天皇も、魔神王も」
ちょっとずつ、左手に持った鞘を上に投げてはキャッチを繰り返し、持つ位置を変える。
届いた!ならば!
柄が顔に届く位置まで来たら、動かせる手首を傾け、此方へ刀を向け……柄を、口に咥える。
そして、花炎斬。咥えた刃を振るうべく首を振り鞘を切り落とすのを承知で、無理矢理打ち合わせながら刀を鞘から炎を纏わせ、振り抜く!
鞘が燃え、服が燃え、そして、腕を捕らえる氷が燃える。
炎に弱い拘束魔法だ。炎属性魔法さえ使えればこんなもの無意味というレベルで熱に弱い魔法としても初歩の初歩。
……ステータスしか高くない少年だからこそ、動ける!
「だが、もしも、一生僕に従い尽くすなら……」
刹月花を振りかぶり、少年は問う。
「……助けて、ボクの……」
ああ、分かってるよ、アルヴィナ。
「……ならば!世界を救う!終われ!屍の皇女アルヴィ……」
一閃。
口から右手へ。
燃える袖を、ちらちらと炎舞う襟を無視して刃を渡し、そして、横凪ぎ。
「……え?」
ぽろり、と。
純白の刃が、その右手ごと、少年の腕から零れ落ちた。
「あんぎゃぁぁぁぁっ!?」
「終わるのは、お前だ!」
返す刀。迸る剣閃。
そして、更に咲く大輪華。
「……腕が、僕の腕がぁぁぁぁぁっ!神から与えられた力がぁぁぁぁぁっ!」
眼前に転がる右手、そして重なるように落ちた左腕。
武器を握るべき双腕を呆然と見詰め、少年は言葉にならぬ声を奏でる。
……ああ、やはり。
弱すぎる。こいつは、魔神なんかじゃない。
「屍天皇ぉぉぉぉっ!
何故だ!何故動ける!時を止めた筈だ」
叫ぶ声。響く慟哭。
黙れ、と足を払い、地面に少年の顔を叩きつけて言葉を返す。
「母の残した……いや、母に渡される筈だったペンダントの力だ」
「有り得ない!そんなもの、原作のゼノにはなかった筈だ!」
……やはり、転生者か。
「原作が何か知らないが、未来だろうおれが持っていないから可笑しい?
当然だ。今、使いきった」
僅かな火傷痕を首に残し、ペンダントが燃え尽きる。
「……屍天皇ぉぉぉぉぉぉっ!」
「もう、終われ」
そうして、ポシェットから零れ落ちた残り1冊の魔法書を踏み潰し、恐怖で心を折り捕らえるべく少年の首に刀を突き付け……
「……あ」
少年の瞳から光というものが消えたその瞬間、少年の全てが風に包まれる。
「ちっ!」
その風が消えたとき、少年の姿は何処にも無かった。
「……逃げられたか」




