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円卓、或いは警戒

「……そっか」

 ふぅ、と桃色の聖女がカップを置いて神妙に呟いた。

 

 「まあ、ゼノ君は頑張ってもあの相手はキツいんじゃないかなーって思ったりしたけど」

 「ああ、流石にラウドラには声も手も届かない。それは思い知らされたよ」

 まずはとアイリス絡みの話を終えて肩を竦める。

 

 「でも、皇子さまは間違ってないです」

 「……そう、かな」

 「はい。そのしゅりんがーらちゃん?ですけど……。突然わたしたちの前に駆け付けてきてくれたというのは前の報告で言ったと思うんですけど、まるでトリトニスでのアルヴィナちゃんみたいにあくまでも敵だって言動でしたけど何処か庇うようにしてくれて、それで逃げきれたんです」

 と、おれをフォローしてくれるのは銀の聖女。

 「ああ、隠そうとしていた正体をチラリと見せる明らかに怪しい言動で、まるであの時はおれを誘導してるようだった」

 呟くおれに、ふわりと雪のように銀の聖女は儚く微笑む。

 「はい。だからです。きっとあの個に手は届きます、わたしも一緒に頑張ります。だから」

 「ああ、諦める気は毛頭無いよ、アナ。この手が伸ばせる限り」

 そんなおれ達を、横で僕の好みはまだ覚えられてないんだ……ってしょんぼりしながら砂糖とミルクをどばっと入れて甘ったるくしたものをちびりと飲んでいる桜理が少しだけ不満げに眺めていた。

 

 「あはは……原作が原作だけあって即座に二人の世界」

 「う、うん……」

 こくこくと頷く桜理。

 「いや違うだろうそれは」

 「そもそも、あの子を何とかして助けてあげたいって話なんですよ?ちょっと妬いちゃうような、二人きりじゃないお話です」

 「言い訳乙!って奴だよゼノ君にアーニャちゃん。

 いやまあ、言い訳かは微妙かも……だけどっていうか、そこ重要かな?」

 正論にすまんと謝って話題を変える。

 

 「シュリとアージュ、そして混合されし神秘(アルカナ・アルカヌム)の切り札(・アマルガム)についてはそこまでだ。あれはおれ……」

 と、言いかけて何処か余裕げな雰囲気を常に纏う白桃色の彼が真剣な顔してネズミの女の子を見ていた事を思い出して言い直す。

 「いや、縁あるおれ達の戦いだから。


 リリーナ嬢は少しだけ警戒してくれれば良い」

 「うーん、このロダ兄ちゃんの影響丸出し台詞。あと警戒は要るんだ」

 「要るさ。何となく分かるんだけど、リリーナ嬢の知り合ってた中に、実は一人幹部が居たんだぞ?本人も自覚は無かったろうけど」

 その言葉に少女はえ?と目を見開いてぱちくりさせた。

 

 「分かる、リリーナ嬢?」

 むむむ、と指を額に当てて唸る少女。少ししてぱっ!と顔を輝かせる。

 「あ、リック!ってあれ円卓?の人だよね」

 そう言われて、今度はおれが唸らされた。

 

 「あ、そうか下門もそうだな」

 ぽん、と手を叩くおれ。

 「あっれ、違うの?」

 「違う違う。確かにあいつも『嫌悪(ビーバッア)』っていう幹部枠……だったっぽいけど」

 そもそもシュリがおれの前に現れたのだって、探りを入れてきていたろう最初の方の言動からして下門陸が倒されたからその相手を見に来たって感じだったしな。だというのに完全に仲間扱いしてて数えてなかった。

 

 「え、じゃあ誰?」

 「リリーナ嬢は良く知ってる人だよ。アナは逆に全然知らないと思う」

 「そんな方なんですか?」

 「ああ、そんな人だよ。おれもそこまで知らないけれど、対峙した事はある」

 「あいつ」

 「ああ、あの下郎か」

 ひょこりと姿を見せたアルヴィナと、その肩に止まる八咫烏が理解したとばかりに告げる。

 

 「あ、アルヴィニャ……はもう良いんでしたっけ?アルヴィナちゃんとシロノワールさんの分もありますから」

 「今日はストレート。ボクは大人」

 「……ミルクでも貰おうか」

 と、案外乗り気で頼んでくれる二人。それを受けてサイドテールを跳ねさせて銀の聖女はそそくさと追加を淹れに行った。

 

 「え、皆分かるの?私分かんないけど……」

 「ルートヴィヒ」

 「ん?」

 「ルートヴィヒ・"アグノエル"。彼だ」

 「あーっ!そうだったの!?」

 うっそ!と口を開けて驚愕を顔に貼り付けるリリーナ嬢。まさに初耳といった感じで、しかも……

 「え、うっそ何で何で!?」

 完全に合点がいかない感じにおれは……そういや分かるわけ無かったと反省していた。

 

 「リリーナ嬢。そういえばあまり心労をと思ってまともに告げていなかったから分かる筈が無かったな」

 「いや分かるというか信じられないんだけどそんなの」

 「そもそも、おれがリリーナ嬢と婚約してでもあの時助けないとって思ったのはさ。君の言葉を信じたのもあるけれど……

 おれが君をそんな状況に追い込んだからだ」

 目をぱちくりさせ、桃色の聖女が何言ってるの?とばかりに小首を傾げる。

 

 「えっとゼノ君?」

 「おれが、ルートヴィヒ・アグノエルを殺した。円卓の(セイヴァー・オブ)救世主(・ラウンズ)として伝説の三つ眼の魔狼を使役する彼を、この手で葬った。

 ……そう、君の兄も真性異言(ゼノグラシア)で、死んだ魔神を使役する力を持つ円卓で、そして……円卓を支配するアヴァロン・ユートピアではなく、アージュ=ドゥーハ=アーカヌム由来の能力を持っていたんだ」

 めんどくさいよな、とおれは苦笑する。

 

 そう、多分だが転生者がどちらのゼロオメガ由来なのかは能力で判別できる。武器を与えているのがティアーブラック、能力を与えるのがアージュだ。

 例えばユーゴに与えられたのは兵器であるアガートラームつまり武器に類するものだからアージュ由来ではなく、○○を使役する力やコラージュ能力はアージュ由来。

 その観点で行くと召喚能力だけど謎の小槌を振る魔神、夜行がどちら由来か微妙に見分けられなかったりと確定ではないが……能力の補助と思えばアージュ側か?

 後おれ自身見たことがないから一番ヤバい奴(魔神王テネーブル)が詳細不明だが、円卓と敵対してたらしいのと魂を鎖で縛る力からして恐らくアージュ側。本人に自覚はないがアージュの毒を受けているのだろう。

 

 「私気が付かなかったよ……」

 ほえーとなるリリーナ嬢。こくこくと頷くのに合わせて胸が揺れる。

 「だから気をつけてくれ。少なくともおれは今仲間達を信じてる。頼勇やロダ兄やシロノワール達は転生者じゃないし、エッケハルトや桜理は転生者だけれども味方だ。

 だけど、深く関わって縁を繋いだ相手以外、誰が実は転生者かなんて分からない。そして、少なくともまだ、転生者は何処かに居る筈なんだ」

 三首六眼の毒龍だというアージュの眼とされる眷属だが……。下門、おれ、テネーブル、夜行、そしてルートヴィヒ。全部で五人しか居ないのだ。

 つまり最低限あと一人誰か居る。

 

 と、シロノワールに小突かれて思考を中断させられる。何か言いたげだが……

 「精々気を付けることだ聖女よ。魔神夜行は、少なくとも私が知る限りではああも狂ってはいなかった。片鱗すら見せなかった。

 あれは、極最近真性異言(ゼノグラシア)に成り代わった可能性がある。心を許しきるな」

 と、告げてくるのはそんな言葉。いや、それが事実ならばヤバい話だが……下手したらこれ、死んだからで新規で補充されかねない。

 

 「うわぁ……気を付けるね。

 でさ、そんな話しにきたんだっけ?」

 言われて違ったなとバツ悪く頬を掻く。ちょうどアナも戻ってきてくれたところで、一息入れておれは本題を話し始めた。

 

 「いや、そうじゃなくて聖教国やアステールの話だ」

 「あ、同人誌作るって奴」

 「それはそろそろ見本が出来上がるらしいから見てやってくれリリーナ嬢。同人とか詳しい方がまともな意見が出ると思う。

 が、それじゃなくて、ユーゴ自身の危険度の事なんだが……」

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