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早坂桜理と強斧の竜(side:サクラ・オーリリア)

「豊撃の斧アイムールだと!?」 

 大地を割りながら地中より出現し青年の手の中に現れた巨大な片手斧の存在を認めた刹那、リックの眼が見開かれる。

 

 「有り得ねぇ!?何処にあるのかも全く分からないものだったのに……」

 「今!この手にある!アナちゃんを取り戻すために!」

 吠えるエッケハルトさん、それに合わせて唸りをあげるアイムール。

 

 「いやお前のじゃねぇだろ!?」

 「お前のものでもない!お前のものにしちゃいけない!」

 その気迫に気圧されたように少しの間リックは押し黙り……

  

 「いやそもそもゼノの嫁だろ!ってか今は俺の!」

 「……そ、そうなんでしょうか……」

 と、ついていけてなさげなアーニャ様が首をかしげていて。

 

 「兎に角だ!」

 「そう。見せてくれてありがとよ。俺の七天御物を」

 キン、と輝くクリスタル。ぱしゃりという音と共に、見せ付けられるのは大地を割りエッケハルトさんが斧を手にする際の写真。

 

 あ、しまった!

 そう思ったときにはもう遅かった。

 「コラージュ」

 っ!奪われる!折角切り札になる筈だったのに!そう焦る僕だけど……

 

 『GuGiaaahhhh!OHHHHH!』

 耳をつんざく咆哮が響き渡ったかと思うと、炎髪の青年の中に巨大な……冷気を纏う機械のティラノサウルスを幻視する。そして……

 

 「あがぁっ!?」

 精霊障壁……結晶のバリアが青年の収一展開され、リックの方が腕を抑えて恨めしそうにそれを見つめた。

 

 「効かない!アナちゃんの為にあるこの力は!お前なんかに奪われない!」

 周囲に障壁を纏い、片手斧を天高く掲げながら青年は叫ぶ。

 

 それは良く分からないっていうかアイムールにそんな能力無いよね絶対!?って突っ込みたくなるんだけど……それよりも気になる点がある。

 「いやそれアーニャ様のための力なの!?」

 「わたしの為だったんですか!?」

 ってそうじゃなくて!

 

 「防げるんだそれ!?」

 うんまあ、僕のAGX-15を奪うとか無理だろうなーって思っていて、実際にそれは正しいってエッケハルトさんが見せてくれたんだけど。

 

 あれ?なら何でアルビオンは奪えたんだろ?って少しの疑問が出てしまう。あの機体にも障壁はあるから防がれたりしないのかな?

 「アナちゃんの力だからな!」

 「いや違うんじゃないですか?」

 「何か機械恐竜見えるし、寧ろ竪神さんとの力じゃ……」

 「うげっ!ホモじゃないんで男はNG!」

 口では否定しつつけらけらと笑いながら、巨大すぎる片手斧を肩に担ぎ、ラフな服(上半身なんてはだけたシャツ一枚だし……アーニャ様もさらっと目線を外してるくらいの毒。女の子でこれなら嬉しい人もいるんだろうけど、好きじゃない男の人のサービス?服装なんて困るだけ)の辺境伯は構えを取る。

 その背のアイムールが咆哮し、冷気を小さく放った。

 

 ……ところでなんだけどさ。牛帝の神器だからもっと他のエネルギーを出さない?冷気ってそれ本当にアイムール!?

 

 「クソがぁっ!」

 「アナちゃん!今のうちにこっちへ!」

 そう叫んで左手を伸ばす青年。けれど、覚悟を決めたように小さな手をきゅっと握って少年リックの脇に立つ少女は嫌です!とその手を払う。

 

 「わたしは、絶対にリック皇子様を見捨てたりしません!あなた達に、負けたりしませんっ!」

 そう、説得が無理なんだよね。だから困る。流石に幾らなんでもアーニャ様を攻撃なんて出来ないから、強さ以前に厄介すぎる状況で……

 

 「無能、阿呆、失望、お兄ちゃんにふさわしく……ない」

 ぶつぶつ言いながら大振りな動きでゴーレムを前に出させるアイリスさん。その際に、歩こうとして後ろに振られた鉄拳が軽くヴィルフリート君を掠める。

 

 「いやアイリスさん!?もっと気を付けて!」

 「……気配、薄すぎ」

 「もうほんと、何なんだこいつら!?」

 うん、ごめんヴィルフリート君。僕じゃ纏めきれないっていうか、個性的というか自由というか……

 

 「そんな、アナちゃん……っ。

 お前!俺のアナちゃんに酷いことしやがって!」

 だから君のじゃないよ!?って叫びたいけど我慢して、僕は一応最大の味方を応援する。

 

 「ちっ。やはり精霊障壁には阻まれるか!」

 言いながら、少年リックは右手を掲げた。

 「だが、俺の武器はアニャちゃんだけじゃあない!そうだろう?」

 「……殿下と戦うのは気が引けるが……」

 すたっと降り立つのは竪神さん。茶色い瞳に迷いが見えるものの、エンジンブレードを手にリック皇子の横に立つ。

 

 「頼勇様!」

 「竪神さん!見てよ、あいつは……っ」

 「皇子は割りと良く隠し事をするものだ。今は、信じるのみ!」

 あ、こっちも説得が通じないんだけど!?やっぱり影響強いのは困るんだ……。流石にノア先生辺りまで敵に回られると厳しいんだけど……

 

 というか、と見回すけれどうるさい気配がない。アイムール片手に竪神さんと睨み合うエッケハルトさん、唸りをあげるアイアンゴーレム、そして何とかしないとと焦る僕とリリーナさんに、片腕を抑えたヴィルフリート君。味方はこれだけだ。呼びに行った彼、どうしちゃったんだろう?

 

 「犬っころ!」

 「アウィルちゃんですよ、リック皇子様」

 「アウィル、竪神。ゴーレムを止めてくれ」

 リックの出した判断は、結構無難?なもの。確かにアイムールは恐ろしい武器だから、止めるならこっちの方が楽かも。

  

 「おいおいおい、俺と戦ってくれるってのか」

 「戦う?ふざけてんの?」

 そうして、彼は軽く頷く二人を余所に、獅童君の愛刀を手で弄びながら障壁に囲まれたエッケハルトさんを見下した目を向ける。

 

 「好都合!」

 「ああ、こっちもだ!」

 そうして捻られるベゼル。

 

 「っ!食らっとけよ!」

 刹那、炎髪の青年の巨斧から咆哮と共に放たれるのは巨大なビーム!

 そんな機能……いや砲撃の斧だしあるのかな?

 兎に角、巨大なエネルギーがリックへと迸り……

 『G(グラヴィティ)G(ギア)Craft-Catapult Ignition.

 Aurora system Breaked.

 G-Buster Engine Top Gear.

 SEELE G(グレイヴ)-Combustion Chamber Lost

 O(オーバードライブ)-OMG Crystal Dragonia Driva Burst.

 Verrat Bombe Active!Active!Active!

 

 A(アンチテーゼ)G(ギガント)X(イクス)-ANC(アンセスター)11H2(ホロウハート)D(ドラグーン)

 《ALBION》

 

 materialize』

 そうして、少年リックの姿が20くらいの男に切り替わったかと思うや……ビームを重力障壁と青い結晶が防ぐなか、僕の前で機械龍に包まれていく。

 

 GGC-Cは確か母艦か何処かからブラックホールで転移するカタパルトシステムの事、迷彩のAuroraが故障してるから、僕の腕時計ややったことないけど機体そのものの透明化は出来ない感じなのかな?

 G-Busterっていう縮退炉は生きていて起動するけど、SEELE G(グレイヴ)-Combustion Chamber……つまりブリューナクを放つための死者の嘆きを怒りの雷轟とする12以前の最大火力は機構そのものが破壊されて打てないっぽい。O-OMGCDってのは確か、設定資料にあったけど……あ、そうだ。精霊そのものを埋め込んだレヴシステム以前、相手のエネルギーを回収して限りある結晶資源として使っていたAGX-ANC11の結晶装甲システムだった。それはまだ動くみたい。

 

 と、僕は招来の際に聞こえた言葉から状況を反芻する。半壊してそうだし最大火力が失われているけど、まだまだ動くし油断は出来ないかな、これは。

 

 そして……最後のは何だろう?フェアラートって設定資料で見たことはないけどゲームでは聞き覚えが……

 

 『「この裏切り者(Verrat)共が……

 せめて、幸せに生きろよ。過去に居る別のオレ達と共に……」』

 あ、そっか、確か精霊真王がアガートラームの残骸に残るタイムマシンで過去に逃げていった生き残りの人々に告げた別れの言葉にそうあった。ドイツ語で裏切り者って意味だ!

 ってことは……ヴィルフリートを処刑するための爆弾システム!

 

 「ヤバイよリリーナさん、みんな!

 多分だけど、ヴィル君の命が、タイムリミットが!」

 「それが?」

 興味無さげな返しが飛んでくる。

 「リックのせいで苦しんでる人が理不尽に殺されちゃったら、アーニャ様後でずっと後悔するって!だから早く何とかして、エッケハルトさん!」

 少しやる気無さげというか、アーニャ様が洗脳されてるからって来てくれただけだろう彼に僕は叫ぶ。

 

 「おう、よっしゃ任せとけ!

 行くぜアイムール!」

 轟!と迸る触れるだけで冷たいオーラを纏い、エッケハルトさんが大地を蹴り、凍結した爪痕を残しながら降臨したばかりの機械龍ALBIONへ向けて駆け出した。

なお、サクラ視点は次回、アイムールvsアルビオンまでです。もう少しお付き合いください。

ぶっちゃけアイムールに勝てない今の下門陸君にはボスは荷が重いので……。ちなみに今までのイキリの責任を取ってちゃんと苦しんで死にます、ご安心ください。

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