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早坂桜理と桃色の暴君(side:サクラ・オーリリア)

「よっ、桃色同盟」

 探そうとしていると、向こうから来てくれた。気さくに左手の犬の手(肉球まで付いてて本当に犬)を上げて挨拶してくれる白桃の髪に同じように神様の意匠である桜色の一房がメッシュのように混じった青年、ロダキーニャが。

 

 僕、眩しすぎてそこまで周回して無かったんだよね彼ルート……でも、凄い人なのは覚えている。

 「何か同盟組まれてる!?」

 「はーっはっはっ、同じ桃の髪を持つ者同士、縁があるって事だ!」

 「僕は桜色って言いたいんだけど!?」

 「桃と桜、仲良しじゃないか?」

 うんまあそうだし、軽い言葉だけど。

 

 「んじゃ、チームのリーダーな皇子様へのサプライズでも考えるか?」

 「さぷらいず?」

 リリーナさんと二人して首を傾げながら青年を見上げて……

 

 「悪縁絶つは一桃両断、歌舞いてみようぜ、サクラ色」

 ……何か変な言い回し。

 「あ、今日劇を見るんだっけ?トリトニスに居を構えてる劇団の公演日だから……」

 「ま、それも見るし、他の劇もな」

 あ、結構遠回しだけどこれって……

 

 「ひょっとして、僕の記憶を試してるの?」

 「俺様、ワンちゃんの事なんて一言も言ってないぜ?」

 ワンちゃんって……あ、獅童君の事。リーダーな皇子が別人ってことは、ちゃんと分かってるって話なんだ。

 

 「え、どういうこと?」

 「……ねぇ、リリーナさん」

 真剣に見つめ、逃げないでと真正面からその手を握る僕に驚いたように目をしばたかせる聖女様。それを見ながら、一瞬悩んで僕は告げた。

 

 「……実は、リック皇子は偽皇子だって言ったら、信じる?」

 「それさ、何度も言うけどアーニャちゃんに言ったら駄目だよ?あの子、リック君が否定される事大っ嫌いだから」

 そうなのかな?と僕は首を傾げる。正直な話なんだけど、軽く接するだけでも性格が違いすぎてアーニャ様とか違和感で頭の中ぐるぐるしてそうだし……

 

 「あはは、私も違和感あるのにって顔してる。でも、あの子の一途さはやっぱり私とはレベル違うから、不安なんだよね。オーウェン君がどうかされたらって思うと。

 ほら、リック君のためなら凍り付けとか……あれ?そんな事してでも止めるような事あったかな?」

 「はーっはっ!でだそこの聖女、此処で面倒なことはあまり話すものじゃないぜ?」

 言われて気が付く。そうだよね、リックが突然部屋に来たりしたわけだし……

 

 「んじゃ、ワンちゃんの部屋は勝手に使われてるし、行くか」

 鍵をひょいと取り出しながら、白桃の青年は笑う。

 「え、何処に?」

 「機虹騎士団で借りてる部屋。一応鍵かかるぜ?」

 「良くそんなもの持ってるね……」

 「これか?獅子というか狼に借りたぜ?自分が間違ってるとは思わないが、間違っているならばアイリス殿下が動きやすいように、だそうだ」

 ああ、だから竪神さんはわざわざ殿下がどうとか言って通してくれたんだと納得する。っていうか、みんな本当に結構効いてない。案外ガバガバじゃないかなこれ。

 

 そう思いながら部屋に入り、明かりを点けて鍵をかける。ひょいと鍵を開けたら大きな音を立てる魔法をリリーナさんが付与して……

 「あ、リリーナさん、どうぞ」

 僕は少女のために椅子を軽く引いた。

 

 「……じゃあ、ロダキーニャさんは」

 「ロダ兄で良いぜ?案外そっちの通りが良いんだろ?俺様的にもよ、本性と区別されてる方が良い訳だしな」

 へー、と思いながら言い直す。

 「ロダ兄は効いてないの?変な改変」 

 「いんや、効いてるぜ?ただよ、ワンちゃんも言ってたが俺様はアバター、本性の描く理想の自分って寸法よ。。

 つまり、本性と俺様って別人格で、本性は影響受けない。んで、本性側から見れば狂った点は一目瞭然。そいつを修正するから実質無効って話だな」

 ケラケラと笑いながら青年は告げた……ってこれかなりのチートでは?

 

 「っていうかさ、どうなってるのかって知ってるのかな?」

 僕はそう問い掛けて……

 「コラージュなんちゃらって言うらしいぞ?」

 さらっと返ってくる言葉に驚愕する。

 

 「ロダ兄知ってるの!?」

 「いや、知らん!」

 「じゃあ何で名前が出てくるのさ!?」

 「いやな、俺様も狼一号も、実はワンちゃんがなーんかやりにくそうにそこの聖女を護ってる状況に辿り着いた訳よ。だが、様子が可笑しい、縁も狂っている。

 変だってことで、とりあえずワンちゃんが聞き出そうとしてるのを眺めてたって寸法よ。聞き出したらもう良いだろうと介入しようぜと示し合わせてな。

 

 だが、」

 と困ったように青年は肩を、そして背の翼を竦めた。


 「そのコラージュ何とかという……ワンちゃん曰く現実をクソコラする能力について聞き出して、さぁ終わりだと思った瞬間、突然狼一号までも影響を受けた。んで、あっちを助けるために駆け出してったんでどうすっかなぁになった訳よ」

 その言葉に僕は……最初から介入してくれたらと思うけどそれだと逆に酷いことになってたかもと考え直す。目の前で洗脳?されるよりは良いよね?

 

 でも……

 「うーん、コラージュする能力ってことは、コラ元が要るってことだし……」

 能力が分かるだけでも対抗しようはある。

 

 「そういえば、皆はどうなんだろう」

 「その事なんだがな、観察しながら、俺様別の国から来たから良く分からんのよと聞いて回ってたんだが、あるタイミングから突然ワンちゃんじゃなくリックってことに切り替わったぜ?」

 「え、そうなんだ」

 不可思議な話にびっくりするけど……

 

 「あ、集合写真」

 ふと気が付く。そういえば入学後に全員の集合写真とか撮ってたってことに。

 「聖女様の喧伝として他の人でも手に入れようと思えばいけるし、それで皆を」

 と思うんだけどそれ以外にも気になるところがある。

 「でも、それには僕も映ってるしアーニャ様やリリーナさんも居る。わざわざ他の写真とか要らないし即座に……」

 

 と、僕はすっかり忘れていたリリーナさんが手を上げてるのに気が付いた。

 「あ、ごめんリリーナさん」

 「えっと、リック君が偽者で、私達が変な能力で洗脳というかワンちゃん……あれ?ワンちゃんってヒロインの私の事だよね?」

 「えっと、実は違うっていうか、この世界だと」

 「あー、オッケー。そういえばリック君の事そう呼んでた……って記憶になってる」

 「本当はゼノって言うんだけど、リックをその彼だと思い込まされている。彼のやってきたことをリックのやったことにコラージュされているんだ」

 今さらだから言って良いと思って、僕はそう告げる。

 案外納得したようにリリーナさんはその愛らしい顔をキリッとさせて頷いた。

 

 「そっか。リック君変だもん。信じるよ。

 でも、何で最初に……って、リック君にバレたらヤバイか」

 「うん、それが怖くて。それにさ、アーニャ様とかに言ったら、信じてくれなかった瞬間にリックに言われちゃうでしょ?そういう不安もあったんだ」

 「うんうん。でも、本当にそうなら、私よりアーニャちゃんの方が違和感凄いんじゃない?」

 「うん、それ僕も思ったんだけど、まだ確認できてないんだよね……」

 言いつつ、ふぅと息を吐く。

 

 僕もちょっとは頑張れてるよね、獅童君?

 そう思いながら、この先を考えようとする。

 「うーん。ある程度対抗できそうだけど、どうしよう」

 「はーっはっはっ、付いてこいお伴達」

 「いや、駄目だよ?」

 にかっと笑うロダ兄に僕は首を振る。

 

 「おう、どうした?」

 「獅童君の事だもん。僕が頑張りたいから、お伴で居たくないんだ」

 「ふっ、面白い。良いぜサクラ色。今回は俺様お前のお伴になってやろうじゃないか!

 んじゃ、まずは方針を頼むぜリーダー」

 「他にも違和感を持ってて引き込めそうな人を探したり、相手の能力の詳しい条件を探ったり……

 後は、利用されてるヴィル君を助けてあげること」

 きっと獅童君ならと思いながら付け加える。

 

 「よーし、頑張ろ、オーウェン君!」

 何だか元気良く、リリーナさんが応えた。

 「にしても良かった、下手に動いてたらリック君偽者だとひどい目に逢ってたよきっと」

 「……リリーナさん?」

 「あ、ごめん何でもないよ今はまだ。

 後でね、オーウェン君」

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