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桃色聖女と不要説(side:リリーナ・アグノエル)

「ふぅ、やっと何とかなりました」

 ほっと息を吐く銀髪の女の子に、私はお疲れ様と声をかけた。

 

 「アーニャちゃん、どうなったの?」

 「あ、はい。ちゃんとわたしの言葉を信じて、龍姫様への愚弄は龍姫様が裁くから人間であるわたし達が心を砕かなくて良いってこと、分かってくれました」

 その言葉にへーと私は頷く。

 

 でも、多分だけどゼノ君に裁きなんて下らないよね?だって……

 私はヒロインらしくてちょっと私らしくない綺麗過ぎる緑の瞳に力を込めて、難しい顔で考え込む青年の方を見る。

 

 私がカーディナルって名乗った神様から貰った転生特典でゼノ君への好感度を見透かす。私は自分じゃ見えないけど+30くらいって多分頭の上に出ててアーニャちゃんは安定のカンスト間近。シロノワール君もつんけんしてるけど実は+12あるからそんな低くないツンデレさんだ。

 エッケハルト君は一桁だし昔見た時より下がったかな?でも、一時期マイナスに行ってたのは改善されたっぽくて一安心。周囲で見てる一般の人々からは基本的にマイナスか無関心の0なのがなんというか女の子を助ける為に行動した直後なのにちょっと可哀想だけど、そこは私も頑張ってゼノ君としか言えないかな。

 そして、ゼノ君の姿を良く見ると、当然のように周囲に数字が浮かんでるんだよね。

 

 頭上のマイナス20はゼノ君自身、肩辺りの±20って良く分かんない複雑な表記は誰なのか分かんないけれど、その他に二つ数字が見えるんだよね。しかも両方高いっていうか、38と49。もうデッレデレ。

 そのうち、38の方はゼノ君の左目を持っていって繋がってるらしいあの黒髪白耳に満月の瞳の魔神の女の子。ゼノ君の魔神と云々の発言を信じたのも、この私の特殊能力であの娘がゼノ君大好きなのが演技じゃないって分かるからなんだよね……

 

 じゃあ、49ってカンスト数値は誰なのかってなると……それが見守ってる龍姫様なんじゃないかな?アイリス殿下ならカンストはしてないから何となくそんな気がする。

 ティアとして出てくるゲームでの印象は結構物静かなんだけど、実際はどうなんだろ?案外頭アーニャちゃん(ゼノ君激推しの民のファン内での愛称……あれこれ愛称で良いよね?)だったりして。

 

 「ゼノ君裁かれなさそうだけど」

 「間違いないです」

 きゅっと握られる拳。

 「それで大丈夫?みんな納得する?」

 「神様が良いと言ってるのに許さなかったらただの私刑ですよ?」

 「そりゃそうだよ。でもさ、ゼノ君って忌み子だーって嫌われてるじゃん?私刑勃発しない?」

 「させません」

 うん、頼もしい。

 

 っていうかさ、教会で説法するし祈るし皆に向けてアピールも出来てるし……

 今回私要る?アーニャちゃんの完全下位互換にならない?

 

 むむぅ、不安だよ……。役に立てるならって原作にこんな話無い(まだ攻略キャラも出揃ってないし何ならゼノ君モブ扱いなのにこんなゼノ君関連の大規模事件とか起きたらゲームとして困るよ)けど怖さを堪えて頑張ろうって思ったのに、実は要らないってなると悲しいんだよね。

 

 そんな私の手を、きゅっとアーニャちゃんは包んでくれる。

 あったかいかというと、私よりちょっと体温低いかな?でも、そんな気遣いが嬉しくて。

 

 ゼノ君こういう心のケア苦手だもんね。っていうか、アーニャちゃんが覚悟決めきってるようにゼノ君自身が一番フォロー要るタイプ。

 まあ、それをだからほっとけないよね?するんだけどね、私みたいなファンとかは。

 

 「リリーナちゃん?」

 「あはは、私役に立たないなぁ……って。

 聖女なのにね」

 「ずっと、わたしも同じようなことを思ってました。わたしじゃ何にも出来なくて、だから何かしてあげたくて必死に出来ることを探したんです」

 ぼやく私に、銀の少女はえへへと笑う。

 

 「そっか」

 「はい、結果今では聖女様って呼ばれるようになっちゃいました。こうして皇子さまのお役に立てる点には感謝してるんですけど……」 

 少女の目尻が下がる。

 「何だか寂しいところもあります。皇子さまから畏まられたり距離取られたり悲しいですし」

 「分かる。でもそうじゃないとゼノ君じゃないよね」

 「う、それはそうなんですけど……」

 

 と、話している間に、男性陣の側の話も進んでいく。

 「警告とか、教会から発信を」

 「わたし、頑張ります!」

 「……これ私要る?」

 アルヴィナって魔神とはその実完全に出来レースの戦いになるだろうから、聖女の力要らない説が濃厚だし。

 

 「一人じゃ不安ですし、一緒に居てくれると心強いですよ?」

 あ、天使が居る。

 「それに、おとめげーむ?のお話はエッケハルトさん達全然わたしにしてくれないんで、リリーナちゃんが居てくれないとわかんないところが多いですから……」

 やった!やることあったよ!ってまあ、アーニャちゃんが作ってくれたんだけど。

 

 「いよっし!乙女ゲープレイヤーに任せなさい!

 ……まあ、戦闘関係のデータとかからっきしだけどね?」

 高難易度プレイとか私がやったら人死んじゃうもん、やったこと無い。難易度ノーマルの初プレイでエッケハルト君(原作の方)を私のミスで死なせて以降ずっと最低難易度でやったんだよね……

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