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リリーナ・アルヴィナと珍獣実兄(side:アルヴィナ・ブランシュ)

今回の事件はリリーナ・アルヴィナ(本名アルヴィナ・ブランシュ)視点となります。色々と心情が酷いですがお付き合い下さい

これでも彼女は真性異言関係なしにゼノであれば良いアナと対をなす真性異言が絡むからこそのもう一人のメインヒロインなので……


このメインヒロイン(アナザー)視点の2章戦闘パートは今日中に全部投稿します。まあ、ちょっぴり書き直してますが大元は2019年にはハーメルンに投稿してたものですからね

「アルヴィナぁ~」

 ふと、読んでいた恋愛の本から眼を上げた時、ボクの前に居た。

 珍獣が。

 

 御免。間違えた。実の兄が。実の兄……の筈の彼が。記憶の中の彼と同一人物だと、そう信じているけれど、何か致命的に違う存在が。

 「あぁ~もう、本を読んでてもアルヴィナは可愛いなぁうりうり」

 なんて、ボクの頭を撫でる。折角貰った帽子がずれるからやめて欲しい。


 「テネーブル」

 なんて、どこかから響く咎める声も無視して。|テネーブル=ブランシュ《実の兄》はボクの頭を撫で続ける。何時ものお兄ちゃんは、そんなことしないのに。

 

 「それで?アルヴィナ

 本当に来ただろ、あいつら」

 こくり、と頷く。確かに兄の言葉通り、彼……第七皇子は動物展の会場にやってきた。でも、教えてくれたら良かったのに。犬猫展だと。


 兄はきっと知ってたはず。なのに知らないボクは期待して向かって損した。見たければ見せようか、と友達は言ってくれて、あれは面白かったけれども。それでも期待とは違った。

 

 「確かに、来た」

 「だろ?兄ちゃんは未来がちょっと見えるんだ、信じてくれたか、アルヴィナ?」

 「信じる」

 「兄ちゃんは……というか、七大天はこういう者を、真性異言(ゼノグラシア)って読んでるんだ」

 「知ってる」

 本で読んだから知ってる。


 真性異言(ゼノグラシア)。知らぬ言葉を話す者。彼等が学んだはずはないのに、さも当たり前のように異国……或いは異界の言葉を話す人や魔物の事。

 転じて、異次元からの転生者。そんな異質な者は神々の思し召しであるに違いないとして、七大天の使徒とも言われる。

 彼等はその時の情勢の未来を何故かは解明されていないながらも大抵は知っており、未来を変える……或いは変えないためにその天で無ければ知らぬはずの知識を振るう、らしい。


 らしい。ボクはそんな存在を、『まあ、ラスボスが真性異言の時点で俺達の勝ちは決まってるけどなー』とのほほんとする目の前の珍獣(あに)しか知らないから。

 

 ボクとは違う浅黒い肌。ちょっと暗い、青い髪。人間が嘯いているのとは違い本当の万色の虹界の眷属である魔神族特有の七大天の何れかの象形は、女神以外の全て。

 ちらりと覗く鋭い犬歯は王狼の牙。頭に生える螺れた角は晶魔の角…じゃなくて、牛帝だっけ。毛の生えた大きな耳は猿候のもの。縦に裂けた瞳孔は龍姫、纏う陽炎のようなオーラは道化、そして結晶化した右腕は晶魔。

 天属性、天照らす女神以外の六天の象形を持つ、魔神族歴代でも屈指の特異点。正に珍獣。王狼の耳と晶魔の結晶だけなボクの3倍は珍しさがある。

 

 「それでさアルヴィナ。

 賢くて可愛いアルヴィナは、兄ちゃんの為にあいつらが真性異言か調べてくれたよな?」

 そう。それがボクが居る目的。人間の国に忍び込んで、人間の貴族の家をでっち上げて、人間の婚約パーティになんて出向いた、本来の目的。

 ボクが、本で読んだ人間を見たかったからじゃない。


 他にも居るかもしれないという、未来を知る真性異言。それを探すこと。その為に、未来に関わってくる……かもしれない人の前に出て、観察する。

 でも……

 「分からない」

 ボクは首を横に振る。帽子がズレてしまって、慌てて直す。彼が被ってたものをそのままくれたから、ぶかぶか。でも、だから彼のもの。

 

 「んー、まだちょっと材料が足りないか」

 「足りない」

 ……だから、また会う必要がある。あの、ゾクゾクする眼を見せた彼に。

 「可愛いアルヴィナをあんまりクソボケチートバランス崩壊野郎に近付けたくないんだけどなぁー」

 ……?

 多分、調べるようにと言われた彼の事なんだけど、ボクには良く意味が分からない。バランスが崩れるの意味は分かる。クソボケ……下品だけど分かる。

 「チートって、何?チーズの派生?」

 「ん?チート?ぶっ壊れ。

 あいつ新キャラ来る度に環境ぶっ壊してくクソボケだから。何が最弱の皇子だよ何が忌み子だ。

 どうせ魔防0だし魔法で先に攻撃するだけで対策出来るから良いよねって運営に散々能力盛られやがって。物理受けを物理でぶち抜く高速アタッカーとか有り得ねぇだろしっかりカスタムした魔法系居ないとステージ関わらず出会った時点で詰みとかマジで意味わかんねぇ。

 しかもアリーナで橋マップだと水上歩行持ち橋マップ特化地雷型が飛行キャラ輸送されて向こう岸のこっちの魔法届かせられない所から飛んでくるとかあのクソゴミはホントさぁ!


 そもそも何だよ最弱とかイキりやがって!総合ステータスが大体同職横並びになるのに皇族補正で合計に色貰ってる上にMPと魔防が0で良いとかふざけんなよお前残りのステータス馬鹿高くなるじゃねぇかMP消費スキル付けられないとか関係ねぇよアリーナ防衛戦環境壊す最強キャラに決まってんだろボケがぁぁぁぁっ!」

 良く分からないけれど、怨嗟ってことだけは伝わる。


 「……?嫌い?」

 「そもそもアリーナの形式が誰も倒されずに全滅させないとランキング下がるのにあんな殺意しかない地雷鉄砲玉参加出来ることが可笑しいだろ悪意しか感じねぇよ。

 環境から消えたと思ったのに突然飛んできたり橋轢殺事故で何度連勝や上位狙い止められたと……しかも素体が序盤のシナリオ配布だから格下で堅実に連勝数稼いでそこそこ順位フィニッシュ考えた時にもたまーに湧くしよぉ!

 マジ何なのお前総合値は重装より低いからこんなボケなのにポイント高くないとかマジで悪意しか無いし何だよお前しかも自分で使うと魔法に弱すぎて運用がクッソめんどくさいわマジで良いとこがねぇとかお前何のために産まれてきたんだよ死ねよゲームから消えろっての!


 つまりアルヴィナ、あのゼノってのはアリーナガチ勢から最も忌み嫌われた最低最悪のクソチート野郎だ。新年弓のクソボケよりはマシだけどな」

 ……うん。分からない。やっぱり兄は珍獣で、真性異言だって良く分かる。

 ……どうしてボクは、彼とお兄ちゃんを同一視してるんだろう?すこし不思議。


 「んまぁ、兄ちゃんは心配だけど、仕方ないか。万が一クソボケに襲われたら精一杯兄ちゃんを呼ぶんだぞ。制限だ何だぶち壊して殺しに行くから。

 それをやらかすとチート皇帝にバレる?上等だ返り討ちにしてやらぁラスボス舐めんな!……マジで勝てるかは分からんけど。

 アルヴィナ、良いか?分かりやすい真性異言の見分け方は……」

 

 ……なんてことがあって、ボクは今此処に居る

 本当に彼が……人間の皇子が来るのか怪しかった、特別動物展。

 目の前には、兄の言う通りに本当に来た彼。ゾクゾクする目をしていて、ボクに帽子や犬をくれた少年。あの子は、折角貰ったから永遠にしている途中。そうすれば、ボクとずっと一緒だから。

 

 「……アルヴィナ?大丈夫か?

 ちょっと、ぼんやりしているようだけど」

 「……無問題」

 ちょっと、思い返しすぎた。


 「ニコレット……もう居ないし。始まるからって食い付き早すぎだろ」

 なんて苦笑する彼は、あの眼をしていなくて。

 ……あの眼は、ボクの永遠ではきっと維持できない。だから、彼は永遠にしてはいけない。優しく微笑んでくれる今の顔はそれはそれでだけれども、あの眼じゃなきゃ困る。

 あの眼を見たい。あの眼の彼を……第七皇子ゼノを見ていたい。あの眼でずっと見られたい。だから……ボクは、彼を永遠にしない。永遠にする事になりかねない真性異言では、あって欲しくない。

 

 そんな中。皆様にお見せする商品は……と、現れた人々の語りは、始まった。

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