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森へ、或いは不満な同行者

「で、何で俺まで……」

 森への道を馬で駆けながら、ぽつりと馬上の炎髪の青年がぼやいた。

 

 リリーナ嬢と約束した森で聞こえる恐ろしい鳴き声の調査に向かう最中の話である。

 シロノワールに魔神だと思うか聞いたところ、あの汚似いちゃんの思考が分かると思うかと不機嫌に返されたので、実のところは分からない。

 だが、あの円卓達が出入りしていて、その際の音が鳴き声に聞こえるのかもしれないし、魔神かもしれない。

 そう思って調査に来たのである。リリーナ嬢は……寧ろ連れてた方が安心かもしれないから同行して貰った。

 アナを殺したくなさそうだったシャーフヴォルのように、乙女ゲーヒロインなリリーナ嬢だってという酷い目測だが……

 ってかこれ、事実上人質作戦だな?外道かよおれは。

 

 「アミュ、頼むな。

 おれの言葉に久し振りにノア姫から借り物だものと手綱ごと返された白馬が嘶いて答え……

 「いや聞けよアホ」

 流石高位貴族、人懐っこい愛馬アミュグダレーオークスではなく単なる普通の馬を難なく乗りこなしながらの突っ込みが空しく響いた。

 いや、エッケハルトに構ってても仕方ないしな。最近はアナ関連で結構敵視されてるし。

 うん、おれとしては友人だと思ってても、あいつからしたらアナ関連で恋敵みたいなもんだからな……。寧ろおれとしては応援してるってのに、もう少し態度が昔みたいになっても良いだろ。

 

 「うわぁ……キャラ違いすぎる……」

 愛馬の上でぽつりと呟くのは、今日はドレスなリリーナ・アグノエル。ミニスカート(ちなみに膝下までのロングスカートもあって選択制だ。聖女が着てたで今はミニが流行りだとか)の制服ではない。

 

 「リリーナ嬢、今日は制服では無いんだな」

 アナとの差別化か、それとも明るい緑の瞳に合わせてか、エメラルドをあしらったネックレスが映えるような黄色を基調とした緑の差し色ドレスは確かに桃色の髪にもそこそこ合っていたが……

 

 「うん、ゼノ君は知らないかもしれないけどね、私……っていうかゲームのリリーナは、戦闘ではずっとドレスなんだ」

 言われて思い返す。いや、第一部ではそんな前線で聖女を使うことがなかったから案外記憶に残ってないが……

 

 確かにずっとドレスだったな。だが、インターミッションで表示されるSDキャラは制服だった覚えがある。というか、制服を意図して着てた筈だ。

 原作のリリーナ嬢、聖女として人々の気持ちを揃えられるように平民でもお揃いに出来る制服をわざと着てるって言及があったような……

 まあ、多分第一部と第二部で戦闘グラフィック変えたくなかったから容量削減で戦闘グラがドレスしか無かったんだろう。

 

 「それに合わせた方が良いかなーって」

 「まあ、元が良いからどちらでも似合うとは思うが……」

 流石は乙女ゲーヒロイン。何着てても美少女としか言いようがない。

 

 「おそーい!」

 ダメ出しされた。

 「いや、何が?」

 「このドレスだよドレス!ゼノ君がくれたもの!折角着たのに感想が遅すぎ!」

 

 その言葉に、は?とおれは目をしばたかせた。

 送ったっけ?

 送ったような覚えは……

 

 「あ、あれか」

 「クソボケかお前」

 エッケハルトの言葉が胸に痛い。


 「自分が選んだものすら覚えてないの?」

 責められるような目を向けられて、おれは

 「いや、おれにセンスが皆無だからルー姐に頼むおれの代わりに一応婚約者なこの子に合うドレスを見繕って贈ってくれって……」

 と、事実を告げる。

 

 「うわ、聞きたくなかった」

 考えてみれば確かに酷いなこの話。プレゼント丸投げって。

 

 「すまない」

 「色々ともう遅いよ!?」

 「このボケ!頭ゼノ!」

 ……ところで、おれは何故エッケハルトからすら罵倒をされてるのだろう。

 

 「……いや、私はゼノ君が私に似合うように必死に考えて、結果お姉さんに投げてくれたっていうなら別に嬉しいんだけどね?」

 と、フォローまでされる始末。

 「お兄さんだけどな、ルー姐」

 「お兄さんなんだ……」

 「女装の変態なのか……」

 否定できない。

 

 「兎に角、私みたいなゼノ君ってそうだよねーしてくれる女の子少ないよ?

 嫌われちゃうよ?」

 「ああ、気を付ける」

 そう頷いて、話題を終わらせ……

 

 「というか、マジで何で俺連れてこられたわけ?」

 再度エッケハルトの疑問がその隙間に入り込んできた。

 

 「あ、呼んだの私!」

 「いや止めてくれよ!?」

 心底嫌そうだなエッケハルト。

 

 「ってかリリーナ!いや(レン)!」

 ……ああ、あの魂は恋って名前なのか。

 それで対応が変わるわけではないし、知ってても知らなくても良い話ではあるんだが……結構可愛い名だな。

 

 「話したろ、俺はアナちゃん一筋なの!」

 「許してくれるならハーレムって聞いた!」

 「アナちゃんの気持ち最優先なの!」

 「でもそれ、一途じゃなくない?」

 「じゃあ好きで良いよ!

 俺はアナちゃんが好きなわけ!なのに、何でわざわざゼノとセットで連れてくるんだよ折角こわーい鬼の居ぬ間にアナちゃんとイチャイチャ距離を詰めることが出来るチャンスなのにさ!」

 ……言われてみればそうだな、うん。

 

 「エッケハルト、お前もう学園に帰れ」

 「今更遅いわ!森に着くっての!」

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