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探索、或いは出会い

あの日から8ヶ月……一年が過ぎた。この世界、世界を切り開いたとされる七柱の神+世界の大元とされる混沌からなる八神の信仰が滅茶苦茶強いのだ。月や日の名前すら神の名……例えば滝流せる龍姫から取って龍の月、水の日なんて形だしな。


 そして、ゲーム内での得物が刀と弓であった事から分かってはいた事だが……あの言葉足らずに強くなれとおれに大火傷負わせたボケ親父に付けられた武芸の師はというと、大陸遥か西方の天空山を越えた先に在る、どんな異世界にも存在する気すらする和風国家出身のサムライだった。

 問題はない。おれはおれとして、第七皇子ゼノとして生きていくとそう決めたのだ。


 が、武器が刀というのは中々に面倒だった。西方との交流は乏しいので刀匠も珍しく、修繕出来る者も同様。入手に難があるので雑には扱えない。

 原作だとプロローグから耐久無限のぶっ壊れチート武器持ってるから刀の入手難易度って気にならなかった。が、あれ手に入るのは天狼事件って4年後に起きる事件の筈だから、今は無い。


 そこら辺の面倒さゼノだなぁと思いつつ、病弱で一人ぼっちの妹に時折絡みに行きつつ、一年ずっと刀を振り続けた。

 

 「先は長いな」

 ぽつりと愚痴る。

 おれの師は抜刀術中心に教えてくれる師なのだが、成長してない子供の体に刀が合わない。かなり短めの短刀でなければ、そもそも背が足りずに鞘から抜き放つ事すら出来ない。おかげでまともな武器が足りてない。


 左手には父から呪いで傷が治らない事を理解してなかった詫びとして贈られた大粒のルビーの指輪が嵌まっている。ルビー自体が魔力を秘めている為か火属性魔法の威力が上昇し、逆に水属性に分類される氷属性だとかの威力が減衰する優れものだ。

 自分に向けられた火属性魔法すら増幅してしまうのが難点だが。

 

 今やっているのは走り込み。基礎能力の絶対値の底上げ。この世界はゲーム的にレベルが存在し、それによって能力値は上がるが……おれにとって此処はもうゲームじゃないから無意味じゃない。

 あと、ゲーム的にも修行は無意味ではない。努力すればステータスも50までなら少しずつ上がる。ゲームでも主人公とか攻略対象が頑張る描写と共にステータスupイベントはあった。

 50以上?人間の限界値が50、それを越えたら超越者(上級職)だからもう鍛えても無駄だ。


 ついでに、この1ヶ月動く練習用のゴーレムとやりあってて分かったことだが、彼我のステータスから導き出されるはずの(計算式は覚えてるから求められる。RTAのチャート作る際に勝てる確率の運ゲーになるかどうか考える為に覚えた)表記命中率と、実際にやった時の命中率とかかなり違った。更に……本来ダメージにも一切ブレが無い筈が多少ブレるな。

 ならばと思ってステータス上命中率100な師の攻撃を避けられるかというと直感的にこれ無理だと理解してしまった。そこら辺はちょっぴりゲーム的だ。

 

 当たり前のように命中回避について語っているが、この世界にもステータスや職業の概念は当たり前のようにあった。一部魔法で読み取れるようになっていたし、偽装魔法もある。

 とはいえ、ステータスを出すのは七大属性持ちの7人でもって唱える大魔法で七大天を祀る教会以外ではまともに唱える事は不可能な大魔法、『覚醒』の亜種なので早々魔法書は出回らない。

 けれどもそこは皇家、城にはその魔法の魔法書を作る事が仕事の御抱えの魔法師がおり、ある程度の量産を可能にしているので何も問題はないのだ。


 ということで、魔法書一冊を親父に頼んで貰ってきて、乳母兄のレオンに持たせている。それでもって、能力値を見てみたという訳だ。


 そんなおれのステータスは……元々壊れキャラな皇族の常か職業がゲームでの初期職の下位版でステータスも【HP】【力】【技】【速】【精神】【防御】の数値が同レベルの周囲に比べて馬鹿かって程に高い。何なら上のレベルのそこらの兵士より普通に高い。

 そしてやはり、【MP】【魔力】【魔防】の3種は0で燦然と緑に輝い(カンストし)ていた。 

 流石は原作でその事を散々バカにされる忌み子だ。魔法絡みの能力があからさまに壊滅している。


 知ってたけど前途多難だな!?原作ゼノは忌み子だけど転生者特典で魔法使えますとかあって良かったんじゃないのか!?

 愚痴を言っても仕方ないが、民を護る為にも何か欲しかったところだ。

 

 そして、人の口に扉は建てられない。最初の一月でその噂は多くの貴族に広まり……おれの扱いは、大分酷いものになっていた。

 火傷で寝込んでいたこともあり、本格的に復帰した時には既に忌み子の事実に絶望し引きこもった雑魚皇子というレッテルが噂好きの子供達の間で定着してしまっていたのだ。


 恐らくは自分の貴族の血に誇りを持っていて、けれども皇家に勝てないと親に言われて悔しかった良家のぼんぼんにとって、自分がマウント取れる同年代から少し下くらいの皇子は、あまりに良いストレスの捌け口だったのだろう。

 というかこれを素で耐える原作のあいつ(おれ)は何なんだと。原作知識あってもキツイのに。

 

 ふと、走り込みのなかで気が付く。庭園の植え込みが揺れている事に。

 此処は皇城の端であり、おれ付きの執事が趣味でやってるだけの庭園、通りがかる者もまず居ない。

 風はない。虫……と日本ならば言われるだろう生物は、皇城には魔法で駆除されていてまず居ない。

 ならば、まず間違いなく侵入者。それが犬猫級なのか、それとも悪戯っ子のレベルなのか、或いは本物の侵入者かは知らないが。

 

 師匠を呼びに行くか?と言う考えは断ち切る。遠すぎるし侵入者で無かった時が怖い。ならば乳母兄(レオン)と考えるも、多分あいつは執事の娘と二人で朝御飯食ってる時だろうから気が引ける。 

 皇城内で常時帯剣を許されるは皇族と見張りだけだが、おれは皇族だから武装は許されているし何とかなるな。

 そう意を決して、植え込みを覗きこむ。

 

 ……そこには、子猫が居た。正確には子猫ちゃんと称するべきだろうか。

 うん、明らかに人間。頭隠してぷるぷる雨に打たれた子猫のように震えているが、隠れた植え込みが揺れて逆に怪しまれるだろう事に気が付いていない。


 年の頃はおれと特に変わらない。6歳行くかどうかだろう。

 服はみすぼらしい布一枚のワンピース。隠れる際に枝に引っ掛かってスカート部分が捲れ……というか破れ、粗末な白い下着に包まれた幼い尻が微かに見える。


 「……はあ、何の用なんだ」

 「ぴゃっ!?」

 軽く肩を叩いてやると、一瞬顔を上げてこちらを見、意識が抜けたように震える小さな体がくたっと脱力した。

 ……そんなに顔怖いだろうか。同年代くらいの刀持った銀髪顔火傷少年。


 うん、間違いなく怖いな!

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― 新着の感想 ―
一週間は8日だし一年は8ヶ月になっていた 1ヶ月には何週あるのかな?
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