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特命合体、或いは制空の鬣

『Non-Rev SEELE drive mode set up

 セーット!|Are you readyアーユーレディ?』

 「……当然!」


 『system hacked

 Sterne advent Utopia drive!Emergency go!』


 耳に残るのは、何時もの音声に混じり、不可思議な音。

 だが、気にしている余裕はない!アイリスを、そして頼勇を信じて……おれがやるべきは、もう一人を止め、そして倒すこと!

 

 『AGX-Mt(マギティリス)S(シュテアネ)03(ゼロスリー)pc(プロトカスタム)13(サーティーン)c(コア)

 LI-OH(ライ-オウ)ッ!ガン!ガン!ガォォォォンッ!』

 空高く掲げた左腕。青き少年のその手から放たれる翠光に導かれるままに、青き鬣の機神が来光する!

 

 その右腕はほぼ修復されていない、最低限形を直しただけのコアフレーム剥き出し。エネルギー伝達用のあれこれが繋ぎ直されていない形だけのソレ。

 だが!

 胸の獅子が、そしてその精悍に作られた片眼赤バイザー(ちなみにアイリスがおれをモチーフに左目バイザーを増設していた)の顔が吼える!

 

 「……紛い物が!」

 「そんなお前は、拾い物だろうが!」

 AGX、と聞こえた。

 いや、AGXなる変な機神相手にこの世界の機神で立ち向かえたらと思ったのはおれだけど、真面目に縁とかあったんだな!?

 

 そりゃそうか。縁も所縁もないアレじゃないから持ち込めるし、七大天もその存在は分かっているんだろうからな!

 なら使わせてくれと言いたいが……言いたいだけだ!

 

 この世界は、この世界!変なもの大量に持ち込んで壊して良いものじゃない!


 「スノウ!」

 「っ!おれを食らい、弾けろぉぉっ!」

 青き鬣の機神が現れたATLUSに向けて、アイリスが用意してくれたろう前使ってた槍とは違って剣を掲げて斬りつけるのを横目に、おれは死霊使いの少年へと轟火の剣を叩き付ける。

 

 その刃は、喉元に光の矢が突き刺さった白い狼によって阻まれ……

 「ふぐっ!」

 おいやめろシロノワールってか魔神王!


 大事な人なんだろうってのは分かる!

 だから、分かってくれ!あいつは、どこかアルヴィナに似たあの白い狼は!斬らなきゃいけない!眠らせてやらなきゃいけない!

 アルヴィナを、彼女と同じ醜悪な存在にされないために!

 

 魔神王テネーブルであろう八咫烏(シロノワール)とて、当然それは分かっているのだろう。おれの首筋を刺す痛みは刹那で消える。

 そもそも、彼がスコールと戦ってくれなければ逃げれずに死んでいた。信じているさ。


 少なくとも、彼等とは敵同士、呉越同舟は出来るってな!

 

 「スコォォル!なにやってる!」

 瞬時、悪寒を感じて横飛び。


 おれの脇を掠める、黒い弾丸が少年を庇うように駆け戻る。

 スコール・ニクス。かつての四天王たる三眼の狼。しかし、誰とも分からぬ少年に唯々諾々と従うだけの今の彼に、四天王であり魔神たる誇りなど欠片も見えない。

 

 幻獣、神の似姿として狂乱しながらおれ達を助けてくれた天狼に比べて、あまりにも憐れな……好き勝手使われるだけの人形。

 

 怒りを露に、剣を構える。

 彼は敵だ。魔神だ。それでも、好き勝手己の手足として使うだけの彼には虫酸が走る。


 「猛れ!不滅不敗の轟剣(デュランダル)よ!」

 振るう刃は炎を纏い、赤金の剣は黒狼を裂く。

 

 「んっんー!

 自分から瘴気を……」

 何をほざいている、阿呆が!

 噴き出す瘴気。それはおれへと振りかかり……その全てが、纏う炎によって燃え尽きる。


 「そんなもの、効くかよ」

 スコール、スノウ。二頭の狼は此方に狙いを定めている。

 ならば、アナ達を襲う心配はない。

 

 「いいですか、ルートヴィヒ。貴方の狙いと異なり、此方の彼女は殺したら手に入るものではありません。

 決して殺さぬように」

 飛翔して地を走る鬣の機神をいなし、赤と青の神からそのような声が拡声されて響き渡る。

 

 成程。ユーゴがアステールとヴィルジニーを嫁にしようとしていたように。アナでも手に入れようという算段か。

 その割には吹き飛ばそうとしてなかったかコイツ!?

 

 まあ良い。

 「誰にも手は出させない!」

 「ちっ、ハーレム転生者はこれだから……」

 毒づくルートヴィヒと呼ばれた少年。

 

 ……いや、おれにそんな気無いぞ?

 というか、端から見たらおれも同じか。


 自省はしよう。反省もしよう。だが……っ!


 「だとしても!負けるわけには、いかない!」

 応!と燃える焔。帝国の象徴。不滅にして不敗の剣を携え、白い狼を横に両断。

 アルヴィナに面影のある少女の姿を斬ることに、少し心にささくれはあるが……斬る!


 それが、アルヴィナを護ることに繋がるのだから!

 

 「ぐぅっ!」

 その身に振りかかる超重力。昨日見たグラビトンフィールドなる重力場か。

 「うげっ!」

 ……眼前で地面に沈みこむ切っ先。その先では、即座に再生された少女を敷布団に、地面に這いつくばる少年ルートヴィヒの姿。

 忌まわしげに首を振るスコールにもそこまでの余裕はなさげだ。

 どうやら、重力場は敵味方構わないってところか。

 

 「ぐぅっ!」

 「その機体では空は制圧できないようですね。

 一瞬だけ焦りはしましたが……」

 空でマントのような両翼を光背へと連結させ、シャーフヴォルが勝ち誇った。


 その眼下には、重力の影響こそほぼ受けないものの、空に対する攻撃手段が無い機神の姿がある。

 

 ……なにも分かってない。

 地面に付いた切っ先から炎を放ちつつ、おれは思う。


 「そうだろう、アイリス!」

 その瞬間、勝ち誇り、40mはある大剣を構えた巨神の姿が、飛来した紅の残光を残す流星の激突によって揺らいだ。

 

 「がぁっ!?」

 「……今だ、竪神ぃっ!」

 「応!」

 飛来したのは、何処か隼のような首の長い……おれの語彙で言えば、ニホンがあった世界で遥か昔に使われてたって絵本で読んだコンコルドに近いフォルムの飛行物体。


 黒銀のボディに、紅の光を放ちながら空を駆けるその名をHXS(ヒュペリオクロス)。アイリスがライオウフレームの中に眠っていたデータから作り上げた巨大ゴーレムである。

 

 「……確かに、私とライ-オウは飛ぶことが出来ない。私だけならば、その言葉は真実!

 だが!私達ならば違う!皇子!アイリス殿下!父さん!行くぞ!」

 ……頼勇、おれぶっちゃけ開発ちょっと手伝ったのと合体形態のモチーフな程度しか関係ないんだが!?

 混ぜるなそこに!いや嬉しいけどな!?

 

 「レディ!ハイペリオンフォーメーション!」

 その掛け声と共に、鬣の機神が吼え、良く使っている緑色のエネルギーが周囲を覆う。

そこに飛び込んだHXSは、機首、翼がそれぞれ、胴体、背部サブエンジン、小型の尾翼の6つのパーツに別れ、胴体とエンジンが更に二つで合計8パーツへと分割。

 そして、浮かび上がるコアたる機神ライ-オウを中心に、パーツがH字に並んだかと思うと……

 

 「させるとでも思うのですか?」

 「させなよ」

 「合体は待つものだ、シャーフヴォル!」

 剣を投げつけようとするアトラスの動きは、おれが風刃剣の要領で飛ばす焔とウィズの矢が止める。

 

 『世界を護る特命の元に!』

 響くのは、不可思議な音。あのAGXの電子音の元になっている声にきっと似ている声。


 「特命合体!」

 両エンジンは増加ブースターとして足に、胴体部は増加パーツとして腕に、紅のエネルギーを放出する両エネルギーウイングが背……ではなく肩に。

 長かった機首がそのままエネルギーで延長される剣とその鞘へと代わり、左腰にマウントされ……

 尾翼が一部を残して二股に展開し、前に突き出た一角と斜め後ろに伸びる合計三角を持つブレードアンテナとして頭に接続。

 額の双眼と、胸の双眼が翠に輝き……胸の獅子が咆哮する! 


 「制空の蒼き鬣!LIO-HX(ライオヘクス)ッ!」

 「なぁっ!?原作に無いぞそんなの!?」


 「此処は原作じゃない!皆が生きる世界!

 お前らと同じように、おれ達も、お前らの知ってるおれ達じゃ、ないっ!」

 互いに思うように動けない重力の中、ルートヴィヒへ向けて剣を突き付けておれは叫ぶ。

 

 妹のゴーレムと一つとなったライオウ……ライオヘクスが、地より飛び立つ流星となって空に浮かぶ機神へと突貫した。

 

 ……すまないが、そっちは任せるぞ、頼勇!アイリス、あとウィズ!

 おれは、アナ達に向かわないよう、此方を何とかする!

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