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帰還、或いは追憶

「……って感じで、それなりに有意義だったよ」

 と、おれは締める。

 

 此処は妹アイリスの部屋。エルフの儀式にそこまで深く首を突っ込む訳にもいかず、そもそもレースでも割と人気馬であるアミュグダレーオークスとオルフェゴールドの二頭は、一応おれとアイリスの馬の筈なんだが長く借りていられない。


 ということで、修業に使えたのはたった2週間。そろそろ帰らないとねーとギリッギリまでそれを言わなかったアステールを、仕方なしにオルフェゴールドに乗せて送り届ける必要が出来た関係で、予定より四日短くしか滞在できなかったが……


 考えてみればだ。そもそも他国の教皇の娘なんてものを誕生日に連れ出してる時点で不味いわな。

 ならばさもありなん。

 頼勇の事は師匠とアミュに任せ、下手に捕まらないようにアステールを教皇コスモの元まで届けるや外に待たせていたオルフェゴールドに飛び乗り、その豪脚を炸裂させて一気に聖都を正門を飛び越えて脱出。

 そのまま駆け抜けて帰ってきたという訳である。

 ……何で捕縛されかかってたんだろうな、おれ?

 

 悪意で捕まえようとしてないのは分かるから弓矢は……いや飛んできたが雷を避け続けた今のおれに当たるものではない。

 というか、本当に当たらないだろう。あの2週間でおれのステータスとレベルは一気に跳ね上がったのだから。

 レベルとは魔力(マナ)量の値の域な訳だが、ならば雑魚を狩り続けてもレベルか上がるのかというとそうではない。

 ある程度のレベルになると相応のレベルの相手からしか段々魔力を取り込めなくなる。


 ゲーム的な話をすると、量の域値がレベルな関係で常に次のレベルまでの経験値は100なのだが、レベル差があると段々得られる経験値が低くなっていく訳だな。

 元々は経験値30得られた(4体倒せばレベルが上がった)相手を5レベル上がってからまた倒しても10しか入らないとかそういう感じ。

 ゲームでは一応最低保障としてどれだけレベル差があっても1だけ経験値が入ったが、それはゲームシステム上の話。この世界では……差がありすぎるとどれだけ倒しても経験値0がある。


 更には、魔神王配下ではない土着の魔物はマナの塊ではなく普通の生物なので経験値が全体的に元々低い。

 格上倒しても1桁はザラのレベル。格下とか高くて1。とてもゲームみたいに一気に30なんて入る筈もない。それこそ、天狼だのの幻獣を倒して漸く30入るんじゃなかろうか。

 そんななのでレベルは上がりにくい(ちなみにレベル1桁台だと日常生活でも魔力溜め込んでいけるので子供は日々暮らしてるだけで8くらいまでは年齢と共にレベルが上がっていく)訳だが……


 あの七大天の魔力が充満している場所では、おれでも魔力を溜め込めたからか一気にレベルが上がった。

 って言っても、流石に上級職業、超人の域に入れば周囲の魔力を~は無理だけどな。そういう機能が魂から消えるっぽいから。

 

 つまり、どういうことかというと……

 ステータスのカンストが見えていた、つまり出力の限界が来はじめていたロード状態でレベル20を越え、本来は特殊なアイテムかしっかりとした儀式によってのみ行えるクラスチェンジもアステールが願い天狼が吠えれば完了し、

 おれは上級職でありゲームでのおれの職業たるロード:ゼノになっていた。


 因みにレベルは1。人の殻を脱ぎ捨てて超人に生まれ変わったって事でレベルは1に戻るのだ。

 

 というか、原作ゼノの初期ステータス、本人の成長率の割に低くないかと思っていたんだが、限界レベルは30だがレベル25の段階で全ステータスカンストしてたせいだったんだな。


 30までの5回分のレベルアップがキャップに引っ掛かって何一つ上がらなかったとか、そりゃ能力低くもなる。まあ今はおれなんだが。

 ……可能なら、その分のステータスは上がって欲しかった所だが、まあ仕方ない。そもそも、力やHPの上限値自体は下級にしては高かったからなおれ。その上でカンストしてるのを文句言っても仕方ない。

 

 「……エルフ、は?」

 「あのエルフとは……まあ、それなり。

 竪神の方が話してたよな?」

 と、おれは横の椅子で話に相槌を打ちつつアイリスにエンジンブレードの構造を見せていた頼勇にそう話を振る。


 何でも、ライ-オウ自体をアイリスに見せ、完成までのアドバイスなんかも貰っているのだとか。

 原作ではほぼ独力で完成はさせていた(といっても、スペックは低めで加入後に各所を強化していく要素がある)が、最初からアイリス込みで完成させられたら……

 原作での本当の完成系、更には上手く行けばその先の姿まで作れるかもしれないな。


 それであのアガートラームなんかと殴り合えるかと言われると未知数だが、強いに越したことはない。

 何だっけ?


 『超絶(ダイナミック)雷皇(ライオウ)フォーメーション! 

 緊急特命合体エマージェンシーフュージョン

 …………大ッ!雷!オォォォォォウッ!』


 だったか……使われていない頼勇のボイスがずっと没データにはあったんだったか。

 ゼルフィード・ノヴァみたいな強化形態が無いからそのダイライオウが出てきてくれたらなーってのは割と話で聞いた。


 結局頼勇ルートが増えた轟火の剣でも出てこなかったんだけど、この世界でなら、完成して実際に聞けるかもしれないな。

 

 アイリス的にも、おれ以外に親しい相手が増えるのは良いことだ。何時かは、兄離れしないといけないからな。

 その時はそこまで遠くはない。


 実は最近、アイアンゴーレム事件で捕らえた彼を実力はあるしと騎士団に再雇用したんだが、彼は……ロリコン気味だし頼りきれるかは微妙だしな。

 おれがいるうちは良いけど、居なくなってから頼むぞ頼勇。

 

 「……私もあまり話してはいないんだが……

 どうにも気後れしてしまう」

 「分かる」

 「一応あの羊の女の子とはそれなりに話しはしたが、彼女等からはライ-オウのヒントもナラシンハの動向も掴めなかった」

 と、頼勇はそこまで興味無さげに言った。


 ……こいつ、なかなかにナラシンハへの恨み強いな、なんて思う。原作からしてそうなので違和感はないのだが。

 

 「ところでゼノ皇子。

 彼等については、君の……」

 「ストップ、竪神」

 聞きたいことは分かる。だからおれは、一応転生云々をある程度隠しているアイリスの前でその事を言わないように声を遮って。

 「残念ながら、おれも良く知らない」

 とだけ返したのだった。

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