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対話、或いは桃色

あの後は、どうにも桃色聖女の顔がちらついて、何だか気まずくて。

 そそくさと帰ったその翌日。

 

 「えーっ!ゼノくんって、初等部に行ってたのー!?」

 と、すっとんきょうな声をあげるリリーナ・アグノエル嬢。


 そう。結局、話は明日と先延ばしにしたところ、本当に来たのである。

 いや、あまり深く関わりたくないという点では、嫌なことだが……


 っても、エッケハルトばかりに桃色のリリーナを見てろとはとても言えない。おれもやるべきなのだろうということで、相手をすることにした。

 

 特に、このリリーナは割と分かりやすい転生者の一人だからな。何か話が聞けるかもしれないし、仲間にだってなれるかもしれない。

 現状、淫ピなリリーナの実害って、アナに向けてこいつ可笑しいよ!?って言った事ぐらいだ。

 ユーゴやアルヴィナを殺そうとした刹月花の少年とは異なり、まだまだ話せる余地はある。

 いや、本当は彼等とも話し合うべきなんだろうが……ちょっと、今のおれじゃ無理だ。

 

 「……じゃあ、わたしは……

 必要なら呼んでくださいね、皇子さま」

 

 と、アナ的にも思うところはあるのだろう。おれの話に水を差したくないのかおれが話しにくいのを気にしてるのか出ていってくれるのはいつも通りなんだが、いつも以上にそそくさと出ていった、

 脱兎の如く逃げたという方が正しいんじゃ無いだろうか。その証拠に、何時もはしっかりとしてるお茶が半ばお湯の段階で注いで逃げ去っている。

 

 ……何時もあまり使わないが、今日ばかりはアナ呼びの為のベルを絶対に鳴らさないようにしよう。

 そう誓って、アナお手製のお菓子(根菜を薄くスライスして揚げたもの)の皿をさりげなくピンクの少女の方に押す。

 少女は油を切れさせるためのシートの上に置かれたそれを一口摘まんで……

 「ポテチだ!」

 と叫んだ。

 

 因みに、ポテトではない。根菜なのは確かなんだろうけど、ジャガイモは生でスティックにして食べたり出来るものではないからな。

 因みにこいつは出来る。味はジャガイモに近いが酸味があり、スティックや蒸しが一般的。

 だが揚げると酸味が飛んでジャガイモのような味になる。

 

 アナと出会った時、朝食の野菜スティックをあげた際に入っていたからか、アナは割とこの食材好んで料理に使うんだよな。

 因みに味付けは南方から取り寄せた海草の粉末だけ。塩なんて使ってないが旨いのである。

 まあ、海草に塩は染み込んでいそうだが。

 

 暫くパリパリとおやつをかっ食らう音がして(因みにお茶はガン無視だった)、小さめの皿にとはいえこんもりと盛られたチップスが無くなったところで、漸く少女は言葉を紡ぐために口を開いた。


 「おかわり!」


 ……ってそれかよ!?

 

 と思うや、アナが飛んできて新しく大皿に乗せたチップスを置いていった。

 でもなアナ。おれもこの味好きだけどさ、置いていくときに全部食べたからってリリーナを睨むのは止めような。


 いや、おれの分までって怒ってくれるのは良いんだけどさ、向こうはお客様だからな?

 

 って思っていると、漸く少女が口を開く。

 「ゼノくん。信じられないかもしれないけど……」

 と、真剣そうな顔で桃色の少女が言う。


 「私、実は未来を知ってるの!」


 ……嘘乙!

 いや、本人的には真面目に言ってそうだが、ゲーム知識を未来と言うのは間違ってるとおれは思うんだ。


 ゲームでの話はあくまでも可能性の話。例えばゲームではおれが誰とも結婚しないからといって……

 いや、これは例として不適切だな。魔神に先祖返りしたという忌み子なおれの血はおれの代で絶やすに限る。だからおれは結婚なんてしちゃいけないんだ。それは、この世界でも変わらない。


 ……だから、ニコレットには、そのうちもっと良い相手を見つけて欲しいし、他の男と何してても何も言う気になれない。


 それは、アナ達も同じだ。寧ろ、今のエッケハルトになら、アナを任せて良いと思う。

 ちょっとアレな点はあるものの、おれよりもきっとアナの為に良い奴だと思うぞあいつは。

 だから、エッケハルトにはぜひ、アナの為に頑張って欲しい。おれより素敵だと、気づかせてやって欲しい。

 

 ……結婚せずとも云々?いや、エッチなことに興味がない訳ではないが、結婚してない相手に向けては違うだろう。

 どんな災いがあるか分からない忌み子でありながら、責任を取ると言わずに手を出すとかゴミカスな事はおれには許されていない。

 そして、流石に死ぬ可能性を持ちつつ責任なんて取れるはずもないから。

 

 って、関係ないな今は。


 閑話休題。


 「……未来を」

 「そう!私は神に選ばれた主人公なんだ!」

 ……と、桃色の女の子は自慢げに語る。

 それがおそらく真実だと、『おれ』は理解できるものの……

 「主人公?」

 と、首を捻ってとぼけてみせる。


 まだ大まかな相手の思考が分からない以上、おれも同じだと語るには速い。


 いや、攻略対象に絡みに行ってるのは知ってるが、それだけだ。

 おれだって攻略対象であるガイストとか頼勇とか引き込みに行ってるしな。一概にこのリリーナの行動が悪いとは言えない。

 原作ゲームでは死ぬときは死ぬ(そしてゲームオーバー)な以上、味方を集めたいのは理解できるしな。


 だから、話を聞く。

 「つまり君は、真性異言(ゼノグラシア)だと?」

 「ぜのぐらしあ?」

 と、首を傾げる桃色のリリーナ。


 ……真性異言は割と有名なんだが、知らないのだろうか。

 「君は、この世界以外の世界を知っているのか?」

 と、仕方ないので言い換えてみる。


 「うん!知ってる!」

 と、それに対して疑い無く少女は返したのだった。

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