表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/687

代理受験、或いは小テスト

そうして、頼勇と話し合った翌日。

 

 「どうしてこうなった」

 初等部に久し振りに顔を出したおれを待っていたのは、小テストだった。

 何で貴方が……とでも言いたげなヴィルジニー(因みに席は決まってないが、今日はおれの後ろの席だ。その横はクロエ)に、睨まないでくれないかと振り返り。


 「そこ、カンニングしない」

 と、マチアス伯爵が、ひょいと手首だけでおれへと細長い石の欠片を投げる。


 因みに、なぞるという行為を行う事で文字が浮かび上がるという魔法によるスクリーンを使っての授業であるため、石は何の変哲もない単なる石だ。

 別に白墨(チョーク)とかそういうものではない。


 「……教師マチアス。何故おれがこのテストを……?」

 前に振り向きつつ体を軽く倒し、石をカンッと軽く額で弾き返しつつ、おれは当然の疑問を投げつけた。


 ……待って欲しい。初等部の学生はアイリスであって、おれではない。そしてアイリスはというと……今日は眠いと言って二度寝中である。


 ……可笑しい。原作アイリスは此処まで外に興味ない様子ではなく、サボりなんて無かった気がするんだが……

 

 「代理でも良いから受けなさい。評価すらできないので……」

 「はいすみません」

 どうやら、座学のテストの一切を受けてなかったからもうおれでも良いやという事らしい。


 アイリス?後でお兄ちゃんが勉強をさせるからな覚えておいてくれ。

 

 そんな恨み言を吐き、配られた用紙を表返す。

 問題文を覚えて、後でアナも試験してみよう、と思いつつ、名前欄にゼノ(アイリスの代理受験)と書き込んで、問題文を見る。

 

 試験としては……歴史というか神学のそれか。


 『第一問。七大天の眷属とされる7つの幻獣を答えよ』

 これはとても簡単だ。7つの……が無ければそれなりの難問というか、幻獣に含むか否かの論争があるのだが、7種書けと言われれば全部含むというのが分かるからな。

 

 答えとしては……人類(じんるい)、エルフ、牛鬼(ぎゅうき)天狼(てんろう)斉天白候(せいてんびゃくこう)水龍(すいりゅう)饕餮(とうてつ)の7種だ。

 因みに、人間ではなく人類と書くのがコツ。人間だと亜人は?となってしまうからな。


 そして、日本的な感覚だと人間が幻獣扱いなの可笑しくない?となるし、実際にその違和感から人間やエルフを幻獣として扱わない派閥も居るんだが、世界的な幻獣の分類基準としては、魔力を持ち魔法に対して耐性を持つ存在=七大天の眷属というもの。

 そう、人間もエルフも分類上幻獣なのだ。

 いや、ニホンでいう分類としては人間は動物の一種、みたいな話なんだけどさ。

 同じような話として、魔物とは魔法に対して耐性を持たない生物全般である為、犬や猫や馬や獣人はこっちに分類される。

 

 アナ、解けるかなーとか考えつつ、次へ。


 『第二問。七大天が座すとされる場所を記せ』

 これも簡単だな、と回答用紙を見る。


 焔嘗める道化の座す場所は此処マギ・ティリス大陸を巡る為無し。

 山実らす牛帝は、西方の世界の狭間に在るとされる玉郷崑崙(こんろん)に居るとされる。

 雷纏う王狼は、帝国内にある天空山、天狼の住居たる蛇王の(むくろ)の更に先に在るとされる頂、千雷の剣座に姿を現す。

 嵐喰らう猿侯は、この世界の果ての先に在るとされるパターラから風と共に来るとされる。

 滝流せる龍姫はとても簡単だ。このマギ・ティリス大陸、そして幾つかの諸島を取り巻く大海そのもの。その名もそのままの龍海に眠ると言われている。

 天照らす女神の玉座は太陽と呼ばれる星自体だ。二個あるけどそのうち西から上って東に沈む方。

 陰顕す晶魔は、夜空そのものに住まうとされているな。


 以上!回答としては無し、崑崙、千雷の剣座、パターラ、龍海、太陽、星海。


 余談にはなるが、この世界は天動説である。

 この大陸は龍海と呼ばれる海に取り囲まれており、それを進むと果ての滝と呼ばれる大滝に海水が流れ込んでいて……

 そこが、世界の果てだ。滝の下を覗きに行った者も、滝の先に無限に広がるように見えパターラがあるとされる空に飛び出していった者も、誰一人戻ってきたことはない。

 ……つまり、この世界は星のような丸い形をしておらず、世界の果ては滝に囲まれている。


 因みに、海水が絶えず滝となっているのに龍海は何時も豊かな海水を湛えている事を、滝のパラドックスと呼ぶ。ガイストが言ってたアレだな

 滝は常に流れ落ち、海の水は絶えず減っていく。ならば龍海は干からびていくというのが道理である。"しかし"龍海はここ700年以上の記録を見ても豊かさを失わず、海面も下がっている事はないという矛盾を孕んでいるという奴だ。

 それこそが、水の七大天たる龍姫が龍海に眠っている根拠であり、龍姫が海を産み出し続けているのだというのが七天教の教えである。

 邪教扱いされている七大天アンチは、滝の水は途中で大地の下に潜り循環しているのだと言っているが……どちらが正しいのかはゲームでは語られていない。

 

 さて次。


 『第三問、三天連盟と呼ばれる三柱の天を全て正しく記せ』

 三天連盟。伝説の時代……と言っても750年前、魔神の襲来の際、七大天のうち特に人類に肩入れしたとされる3柱の神の事だ。

 答えは一般的には女神、龍姫、道化の3柱と思われているが……

 これは引っ掛けで、識者からは三柱目は女神ではなく王狼であるとされている。

 女神は聖女を遣わしたから当然入っていると思われているし、それで本が作られていたりするんだが、実際に人類に特に肩入れしたのは王狼、龍姫、道化の3柱。女神は聖女個人には肩入れしたものの、人類そのものには興味がなかったとされる。

 いや、残り4柱も手を貸してくれなかったという逸話はないんだけどな。

 

 次だ次。


 『第四問。第一世代神器のうち、七天御物と呼ばれる6本を記せ』

 七天御物とは、特に七大天の力が込められたとされる特殊な神器の事だ。手にした者は七大天と繋がり、常に交信できるとされている。

 ちなみにだが、そんなもの無くても七大天は願いを聞いてくれる時は聞いてくれてるし、声が聞ける教皇も居るので有り難みは良く分からない。


 ……ところでだが、引っ掛けが雑ではないだろうか。

 一般的に聖女の武器として広く知られる封光の杖だが、あれは七天御物ではない。天属性の七天御物は別に存在する。

 逆に、此処であれ?聖女の武器が御物じゃないし、だとしたら聖女を選んだから三天連盟に女神入れるの可笑しくない?って前の問題の引っ掛けにも気付きかねないんじゃないか?


 そんな内心の突っ込みを抑えて、書き連ねていく。

 1つ。火の御物、轟火の剣デュランダル。

 1つ。魔の御物、天逆の鉾アラドヴァル。

 1つ。風の御物、界覇の杖アストラ。

 1つ。天の御物、繚乱の弓ガーンデーヴァ。

 1つ。地の御物、豊撃の斧アイムール。

 1つ。雷の御物、哮雷(こうらい)の剣ケラウノス。

 1つ。水の御物、その名と存在は伝えられていない。


 よって、轟火の剣(デュランダル)天逆の鉾(アラドヴァル)界覇の杖(アストラ)繚乱の弓(ガーンデーヴァ)豊撃の斧(アイムール)哮雷の剣(ケラウノス)の6本が答えとなる。

 元ネタの神話バラバラだけど、七大天もバラバラだから多分良いんだろう。

 

 原作的には、7本目は……ティアそのもの、になるんだろうか。基本的に最後にゴブリンヒーローのルークと共に仲間になる龍人の女の子だが、あの子の職業は龍姫。恐らくだが……七大天そのものではないがかなり近しい眷属だろう。

 そして、彼女は何でか知らないが異様に人類に協力的である。最初から試練だとか何だとか全く無く当然のように味方増援として出てくるからな。これはもう、龍姫が人間に与えた生きた可愛い外見の神器と言って良いのかもしれない。


 つまり、武器としては6本だな。

 

 そして、在処がちゃんと分かってるのは父皇シグルドが持つ轟火の剣、エルフの森長の家系に伝わる(因みに使えるとは限らない)繚乱の弓、そして教皇に代々受け継がれる(これまた特に使えるとは言っていない)界覇の杖の3本だけだ。

 残り3種は……行方不明だな。原作でも実はアイムールとアラドヴァルは結局出てこないし。

 ケラウノスはたぶん原作所有者的に天空山の千雷の剣座に突き刺さって持ち主を待ってそうだが……

 

 そんなこんなで、割と簡単な全問を解き終え……

 おれは、残りのテスト時間、妹に友達を作ってやるにはどうすれば、と悩み始めた。

 

 このままじゃ、妹は何時か一人ぼっちになってしまうから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ